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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 何故、弟は死んだのか。 ( No.25 )
- 日時: 2012/08/15 12:30
- 名前: バチカ (ID: LuHX0g2z)
誠司の学校に行くまでの道には、森がある。森の中は人間が入ってもいいように道と仕切りがあって、その道を中学校は通学路に入れていた。誠司もこの通学路を使っていた。中学へ向かおうと美奈子はこの道を走っていた。道は砂利でできていて、進むごとにじゃりじゃりと小さな砂と石が音を立てる。木々の葉が向かい側同士で重なって、まるでトンネルを抜けているみたいだ。トンネルの奥には空をオレンジに染める太陽がちらりとのぞいている。
「…?」
美奈子は不意に足を止めた、とある音を聞いたから。とても小さな音ではあるが、誰かの声が聞こえた。なんといってるのかここからではよくわからない。
「…って…な…お…」
どうしてかはわからない。それに、今は誠司の死んだ理由が分かるかもしれないから、学校へ向かっているのに。
「…お…う…か…!」
とぎれとぎれに聞こえる誰かの嘆くような、泣き叫ぶような小さな声はどうしてか美奈子を呼んでいるような気がした。
(どうしよう…)
行かなければ行けない。そんな気がしていたのはさっきまでのこと。それなのに今はまた別のものに引き寄せられているような気がする。
「誠司くん、ごめんね。…すぐに、行く!」
美奈子は声のする方へ駆け出した。誠司のことを見捨てるつもりなんてない。それでも、もしもまたこの声が苦しんでいる人で、自分や、また他の誰かに助けを求めているのだとしたら。きっと今すぐ駆け寄ってあげられるのは自分だけなんだろう。(他に人がいるのならまた別だけど)
(エゴイズムだと言わないで、私は自分の決めたことを信じたい)
誠司も、それを願っていると思う。
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