ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.72 )
- 日時: 2021/04/07 12:50
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: FpNTyiBw)
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「う、っわあ」
スナタが眉をひそめた。
最下層は、巨大な陥没だった。形としては円状。足場になるようなところは、ぐるっと穴を囲うように、幅五メートルほどだけある。底が見えない大穴に、溢れんばかりの水が溜まり、満ち干きを繰り返している。
そしてその水面には、大量の人が浮かんでいた。その数、およそ、百五十人。
「これ、全員バケガクの生徒だよね? 死んでるの?」
スナタがおそるおそるといった様子で言った。
Cクラスのバケガクの生徒は、約三百人。半数は途中で退場したとして、残りの全員はやられたのだろう。中には教師と思われる格好をしたのも無様に浮いている。
「全員覚えがある顔だな。名前は流石にわからないけど。
死んでるかどうかは、微妙なところだな。何人か引きずり上げてみるか」
リュウが言った。そして、水に手をつけ、目を閉じる。
使おうとしている魔法は、おそらく、【水流操作】。水の流れを操り、浮かんでいる人がこちらに流れてくるようにしたのだろう。
でも、だめだ。
「うっ」
リュウもすぐに気づいたらしく、水から手を引いた。
「どうしたの?」
「魔法が発動できない。というか、魔力が吸い取られる」
「ええっ?!」
ダンジョンのラスボスには、よく、【魔法無効化】のスキルを持つ魔物がいる。
「でも、【魔法無効化】はそのスキルを持っている生命体に直接向けられた魔法にだけ適用されるスキルでしょ? どういうこと?」
「わからない。
日向、何か知ってるか?」
リュウが私を見た。
「たぶん、【フィールド造形権限】が、フロアのボスのスキルに組み込まれているんだと思う」
「それ、なに?」
「私たちはこの場所を、どうにも出来ないってこと。逆に、ここのボスは、どうにも出来るってこと」
「それって、あれ? 指一本動かしただけで建物が出来たり岩が壊れたりするやつ?」
「そう、それ」
「それってさ」
スナタが絶望の色をその目にちらつかせながら、言う。
「神様が使う、神業じゃなかったっけ?」
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