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ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.80 )
- 日時: 2021/04/12 20:55
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: EM5V5iBd)
19
ボコオンッ!!
急に、大きな音が響いた。
「うわっ?!」
リュウが声を上げ、音がした方を見る。
水面をはさんだ向かい側の、少し右にずれた辺り。
作戦会議でもしていたのか、やや多くの人が集まっていたようで、そこを狙ったらしい。
「あの、少女が、くらげを操ってるみたい」
中央に立っていた少女が、ふわりと浮かび、上へ下へ、右へ左へ手を振ると、それに応じるように、水面から巨大なキャノンボールクラゲが飛び出し、壁を砕いていく。
それに巻き込まれ、さらに兵士たちが倒れていく。
悲鳴で、うるさい。
私は耳を塞いだ。
「日向?」
「平気」
私は耳を塞いだまま、思考を巡らせた。
【フィールド造形権限】所有者は、この階層のボス。それは違いない。
つまり、このフィールドを破壊できるのは、ボスのみ。
そして、砕かれた壁。
これらが意味するもの、それは。
あの少女が、ボスだということ。
でも、おかしい。〈呪われた民〉は、全て狩り尽くされたはず。
・・・・
それは、確認済み。
でも、あの外見は、どう見ても、〈呪われた民〉そのもの。
まさか、突然変異?
いや、違う。
あの少女からは、生気を感じない。
生身じゃない。
あれは。
「なあ、日向」
リュウが言う。
私は耳から手を外し、リュウの言葉を耳に入れる。
「もしかしてさ、あの少女、化身じゃないか?」
「私も、そう、思う」
化身。器や形を持たぬ神が、人の世に干渉するために用意する、仮の姿。
「神って感じはしないけど、それに近いような気がするんだ」
「うん」
少なくとも、ボスがあの姿を作り、操っていることは、たしかだろう。
ん?
「違う」
「は? どっちだよ」
「違う」
あれは、違う。
「化身じゃない」
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