ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.59 )
- 日時: 2021/03/21 15:42
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: TVgEc44v)
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「どうして隠れてるの、リュウ?」
私はリュウの気配がする方を向いた。
「隠れる必要ないじゃない」
リュウは隠れようとして隠れている。その証拠に、自身の気配を最小限にまで押さえている。スナタはおろか、蘭でさえも欺けられるほどに。
「なんで、殺したんだ?」
リュウは私の質問に答えず、姿も見せず、声だけで尋ねた。
「要らないから。私にとっても、リュウにとっても」
「なんでおれに殺させなかったんだよ、さっき」
「私が殺した方が、リュウは汚れないでしょう?」
「代わりに日向が汚れるだろ?!」
怒られた。
「そりゃそうだよ。それがこの世界の鉄則。馬鹿馬鹿しいったらありゃしない」
私はやれやれと首を振って見せる。
「それに」
リュウの声が小さくなった。
私はそれを急かさず、リュウの言葉を待った。
「日向。日向がそういう風に話すときは、たいてい、無理しているときだ。そんな、
・・・・・・・・
昔みたいな話し方をしているときは」
昔。むかし。
「そうだっけ?」
「はぐらかすなよ」
そこでやっと、リュウは隠れていた岩影から姿を見せた。
「日向。日向はなんのためにここにいるんだ? なんのためにおれが、おれたちがいるんだ? なんのために、なんの」
辛そうに、苦しそうに、悲しそうに。リュウが言う。
「私の行動が、リュウを傷つけたのなら、私は何度だって謝るよ」
でも。だけど。
「でも、私は行動を改めるつもりはないよ。だって、これが私の生きる理由だもの。リュウだって、知ってるでしょう?」
リュウは黙ったままで、なにも言わない。言えない。
「私は私が間違ってるとは思わない。だから、改める必要性を感じない」
「でも!」
リュウが私の言葉を遮る。
「おれだって、日向が、日向のことが」
そこまで言うと、リュウははっとして、口を押さえた。
「?」
「いや、なんでもない」
辛そうに、苦しそうに、悲しそうに。
いつもそうだ。私はリュウを苦しめる。
私はリュウが大切なのに。
何が正解? 何が間違い?
誰がこの問いに答えられる?
わからない。わからない。
だから私は答えを探す。
何回も。何万回も。
ずっと、ずっと、これからも。
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