ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.220 )
- 日時: 2021/07/26 00:12
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: aOp/uujw)
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「死んだのか?」
「うん……意思は」
「そっか」
「…………」
「ごめん、おれもカッとなって」
「リュウは悪くない。そもそも、真白はあの時点でもう取り返しのつかないところまで来ていたから」
「……そう、だな。そうだよな」
「うん」
気持ちが悪い。何故いつまでも他人の腕の中に居続けなければならぬのか。
いや、待てよ。今なら此奴に不意打ちをかけられるのではないだろうか。先程から見ている限り、此奴は暇つぶしにちょうどいい相手に思える。
妾は白銀の少女の腕を掴み、【吸収】により蓄積していたこれまでのダメージを少女の体に送り込んだ。腕がぼんやりと青い炎に包まれ、そして燃え盛り体全てを覆い尽くす。
「お前っ!」
吸血鬼が叫んだが、妾は構わず白銀の少女から、飛び上がって距離をとった。どうせあの程度で死にはせん。少しでもダメージを負わせられればそれで良い。
幸い、地面のようなもの、足をつけられる部分はあったようだ。吸血鬼はその羽で浮いているようだし、この空間は白銀の少女の【支配下】にあるから、もしかすれば無限の底へ落ちてしまうかと思ったが。その時は本来の姿に戻れば良いと思うとったが、その必要はなさそうじゃ。
しかしやはり、この真っ白な空間は変じゃ。地面はあるし足が地に着けば摩擦も起こる。じゃが、摩擦による音は鳴らなかった。
まずはこの空間から出る方法を考えねばならんな。
「ふうむ……」
妾は数秒考えた後、無詠唱魔法により体を浮かせた。地面と宙の区別がつかないほど視界のどこも白いこの場所で足をつけているのは、なんとなく落ち着かない。
と、魔法を使ったところで気がついた。
魔法が、使いにくい?
魔法を発動するときの魔力量に大差はない。ただ、魔法から発される『波』に奇妙な『ノイズ』が混ざっている。まるで妾の魔法から出てくる波とはまた別の波が混ざり合い、不協和音を奏でているような不愉快なノイズじゃ。
忌々しい。一般的な魔法妨害の魔法は、大抵は消費魔力を増やすことで打ち破れると言うのに。
まあ、つまりこの少女が『こんな魔法を使うことが出来る』という情報が得られたということじゃ。お陰で確証が持てたのじゃから、ひとまずそれでよしとしよう。
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