ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.74 )
日時: 2021/04/07 12:59
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: FpNTyiBw)

 13

 リュウたちがいない。代わりに、額によどんだ白い水晶が埋め込まれた人型の生物がいた。

 それも、たくさん。

 水面の上に、じっと立っている。後ろに手を組み、ただ、じっと。
 敵である私がいるにも関わらず。『王』の命令がないと動けないのだろうか。
「ん?」
 おかしなことに気がついた。

 こいつら、瞳がない。

 一人の例外なく、全員が白目を向いている。
 まさか、これで『白眼』を意味しているのか?

 帰ろう。まずはそれからだ。

 私は再び水の中に潜った。

 スキル【魔力探知】発動

 架空の波動が私を中心に広がっていく。魔力を持つものが、大量に見つかる。
 たくさん、たくさん、魔力保有者の集団があちこちにいる。おそらく、この目の前の集団と同じようなものなのだろう。

 見つけた。

 ひときわ強い、三つの魔力。リュウたちの魔力は特殊なので、間違うことはない。
 幸い、距離はさほど離れていない。すぐに戻れるだろう。
 私は移動を開始した。二、三分ほど泳ぐと、一度顔を出した。
「はぁ、はぁ」
 壁。この向こうに、リュウたちはいる。
 うん、よし、わかった。
 今度こそ、戻ろう。
 私は潜り、壁の下をくぐった。
 そして、水面から出た。
「あっ、日向!」
 スナタが叫んだ。
「ほんとだ! おーい」
 待つということが、出来ないのだろうか。
 私はその辺にいた誰とも知らないやつの腕をつかみ、引っ張って、水から上がった。その場所は最短にあった場所なので、リュウたちからは少し遠い。
 駆けてくる三人の姿が見えたので、私はこの場で待つことにし、座り込んだ。
 髪からは、数滴水が垂れてくる。
 しかし、髪も服も、すぐに乾いた。ローブに付与された効果だ。

 だんだん音が大きくなる。三人が近いのだろう。
 私は顔を上げ、直後にぎょっとした。
「ひなたぁ!!!」
 スナタが目に涙をにじませ、私の名を呼びながら、抱きついてきた。
 そのままわんわん泣くスナタに困惑し、私の頭の中は「?」で支配されていた。

 ? ? ?

「スナタ、ずっと心配してたんだよ。おれはそうでもなっかたけどな。日向が無事なのは分かってたから」
 蘭がなぜか得意気に言った。
「なに気取ってんだよ。さっきまであたふたしてただろうが。『何でおれは泳げないんだー』って」
「だーっ! うるせえ! 言うな!」
 蘭が顔を真っ赤にした。
「それを言うなら、お前だって何度も潜ろうとしてただろ!」
「おれは心配してないなんて言ってない。
 はい、日向。預かってたリュック」
「話をそらすな!」
「そらしてないだろ! 返しただけだ!」
 私は泣き続けるスナタの頭を撫でながら、騒ぐ二人に言った。
「そろそろ話しても、良い?」

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