ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.221 )
- 日時: 2021/08/01 11:33
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: NGqJzUpF)
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青い炎は静かに消えた。白銀の少女は平然とした表情を保ち、それを見る限り、ダメージを負ったようには感じない。
なるほどな。白銀の少女はダメージを分解したようじゃ。そんなことも出来るのじゃな、面白い。
「む?」
白銀の少女がキラキラとした光に包まれた。そして『白』が溶けるようにして剥がれていき、元の金髪が顕になる。肌もやや黄色味を帯び、神々しささえ感じさせていた容姿が、一気に人間らしくなった。
ただし、肌には黒いモヤが絡みついておった。それは先程『器の主』が放った【害物排除】にまとわりついていたものとよく似ている。
この白い空間も、みるみるうちに溶けて消えていった。妾が自ら壊さずとも、少女に限界がきたようじゃ。
次第に雲一つ浮かばない青い空が表れた。今にも雨が降りそうだった曇り空がカラリとした快晴になっているのは、この少女の力か、それともただ単に時間が経っただけなのか。
もはや瓦礫と化した建物には、もう水柱は立っていなかった。解除したつもりはなかったが、先程の空間に取り込まれた時点で外部との接続が強制的に絶たれていたのだろうと仮設すれば納得出来る。
ただし空気は湿っておった。これならば、まだこの場所は妾に味方しておる。
「ちょうどいい玩具じゃの。暇潰ししてやろう」
自分の口角が自然に上がるのを自覚した。なんとも、運の良い事じゃ。まさか『神子』に遭遇するとは。
前々から、うっすらとそうではないかと思っておったが、先程からの出来事によりそれは確証に変わった。
しかし、変じゃな。彼奴はずっと反撃をして来ぬし、ほとんど言葉も発しておらん。器の主に「降参しろ」と言っておきながら、特に何をするでもなく曖昧に戦いは終了した。
わからぬ。彼奴は何を思っておるのか。
……面白い。ここはひとつ、彼奴の心を揺さぶってみるとしよう。弱点はわかっておる。
妾は扇を【アイテムボックス】から出した。妾の鱗を用いたもので、濃厚な魔力が込められてある。それを広げ、口元に持っていく。うむ、やはりこれがあるとないとでは違うの。これがないと落ち着かぬ。
「のう、お主」
妾は神子と吸血鬼にほんの少しだけ近づき、神子に向けて、声をかけた。
「其方、『真子』じゃな?」
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