ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.212 )
- 日時: 2021/07/21 23:57
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: zvgOH9ns)
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「わかった」
花園さんは頷き、私に顔を向けた。相変わらずその表情は淡々としていて、何を思っているのかわからない。
「真白さん」
だけど、その声は震えていた。感情は読み取れないけれど、何かを思っていることは確かだ。
おそらく、嘲笑といったところか。
「なに?」
「一応、言う。降参してほしい」
は、なんで?
降参、何に降参しろって言ってるの? まだ何もしていないのに。
『無視しておけ。どうせ彼奴は其方に敵わんのじゃから』
うん、そうだよね。返事すらする意味が無い。
『……』
私は空気中の水分を凝縮して水滴に変え、それを一気にまた水分へと変換した。急激に体積が膨張したため、凄まじい速度の風圧が花園さんを襲う。また、風圧によって机や椅子がさらに分解され、そして消し飛ぶ。
花園さんは悲しそうに目を伏せた。どうしてそんな顔をするの?
そんなことを考えていたから、私の魔法が消されたことに気づくのが少し遅れた。何の『波』の揺れもなく、ただ静かに、私の魔法と同じ分の魔力を込めた風魔法で相殺されていた。
そういえば、花園さんが仮契約を結んだ精霊って風属性だったっけ。
私は一学期に行われた授業を思い出していた。
契約精霊と契約主の魔法適性は、同じであるか、契約精霊の魔法が契約主の魔法を支える属性関係(契約主が火であれば、契約精霊は土)であることが多い。それ以外にも二パターンはあるけれど、そうなる場合は限りなく少ない。
まあ、とりあえず、魔法が消されるのは想定内だ。
私は用意していた別の魔法を畳み掛けるようにして放った。
『……』
私は空中に水球を浮かべた。その大きさは私の体の四分の三程度の大きなもの。それが二つ。私は水球を打ち込み、さらに上から大量の水を花園さんに被せた。被せたと言っても威力は言葉のようにかわいいものではなく、およそ一トンの水圧をかけている。
ガシャアアアン!!
今度は壁に穴が空いた。見ると、隣の教室にも水柱が立っており、中は荒れに荒れていた。
でも、まだ足りない。おそらくまだ立ち上がってくる。いや、『立ったままでいる』。
壊せ、壊せ。
私は戦いたいんじゃない。壊したいんだ。
「水よ」
私の口が紡いだ呪文は、さっきまで使っていた聞き取ることも出来ない不思議な呪文ではなく、私が慣れ親しんだ呪文だった。
「全てを呑み込み、そして破壊せよ。邪魔者は──消してしまえ!!」
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