ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【完結】 ( No.342 )
- 日時: 2023/06/23 07:44
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 2kdnCy6W)
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やあ。神々諸君。今回の物語はいかがだったかな? 諸君が楽しめようが楽しめまいがワタシはさほど興味は無いのだが。諸君の意見をワタシが知ることも出来ないしね。それが出来るのは神たる創造主だけだ。ワタシが諸君の前に姿を現したのは、今回創造主が記録した物語の感想が聞きたいからではない。なに、大したことではないんだ。ただ、可愛い我が子の物語を最後まで読んでくれた諸君に、挨拶でもしようと思ったのさ。
自己紹介をしておこうか。
ワタシは守護者。神のうちの一つであり、この時空の創造者であり、かつての支配者だ。後は諸君の想像にお任せするよ。ワタシにはたくさん語れるほどの自己というものがない。ワタシもまた人形のようなものだからね。
さて、あの子にも困ったものだ。自らの役割に疑問を持つなんてワタシでも予想できなかったことだ。かつての支配者だって自らの役割に、自らに疑問を持つことなどしなかった。考えてみれば不思議なことは確かにある。どうして種子は独を探すのか、どうして独は一つの世界にしか出現しないのか、どうして独は出現するのか。挙げてみればきりがないということに、あの子を見守る過程でワタシも気づいた。それは認めよう。
馬鹿馬鹿しい。
それらは疑う必要のないことだ。これらは不思議に思う必要のないことだ。世界設定はどうしようと覆らない。創造主が定めた決定事項。受け入れることしかできないし、疑うなど無駄で無意味で愚かしい行為だ。あの子は馬鹿だよ。だからこそ、可愛いのだけれどね。
バグを抱えたあの子のもとに独はやってきた。支配者に選ばれたのはあの子だ。ワタシはあの子を最後まで見守ろう。あの子が失敗を犯す度、ワタシは何度でも修正しよう。それが守護者の役割なのだから。
ところで、ナイトは何を考えているのだろうか。本来、支配者の修正はナイトの役目だ。ワタシは支配者の暴走がナイトの手に負えなくなったときに、最後に出てくる役割を担っている。あくまでワタシは最後の手段であり、ナイトはワタシが出てくる前に最善を尽くす必要がある。なのに奴はむしろ支配者のバグを増大させようとしている不届き者だ。しかしその反面、奴はある意味ナイトとしての役割をこなしているとも言える。支配者に尽くすこと、支配者の願いを叶えることこそが眷属である奴の一番の役割だ。
奴はどうとでもなる。支配者を修正したから奴の思考も元あるべき正しい形へと戻ることだろう。歪んだ歯車はそのままに。壊れている状態こそ、この世界の正しい姿なのだ。
察しがついている神もいるかもしれない。この物語はまだ終わっていない。『この馬鹿馬鹿しい世界にも……』という作品はひとまずは完結している。しかし物語はまだ続いている。この作品の舞台となったBの時代、その過去があり、未来がある。過去とはそこに存在する物語の総称であり現在とはそれまでに存在した過去の総称であり未来とはいずれの過去である。つまり現在だけではなく過去にも未来にも物語がある。そしてそれらは個々は一つの点であり、形作るものは面ではなく線だ。物語たちは一本の線を生み出し続けている、いや、定まった線をなぞり続けている。きっと主はまだ書き記すはずだ。これまでに存在した、そしてこれから存在するであろう物語たちの代表として、主自ら選んだ現・支配者のstoryが終わるまで。
ワタシの長話に付き合ってくれてありがとう。そろそろ時間だ。
さよなら、神よ。
また、会おう。
Master's Message【 】