ダーク・ファンタジー小説

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.86 )
日時: 2021/04/16 20:52
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wECdwwEx)

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『おい』
 なんだよ。
『めっちゃ見られてるぞ』
 それくらい、わかってるよ。
 おれは食べる手を止め、スプーンを置いた。
「ルア、明虎」
「はい!」
「なに?」
 瞳をキラキラと輝かせ、二人がおれの言葉に応える。
「後でちゃんと遊んでやるから、向こうで本でも読んでろ」
 おれがぎっしりと本で埋め尽くされた本棚を指差すと、二人はむうっとむくれた。
 なんだ?
 二人の(成長速度を考えて比べたときの)年齢はおれよりも低いが、ヴァンパイアの家系に属しているにふさわしいだけの知能が備わっている。少々二人の年代には合わない本もあるが、内容は理解出来るはずだ。何が不満なのか。
『二人の年代には合わないって、いかがわしい本でもあるのか?』
 ねえよ! ばか!
「お兄様」
「龍にぃ」
「ん?」
「「ばかあ!!」」
 そう同時に叫ぶと、仲良く(?)二人で部屋を飛び出していった。
「舞弥姉、おれ、なんか悪いことした?」
「あのね、龍馬。二人は、龍馬とお喋りしたかったのよ。遊びたいのももちろんだけどね」
 あー、なるほど。
『あーあ。せっかく慕ってくれてるのになー』
 お前に言われたかねえよ!
「食べ終わってからでいいから、二人のところに行ってあげなさい。なんだかんだ言って、龍馬のことが大好きなんだから」
 大好き。その言葉にくすぐったさを感じ、おれは自分の頬がかすかに緩むのを感じた。
 舞弥姉が微笑ましそうにおれを見ているのに気づいて、すぐにそれを消したけど。
「うん、わかった」
「あ、でも、ちゃんと味わって食べなさいよ。食材にはきちんと感謝して」
「それもわかってるから!」
 おれは舞弥姉の言葉を遮り、食事を再開した。

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