ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.47 )
- 日時: 2022/03/10 13:02
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: uqhP6q4I)
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「わっ! 寒い!」
スナタが体を震わせながら言った。
下の階層へ続く大階段の中は、冷気が支配していた。明かりなどは全くなく、蘭の魔法による炎でなんとか視界を確保しているものの、辺り全体までは見渡せない。余った≪ジャンカバの薪≫に火をつければ多少ましにはなるのかもしれない。だけど、貴重な物資を無駄遣いすることはできない。魔法による炎を灯し続けると、魔力は止まることなく消費される。だから、他のグループは松明を作ったことだろう。蘭の保有魔力はこんなことでは痛くも痒くもないだろうから、そんなことはしないで済む。
スナタの言葉を受け、蘭は炎を大きくし、火力も上げた。炎の色が、赤から青に変わる。
「スナタ、近くに寄れ。炎の近くにいた方が暖かい」
「いいの? やったあ」
スナタは上機嫌で蘭のそばに移動した。
「地下に行くことだし、これからどんどん寒くなっていくんだろうな」
リュウが呟いた。
「えー。わたし、寒いの苦手」
スナタがげんなりした様子でぼやく。
「仕方ないだろ、ここは海の底なんだから」
スナタはしばらく口を尖らせていたが、ふと、気になったようにリュウに尋ねた。
「海の底ってことは、あの入り口とは直接繋がってるんだよね? でも、渦にのまれたのなら、私たちが気絶してた場所に水が溜まってないといけないんじゃない?」
たしかに、私たちは水と一緒にここに落ちてきた。スナタの疑問も不思議じゃない。
「ダンジョンは、解明されてないことの方が多いからな。突然現れるし、攻略したら消えるし。ゆっくり探索してたら魔物に襲われるし、研究が進んで無いんだよ。ダンジョン内でゆっくりしてられるような技量を持ってる人は、研究員より魔法騎士団に入るだろうしな」
スナタはそんなリュウの言葉を聞くと、腕を組んだ。
「んー、難しいね」
「それがダンジョン。だからこそ、人を魅了する」
冒険者の中には、ダンジョンにロマンを抱く者も少なくない。
「あ! 出口が見えましたよ!」
真白が言った通り、私たちの視界に光が見えた。蘭の掌の上にある青白い炎の光ではない。ほんのり青いことは同じだが、あれは、外の光だ。
「何がいるかな?」
わくわくしたように蘭が言う。
わくわく。
わくわく?
それは、なんだろう。
ああ、頭が痛い。
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