ダーク・ファンタジー小説

Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.15 )
日時: 2021/06/17 16:55
名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)

 -第十二話「牢獄」-

「なんでだよ! なんで俺ら捕まってるわけ!?」
 叫びながら鉄格子を蹴り飛ばすヴィラ。
 一行の手には、鍵付きの手錠がかけられていた。全員、広めの檻に閉じ込められていた。
「……こりゃぁ、まずいね。レイヴィー、どう? 解除できそう?」
「ごめんなさい。魔法返しがついていて……外すのには一日と半日かかります」
 サーラからの問いに、アヴェーニャの手錠に手をかざしながら、苦い顔をしてそう答えるレイヴィー。
「ねぇレイヴィー。これさ、その、白き勇者が村人洗脳してるルート濃厚じゃない? 前に来たとき……と言っても百年は前だけど。そのときは、こんな感じじゃなかった」
 というライト。ワイトの中でもかなり長寿な種族に生まれたライトは、この村に来た経験もあるため、今回一行の中に組み込まれた。
「凄くじれったいです。……黒団に寝返ってた方が楽ですよ、これ。ただ、侵入者への警戒しか感じないのがまた……」
 苛立ちが混じる声でそう言いつつ、座り込むメイヴェル
 なぜ、このようなことになったのか。それは、数時間前――レイヴィー達が村に転移しきったときに起きた出来事だった。
 村人達が、レイヴィー達に襲い掛かったのだ。
 あくまで、一行の目的は”村の防衛”。反撃するわけには行かず、流されるがままに、この牢獄に入れられてしまったのだ。――厳密に言えば、この牢獄も、手錠も、レイヴィー達にとっては簡単に壊せるものだったが、かけられている魔法返しの術がやっかいだった。檻も頑丈に作られているため、簡単には壊せなかった。
 どうしたものかと頭を抱えていると、一人の少女が牢獄のそばにある階段から駆け下りてきた。肌が焼けていて、動きやすそうな服を着ていた。少し周りを見ると、小声でレイヴィー達に話しかけてきた。
「迷惑をかけてごめんなさい、少ないけど、ご飯を持って来たわ。あと少し待ってもらえる? 多分、ライレンがあなた達を呼ぶと思うわ」
 そう言うと、おにぎりがのった紙で出来た皿とコップを手渡し、コップには水をついでくれた。
「ライレン?」
「あなた達が知ってるのかどうか知らないけど……白き勇者ってやつ。これで分かる?」
 レイヴィー達は息をのんだ。
 白き勇者――つまり、村人達を洗脳しているかもしれない張本人。それが、自分達を呼んでいる。――自分に悪意がないのを伝えるためか、はたまた処刑というのもあり得るか。
 捕らえてそのままというわけではないだろう……せめて普通の縄に変えてさえくれれば反抗できるかもしれないが、相手は人間。刺しても余裕で動き続ける魔物とは、全くもって違うのだ。それだけで、レイヴィー達にはかなり重い足枷がつく。
 色々な考えが巡りながら、全員考えが一致していることがあった。この少女からは、まったく敵意を感じられないことだ。
「あっ、勘違いしないで! ライレンはいい子なの、本当に。ただ、村のみんなが……」
 皆の表情が曇ったのに気付いたのか、少女はそう言った。そして、少しの間黙り込み、苦しい顔をしながらこう言った。
「……勝手に、ライレンを祀り上げたの。何かに操られてるみたいに」

 -第十二話「牢獄」終-