ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.52 )
日時: 2021/03/15 14:33
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: oZokihYy)

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 百合草ゆりくさ。それが、この現状を生み出した原因である植物の名前。
 針葉樹のような鋭い葉がついた、刺のあるつるを、壁に張り巡らせた、気味の悪い百合のような花弁を持つ植物。このダンジョン内に生息するトラップの一種。
「おれも詳しくは知らないけどさ、どこかの班の誰かが間違えて攻撃したらしいぜ」
「詳しくない」
「そう言っただろ?」
 説明する意味すら持たない蘭の説明。
 聞かなくても、それくらいわかる。
 百合草は、魔法や物理的な攻撃に反応し、毒胞子を撒く有害植物。教師たちが何度も、注意するようにと言っていたのに。
「で、どうする? おれたちが手を出すか?」
 リュウが私に尋ねた。
「好きにしたら良い」
 私の言葉を聞くなり、リュウは空間に手を突き出した。
 蘭がぎょっとしたような顔をして、リュウに向かって叫んだ。
「おい! なんか一言くらい言えよ!」
 そして、たたっと駆けて、生徒たちが集まっているらしい場所に行った。
「日向、下がってろよ」
「うん」
 リュウの髪が、ざわざわと浮き上がる。
 さらさらとした水色の髪が、風にかすかに揺らされる。

 大量の水が、空間を覆い尽くした。

 バキバキバキィッ

 渦に飲まれ、倒れていた生徒や百合草が、毒ガスと共に水に閉じ込められた。

【水応用空間魔法・害物排除がいぶつはいじょ

 空間に作用する、水応用魔法のひとつ。大量の水で空間を覆い、排除対象物を水に溶かし込み、排除する魔法。
 かなりの魔法量を消費し、大量の水を操らなければいけないので、扱う者はあまりいない。少なくとも、バケガクの中では。
「よし、終わり」
「百合草や、生徒も巻き込んだのは、わざと?」
 リュウは頭をかいた。
「もっと練習しなきゃだな」
「怒られるよ」
「はははははっ」
 笑い事じゃ、ないのに。
 でも、まあ、

 いいか。

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