ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.61 )
- 日時: 2022/10/06 05:22
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: 4CP.eg2q)
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スナタたちは、私に近づいてきた。
「わあっ! びっくりした、日向いたの?」
曲がったすぐそこに私がいることに驚いたらしく、スナタが目を丸くする。
「うん」
「うんじゃなくてさ。
まあ、いいや。それなら、話聞いてたでしょ? 先生に事情話してくるから、二人に伝えておいてくれる?」
「わかった」
私の言葉を聞くと、スナタは満足そうに頷き、真白と共に私の後ろの方へ向かった。
真白は、絶望したような表情をして、私のことは見向きもしなかった。
私もリュウたちのところへ戻り、先ほどの話の内容を簡単に説明した。
「そっか、真白さん、出ていくのか。
でも、良いのか?」
「かまわない」
リュウは少し寂しげに笑う。
「そっか」
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数分して、スナタが戻った。
「ただいまー」
「あいつは?」
蘭が尋ねる。
「名前忘れたけど、男の先生が同伴で家に帰ったよ。ほら、さっきの扉あるでしょう? あれを使ったの。ここから先に出口なんて無いだろうし、ダンジョン用の緊急脱出アイテムも使えないし、他の班に真白さんを入れるってところもなかったし」
「そうだろうな」
よっぽど嫌いになったのか、蘭は目で「ざまあみろ」と言っていた。
「ねえ、日向」
「なに?」
私は首をかしげた。
「真白への説明、あれで良かった? 色々話盛っちゃったけど」
「うん、上出来」
「でも、どうして? なんでわざわざ誤解させるような言い方をしないといけないの?」
「おい、スナタ」
リュウが制止しようと、私たちの会話に入ろうとした。
でも、私はそれを止めた。
「良いよ、リュウ。
私は、もう、逃げるって決めたの。面倒なことは、もう、うんざり」
「逃げるって、何から?」
困惑したスナタの問いを受け、私は視線を落とした。
「面倒くさいの。何もかも」
「ひ、なた? どうしたの?」
「ちゃんと、いつか、話す」
そう。いつか。
きっと。
第二幕【完】