ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.67 )
- 日時: 2021/04/01 18:17
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: eUekSKr/)
6
「おれが、元凶?」
これまで沈黙を貫いていた、リュウが呟いた。
ジョーカーは答えずに、ナイフを投げた。
ひゅんっ
空気を切る音がする。
私は魔法の障壁でナイフを防ぐことにした。あのくらいなら、これで十分だ。
魔力を集め、薄く広げる。そしてそれをだんだん濃縮させ、層状にする。
うん、一瞬で行った割にはそこそこの出来ではないだろうか。
「あっ」
小さく、声が漏れた。私は急いで短剣を構え直し、飛んでくるナイフを見据えた。
バリィィイン!!
障壁が壊れる音。しかし、ナイフの勢いは緩まない。
ガキッ
短剣とナイフがぶつかり合った。バチバチと、火花が散る。
重たい。ナイフを止めるだけで精一杯だ。力を溜めるだけの時間がなかった。
というのは、ただの言い訳にしかならない。
力を見誤った。それが招いた結果だ。
気を抜けば短剣が吹き飛ばされる。もしかしたら、腕が折れるかもしれない。
私はいい。リュウにこのナイフが当たらないようにしないと。
【風魔法・突風】
【白魔法・筋力補強】
二度の魔法を同時に使い、ナイフを弾き飛ばした。
キィィィィン
金属音が響き渡る。
地面に突き刺さったナイフを見て、ジョーカーは満足げにうなずいた。
「うんうん。流石だね。すぐに間違いに気づいたんだ」
そして、にやりと笑う。
「『日向ちゃん』がボクと戦うのは、初めてだからね。以前と同じ戦い方じゃ、ボクとの力量の差には対応できない」
そんなこと、わかってる。
自分より弱いものに遭遇することがいままでなかったから、忘れていた。それだけだ。
それだけ、ではある、けど、それで、リュウを、危険に、さらした。
「リュウ、動かないで」
私は後ろにいるリュウに言った。
「絶対に守るから」
返事が、ない。
「リュウ?」
私は振り返り、リュウを見た。
リュウは、目を見開き、驚いたような、絶望したような、そんな表情をしていた。
私は理解が出来ず、戸惑った。
でも、リュウに尋ねることはできなかった。
リュウの目は焦点を失い、光が失くなっていく。
目が虚ろになり、ガクンと膝をついた。
しばらくその体勢で停止したあと、右手がびくんと動いた。
「あ、あー」
声が出ることを確認するように、リュウが言う。
そして、立ち上がり、顔を上げる。
右目と前髪が一房、真っ黒に染まっていた。
首を回すも音はならない。そりゃそうだ。体はリュウなのだから。
「あー? 何見てんだよ」
「リュウと話してたから」
するとリュウは鼻で笑った。
「話してなんかねーだろ。こいつが何してたのかは全部わかってんだ」
「なら訊かないで」
私はジョーカーに目線を戻した。ジョーカーは、困惑しながら笑っていた。
「えーっと、その現象、なに?」
7 >>68