ダーク・ファンタジー小説
- Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.99 )
- 日時: 2021/05/01 07:38
- 名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: yV4epvKO)
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「私の名前は、エリーゼ・ルジアーダです。[エンディナーメモス]のリィカ・ルジアーダ伯爵の、一人娘です。
入学理由は、【魔法満干】。魔法発動に使う魔力に波があり、安定して魔法を使うことができません」
この流れは、おれたちも自己紹介をするものだ。
おれは三人を見回し、意志疎通を図った。
自己紹介くらいなら、大丈夫だ。
下手に拒否をすると、あとあと面倒になりかねない。
小さく頷き、口火を切った。
「笹木野 龍馬です。吸血鬼五大勢力の一つ、カツェランフォート家の当主の孫です。
人間と吸血鬼の半怪人で、〔邪神の子〕と呼ばれています。
入学理由は」
言葉を濁すな。耐えろ。
耐えろ。
「【二重人格】、人格異常です。学園へは、自主希望で入学しました」
二人の顔色が変わった。
「自主希望なんて、珍しいですね」
ルジアーダ嬢はそういうけれど、本当は、おどろいているのは、そこではないはずだ。
二重人格など、そうはいないし、いたとしても、良い印象は持たないだろう。
「東 蘭です」
おれに気を遣ったのか、蘭が言った。失礼に当たるかもしれないにも関わらず。
意外と気が利くんだよな、こいつ。
「天陽族の、呪解師の生まれです。
入学理由は、【不適合】。おれは呪いを『解く』よりも、『壊す』の方が性に合ってるので」
なるほどな。おれも、正直に言うんじゃなかったぜ。適当に【才能過多】とでも言えば良かったかな。一応、それも入学理由の一つだし。
「でも、一族きっての〔才児〕と呼ばれているんでしょう?」
「昔の話です。幼い頃は、力さえあれば評価されていましたから。いまは、力に加えて、丁寧さや、精密さなどが求められてきていて、どうも、おれには合わないんですよ」
本当はなんとも思っていないくせに、さも気にしている風に、やや自虐ぎみに話す。そのお陰で、庇うように、という格好で、すぐにスナタに話し役が回された。
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