ダーク・ファンタジー小説

Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.17 )
日時: 2021/08/07 16:38
名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)

 -第十四話「解術」-

「この村の洗脳を、どうにかして解いてくれませんか」
「! ……やっぱり、洗脳の類なんですか?」
 そう聞くと、ライレンは頷き、話し始めた。
「心当たりはあります。先日、魔物が来たんです。ワイトを装っていましたが、こうなって気が付きました。恐らく、あれは黒団の者でしょう」
 悔やむかのようにそう言うライレンを見て、レイヴィーは黒団への憎悪が更に増した。
 年々、魔物がワイトを装って油断させ、人を食い殺すという事件が増えている。なんていう卑怯な……。
「特に、悪さをするでもなく去っていきました。その数日後です、村人達がおかしくなったのは」
 あぁ、やはり黒団の仕業か……。
 だが、こんなことをしたのには訳があるはず。単純に襲うためならば、その場で軍を差し向けてしまえばよいのだから。
 ただ、その理由が分からない。……何か、何か理由が……。
「恐らく、あの魔物が村の者に何かかけたのでしょう」
「解術であれば、私達の中に出来る者がいます」
「ほんとですか!? お願いします!」
 そう言われ頭を下げられて、レイヴィーは焦った。
「お礼など結構です。それが仕事なんですから」
「いえでも、酷いことをしたのに、引き受けていただいて……」
「悪いのは黒団です。あなた方は悪くない」
 そう言うと、ライレンは泣き出してしまった。
 見た限り、ライレンは12~13だろう。白い髪が長く伸び、立っても床につくだろう。体を覆える程長く白い髪から、白き勇者というのの信憑性が増したのだろう。
 優しい子なんだろう。自分にすがる村人達に否定ができなかったのだろう。自分は神でも勇者でもないと言えなかったのだろう。
「……絶対に成功させます」
「これが鍵です。私から村人達に話しますので、大丈夫です」
「ありがとうございます」
 鍵を受け取り、家を出て、真っ直ぐ牢へ向かった。
 階段を駆け下りると、皆がこっちを見た。
「お、レイヴィー!」
「悪いのですが、とりあえずベリーだけ解放します」
「ハァッ!?」
 ベリーの手錠を外しながら事情を説明すると、外しきったのとほぼ同時に、ベリーは解術の呪文を唱え始めていた。レイヴィーは音をたてないようにしながら他の者の手錠を外して回った。
 解術はかなりの集中力がいる。言うなれば、絡まった糸を一つ一つ解いていかなければならないのと同じぐらい難しい術なのだ。脳内で絡まった術の糸をほどきながら、呪文も絶えず唱えておかなければならない。ベリー以外の誰かがやろうものなら、途中で挫折する者もいるだろうし、レイヴィーがやれば終わってすぐぶっ倒れるだろう。
 だが、ベリーは違う。
 ベリーは解術の才があるのだ。
「……ハァっ……」
 しばらく待っていると、ベリーが大きく息を吐いた。
「大丈夫? 水だよ」
「ありがとうございます……終わりました……」
 メイヴェルから渡された水を飲むと、終わったことを伝えてくれた。
 牢から出ると、村人達は倒れていた。
「あっ、レイヴィーさん!」
 ライレンが駆け寄ってきた。
「無事終わりました」
「……! よ、よかったぁ……」
 涙を流しながら、ライレンは微笑んだ。
「しばらくこの村を護衛させていただきます」
「メンタルケアもうちがバッチリやるさけ、心配せんでええよ」
「ありがとうございます……ありがとうございます!!」
 その言葉に、一行は嬉しそうに微笑んだ。

 -第十四話「解術」終-