ダーク・ファンタジー小説
- Re: 何故、弟は死んだのか。 ( No.15 )
- 日時: 2012/08/11 18:03
- 名前: バチカ (ID: LuHX0g2z)
- 参照: えらい狂ってきた。三章の始まり、終章へと物語は進む——
暗闇の実験室、二人の人物が対話している。
「…どういう事?」
一人が、信じられないと言った顔色でもう1人に問い掛ける。
「つまりさ、お前すでに死んで灰になってんのよ。それを俺がパソコンイジッてこう…具現化っていうの?なんてゆっかそんなことを…」
「なんで!?だって、こんなに自然に痛みを感じるんだ!俺が……だっていうのかよ!!」
もう1人はこくこくと頷く。
「だから、最先端の非化学式プログラム導入の末にまぁ…ちょっこし闘争心が掻き立つようなドリンクを発注したって言ってんの…カナ?あ、なんだっけ?なんていう名前だっけ?アド…ごめん、忘れた。」
クス、と笑う。それまで不自然に無理して微笑んでいた彼とは対照的な、大人びた微笑み。そんな不敵なほほえみはまた不気味で、目があった瞬間に、ぞわりと鳥肌が立つ。
「もう、お前には用がないからココで契約は破棄っつーか?ま、勝手にしちゃって悪いけど終わりな。」
契約は季とはまた勝手なことを—。
そう言って出て行こうとして背中を向ける一人に、もう1人は殴りかかろうとした。
「行動パターン幼稚すぎ。そういうところがあめーんだよ。」
しかし、行動を読まれたのか素早くかわされ、あげくにはその拳を蹴り上げられた。
「った…っつぅ…。」
蹴り上げられた痛みでしゃがみ込み、何とか痛みを和らげようとその手を擦る。
「最初に見た時も思ったが良くできたホログラムだなァ。相手に攻撃を与えることもできれば痛みを買うこともあり、それが普通の人間と同じように体中に響いちまう。」
また不敵に男は笑う。「さすが俺の__だぜ。」と、言い加え、しゃがみ込んだ少年が回復しない今のうちにと、実験室を後にした。もちろん、彼が抜け出せないように鍵をかけて。
「ま…て…。」
よろよろと立ちあがり、扉へ向かう少年。部屋の外に、まだ男はいるようで、、鍵をかけた扉によりかかり、余裕の表情を浮かべる。扉の向こうの少年の今の姿を想像し、クククッと笑う。きっと今頃、よたよたとこっちに向かってきているに違いない。後に、ドンドンとあらぶった音と、振動が扉を通して伝わってきた。
「開けろ…!開けろ!」
「ハハハハッじゃあなー?」
「ふざけんなよ閉じ込めやがって!お前、どうにかしてんだろ!?」
少年は繰り返し繰り返し、扉をたたき続ける。男は足早に実験室を離れた。まだ、あの子の声が聞こえている。実験室のある森には響かず、空気に吸い取られるように消えていく。遠ざかるほどにどんどん。
「じゃあ、な。俺の実験台。」
なぜかそのようなことを口にした。男はまた笑い。また、言葉を発する。
「じゃあな、刀山誠司クン——。」
子供を監禁する、狂気じみた男。それなのに彼の頬には涙が伝っていた。
涙の意味、それは分からない。
涙を流す本人にしか、涙の意味は解らない。
- Re: 何故、弟は死んだのか。 ( No.16 )
- 日時: 2012/08/13 20:13
- 名前: バチカ (ID: LuHX0g2z)
- 参照: 死んだ理由がわかるのならば。
窓の外に目をやると、雨が降っている。もうすぐ強くなりそうな雰囲気、美奈子は顔を霞ませた。
強い雨なんか嫌いだから。とあるあの日を思い出してしまうから。誠司の葬儀から、また4か月が過ぎた夏の日。今年は夏だというのに雨の日が多くて、あの衝撃的な事件を思い出させる。雨が降っていると、まるで4か月前、誠司が死んだことを美奈子に執拗に言い聞かせているみたいで、なんだかむしゃくしゃする事ばかり。
誠司が誰に殺されたのかは、この時点でもまだわからないままだった。いくら警察が粘っても粘っても、証拠なんて出てこなかった。もともと、こちらの思う手がかりが無いせいで該者も見当たらないし。刺し傷があったことから、きっと刃物で刺されたのだという事だけは、周りの人間も含めて意見は一致していたが。
「最近は殺人事件が多いな。」
床に転がっていたリモコンを手にとり、電源を入れるとニュースをやっていた。眼鏡をかけ、きっちりとした七三分けにした中年のアナウンサーが、ニュースを読み上げている。
「昨日に引き続き、K区の中学校にて、殺人事件が起こったようです。」
(中学で、殺人事件…?)
「こ、ここ…!」
その中学は誠司の通っていた中学だった。つらつらと並べられる被害者の名前。どれも誠司の友達や先生ばかり、「福村 弘也」「武富 幸久」「荒井 和弘」「森角 英介」「三谷 春樹」…
どくん…と心臓がなる。
(三谷君…)
「被害者の殆どはこのK中学の教師、生徒です。加害者はまだ、身元もわからず、現在捜索中です。」
なんだろう、この胸騒ぎは。誠司が死んだ時と同じ。自分の体の体温が高くなり、ついでに心臓も高鳴る。どうにもこうにも胸がドキドキ言って、落ち着かない。これは、誠司の死に関連するものがあるんじゃないかとか、誠司の友達や先生ばかりなんだろうとか、何より大きく、もしかしたら犯人がつかまえられることが出来るんじゃないかとか。
嫌な予感と同時に、期待を胸に抱いてしまう。人が死んでいるというのに不謹慎なことだ。
(何考えているの……)
わかっているけれど、私は———