ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.29 )
- 日時: 2021/01/11 07:15
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wVVEXLrP)
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《サバイバル》当日。蘭は宣言通り水中呼吸のポーションを持ってきた。
「水に潜る訳じゃない」
「万が一ってことがあるだろ!」
「ない」
生徒は、朝の六時に、校門に入ってすぐの大樹の周りに集まっていた。全員が集まるのを確認すると、教師たちは長ったらしい開会式を始める。もちろん、ほとんどその内容を頭に留めてはいない。大半が毎年聞いているもので、変更がある部分は既に担任から聞いているからだ。
生徒からの宣誓も終わり、最後の注意事項を確認し、開会式は終わった。
「これから、各グループに別れて出発してください」
ライカ先生がそう言うと、わらわらと生徒が別れた。
私もリュウたちと合流し、おろおろしていた真白のところへ行った。
「全員揃ったし、行こうか」
スナタが言った。
ターシャ先生が先頭を飛んで、他のグループは既に出発していた。
私たちはほうきにまたがった。
ふわり
私たちは飛べたが、真白は飛ぶまで時間がかかる。
「せー……のっ!」
ビューン!
「うわわわ!」
上達しないな。
私たちは一気に高く上ってしまった真白のところにほうきを飛ばした。
「ご、ごめんなさい……」
真白は顔を真っ赤にしてほうきにしがみついている。
「いいよいいよ。気にしないで!」
スナタが笑顔で言うと、真白の表情が幾分やわらいだ。
「よーし、準備はできたな? 早く行くぞ。前のグループとずいぶん差がある」
最後尾担当のフォード先生が言った。
フォード先生は今年入ってきたばかりの先生。だけど、バケガクに派遣されるだけあって、それなりの実績はある、らしい。
「はい。じゃ、行こうか」
蘭の言葉を合図にして、真白を気遣いながら、ほうきを進めた。
「通常だと五時間ぐらいなんだが、Ⅴグループが二人もいるとなると、それ以上かかりそうだな」
フォード先生が苦笑した。
そして、私を見た。
「花園。そのローブはなんだ?」
私は黒いローブを着ていた。生地の厚みもそこそこある、ごつい、と言われるものの類いに入るだろう。
面倒臭いと思いつつ、私は答えた。
「防御服です。自分の気配を隠す効果があります」
なるほどといった様子でフォード先生は頷く。
「身を隠すことに使える、ということだな? しかし、そのローブだと隠れにくいんじゃないか? 動きづらそうだし、大きいし。それに、君のようなⅤグループの生徒は、そういうものよりも直接相手の攻撃から身を守るものを使った方が良いぞ」
「はい」
話を長引かせたくなかったので、とりあえず、そう答えた。
私のこのローブの使い方を知る三人は、苦笑していた。
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