ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.28 )
日時: 2022/10/06 05:18
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 4CP.eg2q)

 5

「メンバーチャット・オープン」
 あ、来てる。
『やっほー! 来たよ!』
『悪い、いま帰った。家まで来そうだったから、撒いてきた』
 スナタとリュウはいる。蘭はまだか。
 ……それにしても。
「家まで?」
 私は呟いた。
『変なこと考えないでね、日向』
 私の目つきが悪かったのか、ベルが声をかけてきた。
「?」
『排除するとか。一度、学園長さんに怒られたでしょう?』
 そんなことも、あったっけ。
「忘れた」
『もう。自分に関係ないことはすぐに忘れるんだから。
 そういうことがあったの。とにかく、ダメ』
「……うん」
『わかってないでしょ!』
 私はベルを無視した。
 排除するかどうかは、相手がどうするかによる。蘭たちに被害がなければ多少痛め付けるくらいにするし、被害が出ても、その大小によって排除を物理的にか精神的に、あるいは社会的にかどうか決める。
 なにもない現段階でそう言われても、困る。
『悪い! 話してたんだな』
 蘭が来た。
『蘭も追いかけられてたの?』
『いや。ライカ先生に呼ばれて、帰るのが遅れたんだ』
 またあの人か。
 どうせ、私と関わらない方がいいとか、言ったんだろう。
 リュウにも、蘭にも、執拗に付きまとっている。
 そろそろ、考える時期か。
『ほら、言ったそばから!』
 ベルが怒って言った。
「いちいち言わないで」
『言わなきゃ何するかわからないじゃない!』
「信用ない」
『何度かやってるからでしょう?!』
『二人とも、何を喧嘩してるの?』
 ほんわかしたリンの声。
 大人しいと思ったら、蜜柑を食べてたのか。
「食べ尽くさないで」
『私の聖力袋の限界によるから、わからないわ』
 そしてまた、大きな口を開けて蜜柑を食べる。その口が小さすぎて、全体の五パーセントも減っていないが。
 チャットを見ると、話が進んでいた。
『今回は、何を持っていくの?』
『許可されているのは、MPポーション五本、HPポーション三本、杖、ほうき、C級以下の攻撃・防御アイテム各一つずつ。
 おれたちのチームは五人だから、この五倍だな』
『多いな』
『攻略するか、全員がリタイアするまでだからな。過去には一ヶ月帰らなかった年もあったみたいだぜ』
 いつものように、リュウが二人の質問に答えていく。
『魔力増加とか、筋力増加とかのポーションはいいのか?』
『一人一つずつだな。いるのか?』
 蘭はポーションを使わなくても魔法騎士団団長並みの戦闘能力を持っている。ポーションが必要とは思えない。
『水中呼吸のポーションが欲しいんだ』
 あ、なるほど。

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