ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.34 )
- 日時: 2021/04/16 18:38
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wECdwwEx)
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「おれのミートボール……」
「まだ言ってるのか」
リュウがあきれた顔をした。蘭はずっと、リュウのことを恨めしそうな顔で見ている。
「当たり前だろ! 次、いつまともな料理を食べられるかわからないんだから!」
スナタも苦笑いをしている。
「けんかはだめですよ」
おろおろしながら訴える真白を見て、ようやく蘭の怒りもおさまった。
「別に、喧嘩じゃねえよ」
ばつの悪そうな表情はしていたが。
「魔物いないかなー」
スナタがキョロキョロしている。
「え、遭遇したいんですか?」
「私はまだまだ弱いからね。強くならなきゃ」
真白は表情を曇らせた。
「Ⅲグループに入れるだけの実力があれば、十分ですよ」
ぼそりとしたその呟きは、場の空気をも暗くした。
スナタは慌てて言った。
「えっと、ごめんね?」
「! いえ、わたしこそ、ごめんなさい。こんなの、ただのひがみです」
あーあ。暗くなっちゃった。
「スナタ」
私はスナタの名前を呼んだ。
「魔物、いるよ。相手する?」
ガサガサガサッ
「ひええええっ」
真白が腰を抜かした。
そこにいたのは、大量の木の魔物。黒い幹に、毒々しい緑の葉。第一印象としては、気味が悪い、その一択だろう。
真白の体質のせいか、その数は尋常じゃない。通常は四体か五体の群れなのに、今は十体はゆうに越えている。
「〈ジャンカバ〉か。よおっし、任しといて!」
スナタは両手を突き出した。
ふうっと息を吐き出し、体内の魔力を両手に集中させる。
「風よ」
スナタの言葉に応えるように、その場の空気が渦を巻き、突風が起こる。
「鋭き刃となり、切り裂け! 【鎌鼬】!」
ズオッ
魔法でない限り生み出せないほどの強く速い風が、〈ジャンカバ〉の群れにおもいっきり撃ち込まれた。
ズドオン!
うるさい音。砂ぼこりが舞う。
「けほっけほっ」
真白が咳き込んだ。すかさずリュウが駆け寄る。
「大丈夫?」
すると、とたんに真白は真っ赤になった。
「だだだだいじょうぶです!」
慌てて距離をおこうとし、つまずいたのか、私の方に倒れてきた。
「落ち着いて」
真白の肩を支えながら言うと、真白はますます顔を赤くした。
「ごめんなさい……」
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