ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.214 )
- 日時: 2021/07/22 21:15
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: jBbC/kU.)
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思い当たるところは、ある。
私が今使った魔法は、【水応用空間魔法・害物排除】。随分と前に笹木野さんが使った上級魔法だ。
笹木野さんはたくさんの才能を持っているのに、私には何も無い。そのことがどうしても理不尽に感じてしまえて、あれを見たとき、どうしようもない怒りがわいてきた。
だけど。
私が放ったあの魔法は、あの時見た笹木野さんのものよりも二周りほど大きい。
大丈夫、負けてない。
それにしても、どうして花園さんは反撃してこないんだろう? もしかして、『出来ない』のかな?
それもそうか。ただの人間が水の中に閉じ込められれば息も出来ないし、体の自由も効かない。
じゃあ、もういいか。次はどうしようかな? 何を壊そう。
「えっ、うわああっ!!」
ぼうっとしていたら、レヴィアタンが急に動いた。その巨体からは想像つかないほどの速さで。私は慌てて頑丈なレヴィアタンの鱗を掴んだ。目で終えないスピードでどんどん変わっていく視界に酔いそうになりながら、なんとかレヴィアタンに声を掛ける。
「ど、どうしたの?!」
『其方はもう少し殺気に気づけるようになるのじゃ!』
レヴィアタンは、今までに聞いた事のないような焦った声で言った。
殺気?
『後ろを見よ!』
後ろ?
私は振り向いて、レヴィアタンが言っていた殺気の源を探した。殺気ってことは、何か生き物がいるってことだよね?
「えっ……」
視界が真っ黒に染まった。『何か』の影だ。『何か』、殺気の根源が、私の目の前にいる。
コウモリのような羽を大きく広げ、青い瞳の瞳孔は猫のように細く、血走った目で私を睨んでいる。大きく右手を振りかぶり、その手には鉄球のついた鎖を握っていた。
「ひっ!」
背骨が氷のように冷たくなった。いや、違う。氷よりももっと冷たい。感じたことの無いような寒気がするのに、心臓はうるさいくらいに血の巡りを速めている。
殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される
その言葉で頭の中が塗りつぶされた。
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