ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.207 )
日時: 2021/07/17 21:41
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: dpACesQW)

 5

「わかった」

 花園さんはあっさり頷いた。近くの席に腰掛けて、わたしにもどこかに座るように言った。

「聞きたいことは二つ。真白さんの契約精霊のことと、ペンダントのこと」
「えっ」

 思わず声が漏れた。
 ナギーがいなくなったことを知っているの? わたしがペンダントを持っていることを知っているの? どうして?
「多分真白さんは両方とも誰にも話していないんだと思う。そんなことを私が知っていることを不気味に思うだろうから、そこも説明しながら、一つずつ質問する。それと、ちゃんと見返りも用意する。ただで聞こうとは思っていない」
 花園さんは本当に言葉遣いに気を使ってくれたようで、普段よりかは聞き取りやすい話し方をしてくれた。

「一つ目、真白さんの契約精霊のこと。私は【精眼】っていう、精霊そのものを見たり、誰が誰と契約しているのか分かったりする『スキル』を持っているの。最近真白さんが契約精霊を連れていないから、どうしたのかなと思って。一応、確認しておきたいだけだから、言いたくなければそれでも構わない」

 なにそれ。【精眼】?
 わたしは、そんなの、持ってない。なにそれ、なにそれ。
 精霊は神聖にして神秘の存在。自らがその姿を見せない限り目に写すことが出来ない不思議な存在。わたしはそう思っている。なのに花園さんの目には、そう映ってはいないということ? わたしとは違う、特別な力を持っているの?

「……ナギーは、ずっと前から行方不明なんです。具体的にいつ頃から、っていうのは覚えていません。でも、こういうことは前からあって、心配ないです」

 少し言葉がおかしかったかもしれない。でも、他のことに頭がいっぱいで、上手く言葉を選べなかった。
 花園さんは僅かに考え込むような仕草を見せたけれど、すぐにわたしに次の質問を投げかけた。

「二つ目、ペンダントのこと。こっちは随分前から気になっていた。その中に、悪魔が宿ってる。おそらく、『七つの大罪』の悪魔」

 心臓が、ドクンと脈打った。色んな疑問が頭の中をグルグルと巡る。どうして悪魔が宿っているだなんてわかるの? どうしてその悪魔が『七つの大罪』の一人だなんてわかるの? それを知ってどうするの? 何がしたいの?

「出来ることなら、今から言うことは他人に言わないで欲しい。
 私は、物に宿る『気』を感覚的に捉えることが出来る。これはスキルと言うよりかは、本能。言葉による説明は難しいけれど、とにかく、ある程度ならそういうものがわかる。だから、今回の場合も分かった。真白さんの持つペンダントには、濃い『黒』がこもっていた」

 ああ、もうわからない。なんなの? 花園さんはわたしと同じ劣等生じゃなかったの? 濃い黒がこもってるって何?
 吐き気が込み上げてくるくらい、気持ちの悪い感情が、頭も心も支配した。


『人間よ、落ち着くのじゃ』

 6 >>208