ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.43 )
日時: 2021/01/03 06:59
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: jBbC/kU.)

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「≪ジャンカバの実≫ってはじめて食べたけど、意外と美味しいんだね」
 スナタが五個目の≪ジャンカバの実≫を食べながら言った。黒い幹に見えていた部分は、実は果実で、味はなかなか上等なものだ。よくワインなどを作るのに用いられる。
「スナタ、おしまい」
 私が制止し、≪ジャンカバの実≫の入った袋を取り上げると、スナタはむうっと頬を膨らませた。
「これも、貴重な食料。温存しておくべき」
 ここのダンジョンの気温だと、少なくとも、温度の影響で腐ることはなさそうだ。
「それもそっかあ」
 スナタは素直に諦めた。
 よし。じゃあこれは、あとでアイテムボックスに入れておこう。
 アイテムボックスを開いているのを真白に見られたくないので、一度リュックにしまうことにする。
 と、突然手の中から袋が消えた。
「リュックの中、ほぼいっぱいだろ? 持つよ」
 リュウが私の手から取っていた。
「うん、じゃあよろしく」
 それから、少し考えて、私は言った。
「あ、りがとう」
「え?」
 リュウがとてもビックリした顔で言った。あれ、間違えてたかな、言うタイミング。
「間違えてた?」
 するとリュウは慌てて言った。
「い、いや! 間違えてない!」
 そして、優しく笑った。
「どういたしまして」
 ほのかに照ったその顔は綺麗すぎて、私は眩しく感じた。
 少し目を細めて、じっとリュウの顔を見る。
「な、なんだ?」
 私は首をかしげた。
「なにが?」
「ねえねえ、そこの二人。そろそろ進まない?」
 スナタが仁王立ちしていた。しかし、その表情は怒っている風ではない。むしろにやにやしていて、面白がっているようだ。
「うん」
 なにが面白いのかはよくわからないけれど、ここで止まっていても何にもならない。
 私は少し前にいるスナタのところまで行った。
「ねえ、日向。やっぱり自覚なかったりするの?」
「なにが?」
 スナタはため息を吐いた。呆れる、よりは、なんだか……
 よく、わからない。

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