ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.42 )
日時: 2020/12/13 07:30
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: RadbGpGW)

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 キシャアアア!

 不快な音と共に、砂ぼこりの中から木の根が伸びてきた。
「あっ、ごめん! 仕留め損ねてた!」
 スナタが叫んだ。
 うん。まあ、仕方ない。いくらF級の魔物だからといっても、十体の群れだ。漏れが出てしまっても、責められるようなことはない。
 ただ、技量が足りないことは確かか。
 真白の体質によるものだろう、木の根はまっすぐに真白を狙う。
「ひゃああああ!」
 真白は回復術士。攻撃魔法は使えない。自己回避は不可能だ。
 ザンッ
 リュウが伸びた木の根を、剣で断ち切った。
 リュウが持ってくる武器は、毎回この鉄剣だ。両手で持つタイプの剣で、青い宝石がひとつ、埋め込まれている。
「真白さんと日向は下がってろ」
 リュウが〈ジャンカバ〉を睨み付けながら、低い声で言った。
「わかった」
 私は真白の背を押して、幾分か後ろに下がった。
「大丈夫なんでしょうか?」
「うん」
 リュウたちが〈ジャンカバ〉ごときにやられるはずがない。
 けれど、仲間を攻撃されてかなり気が立っている。〈ジャンカバ〉のように群れになって行動する魔物は、群れになることで自分の身を守っている。群れになれなくなると、自分の身が危ない。どこまでも魔物らしい考え方だ。
 人間も、同じようなものの気がするけれど。
 リュウが残った〈ジャンカバ〉を全て斬り倒し、その場はおさまった。

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