ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.94 )
- 日時: 2022/04/25 17:51
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: f0TemHOf)
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「話というのは、おそらく予想しているだろう、ダンジョンのことだよ」
誰も驚く様子はない。学園長もそれが当たり前であるかのように、何の反応も示さない。
「どうだった?」
いつものごとく、情報量の少ない言葉。
おれたちが理解するよりも先に、日向が言った。
「成長を司る堕天した神が、くらげを育ててた」
学園長は首をかしげた。
「堕天? それは……」
「違う」
学園長が言葉を発するよりも先に、日向は答えた。
そして、それ以上話すつもりはないという意思表示として、顔を背けた。
冗談ではなく本気で、必要以上に拒絶の意を示した日向に対し、少し申し訳なさそうに、学園長が言った。
「冗談だよ。わかってる。
それにしたって、情報が少ないかな。一番知りたかったことはそれだから、流石だとは誉めるけど」
「理事長に、言われたくない」
学園長は苦笑した。
「まだそう呼んでるんだね、君は。
それもそうだ。それは謝ろう。君の理解力は把握しているから、どうしても楽をしがちだ」
日向は言葉にこそ出さないものの、「言い訳はいいからさっさと話せ」と、目で圧をかけていた。
「それもそうだな。さて、どうだった?」
今度は日向はなにも言わなかった。
「〈呪われた民〉を模したと思われる、少女の石像がありました。おそらく、堕天神と石像の少女は、同一人物かと」
人物ではないけど、と、おれは心の中で呟く。
そして、言葉を続けた。
「また、『世界に危険視され、世界にこの場所をダンジョンと指定された』と言っていました」
「世界に?」
学園長は、日向を見た。日向はその視線に気づき、じっと、学園長を見つめる。そして目を閉じ、ふいに、ゆっくりと首を左右に浅く振った。
「ふむ、世界とは、『本当の』世界、という意味か。
なかなか興味深い」
学園長はニヤリと笑った。
「ところでさー、何でおれたちを呼んだんだ? 呼んだんですか?」
蘭が言い直しながら、学園長に尋ねた。
それもそうだ。報告なんて、既に聞いていてもおかしくない。それに、情報源にわざわざおれたちを選ばずとも、さらに適切な人材なんか腐るほどいる。何せここは、バケガクなのだ。
とぼけた『ふり』をして、おれも学園長を見た。
学園長は不適な笑みを崩さずに、否、それに拍車をかけて楽しそうに口もとを歪め、視線を日向に移した。
もちろん、何も言わない。
「気が利かないな」
言葉とは裏腹に、学園長は笑みを保つ。
「それは……」
質問に対する答えをおれたちが聞こうとした、そのとき。
コンコンコン
予定外の訪問者によって、学園長室の扉が叩かれた。
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