ダーク・ファンタジー小説
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.16 )
- 日時: 2021/07/18 14:40
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十三話「少女ライレン」-
「どういうことです? それ」
顔を曇らせながら、小さくそう言った少女に、レイヴィーはそう問いかけた。
「私にもわからないのよ。ただ、勝手にライレンを祀り上げて、崇めて、お助けください、白の勇者様って。
そうならなかったのは、私たち子供だけ。それを少しでも否定すると、家族だろうと、平気で捕らえて、牢獄に入れて、ひどい拷問を受けさせるの。……わ、私の、お兄ちゃんも、今も、目を覚まさなくて……」
肩を震わせながらそう言った少女を見て、レイヴィーは心の中で舌打ちをした。
そんなことが、偶然で起こるはずもない。こちら側の戦力を一時的にでも狙ったのか、私たちが内側から食いつぶされるのを狙ったのか。少なくとも、被害が出たのは確かだ。
「……ライレンは、優しいから。私はそんなのじゃないって言えないのよ」
悔しそうな声で、少女はそう言い、レイヴィー達を見た。
「そういえば、名前言ってなかったね。クラハよ、クラハ・ガーデン」
全員の自己紹介を終えると、もう少しだけ耐えてと言い、クラハは上に行ってしまった。
「……さてと、じゃあそれまでの間、どうする?」
「はい! ベリーのマジックショー!」
アゲリが手を挙げ、端っこで杖を抱えて座り込んでいる少年を見る。
「へ?」
前髪が長く、片目しか見えてないベリーと呼ばれた少年はその言葉に驚き、間の抜けた声を出した。そして次には、ものすごい勢いで首を横に振った。
「ぼ、ぼくのマジックなんて、全然すごくないし……」
「でも、魔法を使わんであんなのでぎるって、結構凄いと思うげど」
「サレーナさぁぁん……」
涙目でサレーナを見るベリー。サレーナはニヤッと笑った。
ベリーはマジックが得意で、集中のためにマジックをよくやっている。その腕前は確かなもので、普通にそれで食べていけるほどだが、本人がとても内気なため、それを見せびらかしないし、したがらないのだが、白団内では人気なのだ。
「ほーらー、ベリーお願い!」
「う、うぅ……少しだけですよ?」
半ば涙目になりながらそう言うと、トランプを取り出し、混ぜ始めた。
☾
ベリーのマジックショーで暇つぶしをすること一時間。数人の村人が階段を降りて、何故かレイヴィー”だけ”を檻から出した。
「ハァ!? おい、俺も出せよ!」
「黙れ、あのお方はこの方だけをお呼びになられたのだ。さぁさ、こちらへ。あのような者共と話すことはございません」
「え?」
自身に向かって敬語を使われ、手錠を外されたことに驚きながら、後ろを振り向き、口パクで、「何とかしますので、待っててください」と伝えた。
外へ出ると、村の中で一際大きな家へ通された。中には、着物で身なりを着飾り、正座をした少女がいた。彼女から感じられる雰囲気は、まるで女王のようだった。
「……二人にして。彼女と話します」
レイヴィーを見て、次に村人へ目を移してそう言う少女。村人達は立ち上がると、外へ出た。
村人達が外へ出たのを確認すると、少女はハァッと息をつき、正座を崩した。
「あぁもう足痛い! 無理!」
「!?」
そう叫んで足をっさすている姿は、普通の少女そのもので、レイヴィーは少し困惑した。
「……あ、ごめんなさい。びっくりさせたよね。私はライレンです。あなたは、レイヴィーさんよね」
「はい、そうですけど……」
「私は、あなたに……いいえ、あなた達に頼みたいことがあるのです」
-第十三話「少女ライレン」終-