ダーク・ファンタジー小説

Re: 呪蝶屋(リメイク版) ( No.11 )
日時: 2012/04/05 17:21
名前: 夜湖 ◆ktBRgyojdk (ID: 2FwfSENv)

「罪を重ねる罪人よ。恨み晴らし、魂を封じます!……魂封蝶呪!」
…………………………
「……ぎゃあああぁぁ!」
突然、雷葉の父親が悲鳴を上げ苦しみ出した。苦しそうにもがき、雷葉の父は赤い蝶の中に吸い込まれて行った。
父親の叫びで正気に戻った雷葉は、その声で顔を歪ませていた。
「呪怨……聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「良いわよ。何かしら?」
蝶をビンに入れ、真っ赤なコルクで蓋をした。そして雷葉を見る。
「毎回こんな叫びを聞くことになるのか?」
「ええ。でも今は急いでいたからまだマシな方よ。
いつもなら全身バラバラの刑とか、毒死の刑の後に魂を封じるの」
私は淡々とした口調言ったが、雷葉はさらに顔を歪ませた。
「何でも慣れよ。さあ、呪蝶屋へ戻りましょう」
雷葉のやる気が本気が確かめるため、「慣れ」という言葉を強調した。
顔を青くはさせたが、目は強い意志を持っている。……本気ということね。
町は男性が急に叫び苦しみ出した事、そして消えていった事で大混乱に陥った。
雷葉はその様子を申し訳なさそうに見つめ、かつて父が居た場所に目線を動かした。
「……恨んでいるなら、早くしなさい」
酷いとは思う。けれど店にはソルが待っているし、何しろこれを自分でしていくのだ。
「……………………」
けれど、動かない。近付こうと数歩歩み寄ると、肩が震えているのに気付いた。
「……泣いてるの?」
返事は何もない。少ししてから、絞り出す様な声で言った。
「……憎いんだ。母さんが死んだのは『父さん』が僕にも母さんにも暴力をしていたからでもあるから。
でも……たった1人の肉親だった。……悲しいのは、泣いてるのはたった1人の肉親だから。
あんな『父さん』でも、優しかった時があったんだ。
……行こう、呪怨」
涙を振り払い、そう言った雷葉の目は決心そのものだった。
「やるよ。どんな事になろうと。……もう決めたから」
雷葉の近くにあるビンが、コロコロと転がり海に落ちた。

……如何して、貴方はそんなに『彼』に似ているの?
あの日、私に言った言葉も、決心の目も同じだった。
『やるよ。どんな事になろうと。……もう決めたから』