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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書きをお読みください】 ( No.341 )
- 日時: 2022/09/01 18:55
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: I3friE4Z)
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ぐしゃっ
生々しい音がボクの耳に飛び込んできた。なにが起こったのかすぐには理解できなかった。だけど、視界が真っ赤に染まった直後に真っ黒になったことから、そしてさっきの音からボクの両目が潰されたことを理解した。そしてボクの両目を潰したのが誰なのかもすぐに分かる。残虐な行為の主の声がした。
「こうするしかないんです。すみません」
スペードはボクに謝った。謝るくらいならこんなことしなければいいのに。そう思ったりもするが、影に与えられた力によってスペードの思考はわかるので、責めたりはしない。
「あなたを救うことはできなかった」
スペードが悔しそうにボクに言った。ボクに向けられた言葉ではなく、単にスペードがこの言葉を口にしたときにたまたまボクが目の前にいたというだけだけど。
「せめてあなたを物語から解放します。神々の監視からあなたを解き放ちました。これであなたはこれまでよりは自由になるでしょう」
神々はボクの目を通して情報を得る。すなわちボクが見ているもののほとんどすべてを神が知っているということであり、それは監視に近いものだ。罪滅ぼしのつもりだろうか。目ぐらい潰そうと思えば自分で潰せるから贖罪にはならないと思う。でも、スペードの意思は尊重しよう。この贈り物を有り難く受け取ろう。それが神として求められる対応というものだ。目などなくとも【万里眼】で未来現在過去の全てを見ることができる。
それにしても、両目を失ったということは、ボクの視点で進んでいた物語はもうこれ以上描けないということだ。いくらなんでも、視覚情報がない物語は面白みに欠けるからね。
ちょうどよかった。花園朝日も死んだことだし。
Asahi's storyは、これにて完結だ。
この馬鹿馬鹿しい世界にも……【完】
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