ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.208 )
- 日時: 2021/07/18 21:17
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: f3ScG69M)
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レヴィアタンの声が響いた。花園さんには聞こえていないようだから、これは心話か。
『此奴がなにかを隠しているのは其方も分かっていたことじゃろうて。今更その事に心を動かされているようではこの先が思いやられる』
その声に呼応するように、ペンダントが熱くなった。実際に触れていたわけではなかったけれど、その熱さは体中に広がって、わたしを覆った。
もちろんそれは錯覚だ。けれどわたしには明らかな変化があった。心がとても落ち着いている。冷静になったとでも言おうか。先程までのような気持ちの悪い感情はどこへやら。綺麗に消え去っていた。
『それに、考えてもみろ。さっき此奴は、自身の言葉を他人に漏らすなと言ったであろう? つまりそれは、他人に知られると困るということ。其方は一つ、此奴の弱味を握ったことになるのじゃ』
言われてみればそうだ。わたしはその言葉に直ぐに納得し、すっかり精神状態が元に戻った。
「単刀直入に聞く。そのペンダント、誰からもらった?」
「どうして知りたいんですか?」
別に、質問に答えるばかりでいる必要は無い。わたしから質問してもいいはずだ。
花園さんは苦い顔をした。すぐに答えようとしたのか口を開いて、けれどそれを閉じ、どう言おうかと思案しているようだった。それはいかにも人間らしい仕草で、わたしは意外に思った。
花園さんも、こんな風に迷うんだ。案外、人間らしいところもあるんだな。
「朝日に何かあると、嫌だから。最近真白さんと一緒にいるところをよく見かける」
つまり、朝日くんが悪魔に関わっていると? 確かにレヴィアタンは朝日くんがくれた竜の鱗のペンダントに宿っているけれど、それとこれは別だ。
「このペンダントは朝日くんからもらいました。でも、悪魔と朝日くんは無関係です」
花園さんの家は悪魔祓いの家系じゃなかったの? そんな家の人が悪魔と関わるわけないじゃない。
悪魔と契約を結んでいるのはわたしであって、朝日くんじゃない。
「朝日くん『は』ってことは、真白さんには関係あるの?
ペンダント、見せてもらうことって出来る?」
「嫌です。大事なものなので」
「……そう」
花園さんはあまり落ち込んだ様子はなかった。そもそも期待してなかったようだ。
つまんないの。
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