ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.33 )
日時: 2021/04/16 18:36
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wECdwwEx)

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「真白さんが起きたよー!」
 見張りをしていた私たちに、スナタが声をかけた。声が反響し、ぼわんぼわんと響く。
「へ? あ、わたし、どのくらい寝てました?」
「わたしもさっき起きたからわからないけど、十分くらいかな?」
 本当は小一時間だったのだけど、わざわざ言う必要もない。
「じゃあ、行こうか」
 リュウが言った。
「はい!」
 真白は勢いづけて立った。
「下にどんどん降りるんだよね? どれくらい降りるんだろう」
「ここはかなり沖にあるから、海底までそれなりの距離があるはずだ。二十は降りるんじゃないか?」
「ええっ?! そんなに降りるの?」
「下へは階段があるのかな?」
「一番奥に、鍵のかかった扉があるのが定番。だけど、飛び降りるのも、たまにある」
「わたし、足を引っ張りそうです……」
 そんな話をしながら進む。

 ぐう

「だれ?」
 誰かのお腹の音がした。
「……おれ」
 蘭が以外と早く白状した。
 今は正午を少し過ぎたくらい。そろそろお腹がすく頃だろうとは思っていた。
「お昼ごはんにしよう!」
 スナタがそう言うと、みんな、いそいそと弁当を取り出した。
『お昼ごはんだー!』
 リュックに入っていたリンが、急に飛び出した。
「リンはないよ」
 リンはがーんとした顔をした。
 精霊は、基本、食べなくても生きていける。何らかの出来事で霊力を使い、体を弱めたときの回復に、食が必要なのだ。
「蜜柑はたくさんあるけど、温存しないといけないの」
 他のみんなの精霊は出てきていないことを確認し、リンはすごすごとリュックに戻った。
「今でこそお弁当があるけど、今日の夜からごはんの心配しないといけないんだよねえ」
 スナタが卵焼きを食べながら言った。
「リュウに任せれば、食材は手に入る」
 私の言葉に、蘭はあははと笑った。
「リュウは魔法無しでも騎士団に入れるくらい強いからな」
「そうなんですか?!」
 真白が驚いた顔をする。
「蘭、冗談を言うな。真白さんが本気にする」
「どこが冗談なんだ?」
 リュウはため息を吐いた。
「もういい」
 そして、ひょいっとミートボールを蘭の弁当箱から抜き取った。
「あ! おれのメインディッシュ!」
「ふん」
 リュウは蘭を鼻で笑い、パクッと食べた。
「ああああああっ!!!」
 蘭の絶叫が、辺りに響き渡った。

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