ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.48 )
- 日時: 2021/04/16 18:45
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wECdwwEx)
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「ひゃああああっ」
真白が一生懸命に逃げ回っている。
「ははは。相変わらず凄まじいな」
蘭が呑気に笑って言った。
そんな場合じゃないと思うけど。
私は真白の方を見た。
大きなムカデのような魔物が、三体、真白を追っている。そのため、ほうきに乗って高く、空中を飛んでいるが、今にも追い付かれそうだ。
真白の異常体質は【魔物誘引】。その名の通り、魔物を引き付けてしまう体質だ。私がこの《サバイバル》のグループメンバーに真白を選んだ理由はこれにある。
「蘭、真白は必死なんだから、そんなこと言わないの」
スナタがじと、と蘭を睨む。
「わるい」
蘭が表面だけの謝罪をした。
そして、蘭は右手を突き出し、魔法を放った。
巨大な火の玉が三つ作り出され、ムカデもどきに向かっていく。
シャアアアアッ
不快な断末魔に、私は顔をしかめた。
『あ、日向が表情を変えた』
リンが意外そうに言った。
だからなに。
そう言おうとしたけど、面倒臭かったから言わないでおいた。
ああ、面倒臭い。
ムカデもどきはしゅうう、と音を立てて消えた。代わりに、掌に乗るくらいの紫色の魔法石があった。
真白は地面に立つと、とぼとぼと歩いてきた。
「ごめんなさい」
またそれか。
もういいや。反応するのも面倒臭い。
面倒臭い。
……頭が痛い。
くらくら。くらくら。
頭が、くらくらする。
「日向?」
リュウの声がする。
「おい、蘭」
リュウが小声で蘭に声をかけて、こそこそと話している。蘭は頷いて、スナタたちのところに行った。
スナタも私を見て、察してくれたようだ。なにも知らない真白だけが、純粋に言われたことだけを信じ、笑って歩いていった。
「よし、行ったな」
リュウが確認して、改めて私を見る。
「平気か?」
「頭が、くらくらする」
くらくら。くらくら。
回る。回る。視界が回って。
立っているのも、疲れていく。
くらくら。ぐらぐら。
足も、だんだん傾いていく。
地面が揺れる。傾いていく。
立っているのも、面倒臭くて。
「……た」
リュウの声も、遠退いていく。
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