ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.82 )
- 日時: 2021/04/21 07:03
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: qpE3t3oj)
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「ひなたー! リュウー!」
遠くの方から、スナタの声がした。
振り向くと、スナタと蘭が、こちらに向かって歩いて来ていた。
私たちは合流し、現状を確認した。
「兵士は、三分の一はやられた。
リュウが倒した奴らの中で、何人か、意識を取り戻したんだよ。それで、生徒がまだ生きてるってわかって、やり辛くなったみたいだ」
私は、少女のことを話した。
「あの少女は、たぶん、神」
「かみぃっ!?」
「聖力は感じないから、神としての力は、もう、ないと思う。
神として降りたんじゃなくて、一つの魂として、降りた。おそらく」
もしくは、神格を剥奪された、元・神。
そういった神は、意外と、結構、いる。妖怪になったり、怨霊になったり、土になったり、木になったり。形は様々だけど。結構、いる。
「ダンジョンのレベルは低いって、先生言ってたのに!」
「あー、さっき、先生もぼやいてたな。
今回の《サバイバル》の場所は、学園長が指定したらしいぜ」
「理事長が?」
理事長。あいつが。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「えっ、きゃあっ!」
スナタが悲鳴を上げ、蘭にしがみついた。
「な、なに? なに?」
「落ち着け! 地鳴りだ!」
「落ち着けないよお!!」
地面が揺れる。
足場に、亀裂が入る。
私は、水面をみていた。
水面は真っ白で、仄かに光を放っていた。
水面はだんだん膨れ上がり、その度に、足場の亀裂が大きくなる。
「なにか、出てきてないか?」
リュウが言った。
「ダンジョンボス」
私はそれだけ言った。
クラゲは、水中から出てこれない、はずだった。
あの少女が、他にも加護を与えていたのだろうか。
バコオンッ!!!
大きな音を上げて、足場が崩れ落ちた。
「う、うわああああっ!!」
蘭が、亀裂の間に、まっ逆さまに落ちていった。
「蘭!」
私よりも先に、リュウが、蘭の元へ向かった。
それなら、私は、スナタの方へ行こう。
タンタンと足場を跳び移り、スナタの近くへ寄る。
「ひなたぁー、もうやだあ!」
スナタが私に抱きついた。
「全滅」
「え?」
「見て」
兵士もモンスターも生徒も教師も、全員、沈んだ。
ザバッ
「おい、蘭! 起きろ!」
「うぅぅ」
リュウが、蘭を、わずかに残った足場の残骸に上げた。
「よっと」
そして自分も、別の残骸に乗る。
「邪魔者は、消したわ」
私のすぐ後ろに、少女がいた。
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