ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.45 )
- 日時: 2021/01/03 07:01
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: jBbC/kU.)
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パチパチパチ
火の粉の舞う音がする。
暗いダンジョンのなかで、蘭の橙色の髪が火の光で照らされ、絵のような幻想的な情景を作り上げている。
「暇そうだね」
「うわああっ」
ズザザッ
蘭がすごい勢いで座ったまま後ずさった。
そんなに驚かなくても。
「お、起きてたのか?!」
声が大きい。みんなが起きる。
私は人差し指を口の前に立てた。蘭も意図を察したようで、むぐ、と口をつぐんだ。
「そりゃあ、暇だよ。おれだけ寝れないんだから」
蘭はヒソヒソと小声で言った。蘭は見張り当番のくじ引きを見事引き当てたのだ。
「日向は、寝ないのか?」
「うん。別に、眠くないから」
私は元々、ある程度眠らなくても普通に行動することが出来る。それがいいのか悪いのか、微妙なところではあるが。
「眠くない、か。おれは眠いよ」
少し代わろうか。
そう私が言おうとしたら、その前に蘭が言った。
「あ、交代はしなくていいぞ。くじ引きで当たったんだ。自分の役割は全うする」
「うん、わかった」
蘭は偉いな。
ただ、もう強い魔物は来ないと思う。めぼしいものは、他のグループの生徒に狩り尽くされただろうから。
蘭も同じことを思っているそうで、纏う空気にはさほど緊張がない。
たとえ何かがあったとしても、蘭とリュウがいれば、大抵のことは安心だ。
大抵でないことが起こったときは、その時はその時だ。
「にしても、暇だなー。あとどれくらいで起きるんだ、こいつら」
蘭がじとりとリュウを見た。さすがに女の子に『こいつ』と言うのはしないようだ。
「起きてるよ」
むくりとリュウが起き上がった。
「うわああっ」
先程と全くの同じ動作で、蘭が後ずさる。
「さっき日向にも注意されただろ。静かにしろ」
リュウはスナタと真白を見た。
「あとの二人は、確実に寝てるんだから」
二人からは、すうすうと寝息が聞こえる。静かな空間に、二人の寝息が静かに響く。
「わ、悪い……。
じゃなくて、寝ろよ! おれが見張りをしてる意味ねえだろ!」
やや音量を下げて、蘭が私たちに対し、文句を言った。
「おれが起きたのは、日向と蘭のやり取りでだよ。さっきの、おれにもしたように、日向が起きたときも大声出しただろ?」
蘭が恥ずかしがるように、頬を少し赤くした。
「あれか」
起こしてしまった理由が自分だと知り、申し訳ないと思ったようだ。
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