ダーク・ファンタジー小説
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.9 )
- 日時: 2021/04/30 21:13
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
第二章【祀られる少女】-第七話「戦闘訓練」-
「んじゃ、二人一組になったら各々訓練開始ねー」
銀髪の高身長な男性がそう言う。彼は白団副団長、サーラ・シェーリス。薄い緑の瞳に、方眼鏡を付けている。
「ライト、私と組もう」
アゲリがライトに話しかけ、微笑む。
「奇遇だね、アタシもそう言おうと思ってた。んじゃ、魔法能力使用可能スペース行こっか」
「らじゃ!」
敬礼ポーズをして微笑むアゲリ。
訓練場には二つのスペースがある。魔法能力使用可能スペースとは、彼女ら一人一人が持つ‶魔法能力"や魔法が使用可能の場所だ。この世界に生存する者全てが使用可能というわけではないが、白団団員はほぼ全員が能力を持っている。
「副団長、私と組みましょう」
「あっ、レイヴィー。いいよ、どうする?」
「能力使用禁止訓練で。私の場合、能力に頼り切ってしまうところがあるし、それに、能力を使うにしても触れることが必要ですから」
「理由も用意してて立派だよ。早速やろっか」
そう言ってレイヴィーの手に触れ、次にはワープしていた。この時点で、レイヴィー、サーラペアの訓練は開始している。
まずレイヴィーはサーラから距離を取り、ワープする前にサーラから手渡されたナイフを持つ(玩具です安心してください)。
レイヴィーが斬りかかり、サーラが避けるを繰り返す。
「ってナイフだけ? 能力使用禁止とはいえ魔法は使っていいんだよ?」
「魔法使うと魔力消費がありますし、今能力使用禁止なので……!」
「なるほどね。でも、君の魔力はそんなすぐ魔力切れを起こすほど少なくないと思うけど……」
と不思議そうに呟きながら斬りかかってきたレイヴィーを受け流し、一度距離を離すと炎魔法を使いレイヴィーに向かい放つ。防御魔法を使い、それを防ぐレイヴィー。
「……そうですね、一応」
片手を出して手のひらの上に水球を作り出し、その中に微細な雷魔法を入れる。
「あー……」
恐らく彼女の中では本気ではないのだろうが、防御できなければ普通に感電する魔法を使ってくるのは少し怖い。初対面の人は「一応とは?」となるだろう。
思いきり投げられた雷入り水球を防御魔法を使って弾く。
「!」
「一瞬の油断は戦場じゃ命取りだよー?」
その声が聞こえた次の瞬間、レイヴィーの視界が暗転した。
-第七話「戦闘訓練」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.10 )
- 日時: 2021/04/30 21:07
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第八話「保健室にて」-
「……ちゃん……レイヴィーちゃん!」
ゆっくり目を開けると、心配そうにこちらを見るメイヴェルが視界に飛び込む。
メイヴェルの補助で体を起こすと、訓練場ではなく保健室におり、顔は見えないが恐らく黒笑だろうとオーラでわかるアヴェーニャと隣に居るエマに、正座して震えているサーラが見えた。
「レイヴィー! 起きたんやな。痛いとこや、変な感じするとかないか?」
後ろを振り返り、レイヴィーのそばに行くと、瞳や、顔色を確認しながら、微笑むアヴェーニャ。
「だ、大丈夫です」
震えて正座しているサーラの方が気になり、あまり話が入ってこない。チラチラとサーラを見るレイヴィーに気づいたのか、サーラに目を移すアヴェーニャ。
「サーラ?」
そう言い、ニコリと笑うエマだが、その笑顔からはかなりの恐怖を感じるだろう。
「……すいませんでした……」
「い、いえ。その、頭をあげてください」
と少し困惑しながら言うレイヴィーだが、アヴェーニャが思いきりサーラの頭を殴る。
「上司やからって遠慮せんかてえぇ。たっく、レイヴィーが無意識に受け身とってなかったら当たり所悪くて死んどったかもしれへんのやでこのダァホ!」
「死⁉」
大声でサーラを怒鳴りつけるアヴェーニャに、サラッと自分が死んでいたかもしれないことを伝えられ驚愕するレイヴィー。
心の中でひっそりと、無意識に受け身をとった自分に感謝した。
「まぁまぁ、落ち着いてアヴェーニャ。……サーラ?」
「な、なんでございましょうエマ様……」
「後で気絶するまで私と特訓しよっかぁ?」
「ヒュ……」
サーラの心にひびが入る音が聞こえたが、レイヴィーは聞こえないことにした。
後日、ボロボロの副団長が男子寮前の野原でただ呆然と空を眺めているという噂がたったとかたってないとか……。
-第八話「保健室にて」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.11 )
- 日時: 2021/05/01 18:06
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第九話「援助拒否」-
「うっ……」
左右に手を広げてふらつきながら歩くレイヴィー。
「はいあんよが上手!」
そう言いながら手をたたく、レイヴィーの少し先に立っているアゲリ。
二人共ヒール靴を履いており、アゲリは自然に立てているが、レイヴィーはかなり震えていた。レイヴィーの横には倒れてもいいようにライトが一緒に歩いていた。
「頑張れレイヴィー、アタシも六年前にアゲリにしごかれたよ」
と苦笑しながら言うライト。
「こ、この靴にも、対応しなきゃ、パー、ティー中に、敵襲、があれば、対応、しきれませんし」
「うん、辛いなら喋らなくていいから」
ふらつきながらも集中しつつアゲリのとこまで歩き続ける。
かなりふくらはぎが痛い。明日動けるだろうか。いや、明日は一歩も動かない。本を読み漁ってやる。そう思いながら歩いていた。しかし、あと数歩というとこで、エマの声でレイヴィーの集中の糸がちぎれた。
「レイヴィー、アゲリ、ライト、少し話が……ってレイヴィー⁉」
ばたりと前方方向に倒れ込んだレイヴィーに驚いているエマ。
「エマサイテー」
「え⁉」
「あとちょっとだったのに……バカエマ」
「えぇぇ⁉」
あまりにも理不尽な罵倒に涙目になっているエマに、容赦なく言葉のチクチク攻撃を仕掛けるライトとアゲリ。
「あの……大丈夫ですので……要件は?」
倒れたままでエマにそう言うレイヴィー。
「あ、うん、それなんだけどね。……ここじゃなんだから、会議室まで行こうか」
真面目な顔になったのを見て、少し三人は息をのんだ。
☽
「援助拒否?」
三人は声を揃えてそう言った。
「そ、黒団の強襲の恐れがある村に援助することを知らせたら、なんと援助拒否で帰ってきたわけ」
青い髪色の少年が、そう言い地図を広げ、村の場所を指さす。そこを見たとき、レイヴィーが少し驚いた表情をしたのを見て、サーラがレイヴィーに話しかけた。
「どした、レイヴィー」
「いや、これバラットが本を取り寄せたって言ってた村です」
「バラットが? どんな本?」
エマが身を乗り出して聞く。
「預言者の日記でした。後から聞いたらバラットが無理矢理小説にしたそうです」
「へぇ、書いてあったので目立つのは?」
青い髪の少年――サイネが首を傾げ、聞く。
「うーん……あっ、あの預言ですかね」
そう言うと白き勇者の預言の話をする。
その話を聞いたサイネは、困惑した様子で頭をかいた。
「おっとおっとぉ? ……ちょぉっとそれ、話そうと思ってた内容そっくり」
-第九話「援助拒否」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.12 )
- 日時: 2021/05/04 15:45
- 名前: 雪見餅 (ID: 0LEStScZ)
この小説にちょっとだけ関係無いお話になってしまうのですが、何故か掲示板全域に入れないのでなりきりの方多分来れないです.....はい。
雑談の方も行けないのでこうしてお伺いしました。
小説の方、面白いです!
タイトルがカッコいいので滅茶苦茶惹かれました!
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.13 )
- 日時: 2021/07/18 12:56
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十話「勇者様がいるから」-
「どういうことです? それ」
「いや、援助拒否の連絡が来たとき、手紙も一緒についてきたんだよ」
食い気味に聞くレイヴィーに、落ち着くように言いつつ、説明を始めるサイネ。
「その中の内容に、『我々には勇者様がいる。主らの援助など必要ない』って書かれてたんだ。もしかしたら関係あるかなって」
「それ、もしかしなくても関係あるでしょ」
そう言って顔をしかめるアゲリ。
「そうなると、自ら白き勇者を名乗っている人がいる、もしくは村の人が勝手に白い容姿の人を勇者様と祀り上げてる感じかもね」
と冷静に整理するライト。
まぁ、ここまで来てしまうと少し厄介になってくる。その白き勇者が村を守る実力があればいいのだが、もし力ないただの一般人だったらと考えると、襲撃を受けた際、この村は血に染まるだろう。
「……急ぎましょう。今すぐ白団兵をこの村に送らなきゃ……」
表情は動かさないが、焦った様子でそう言うレイヴィー。
「待ってレイヴィー! ……焦るのは分かるけど、まずは作戦を」
「はい……」
エマがレイヴィーを呼び止め、五人は作戦会議を開始した。
☽
黒団の襲撃がありそうな日まで、まだ時間はある。その前にレイヴィー、メイヴェル、ライト、アゲリ。この四人と、回復役のアヴェーニャを含めた少人数部隊を送り、警護をする。ついでに、その白き勇者の正体を探る。
「これでいいね」
「あぁ、異論ないよ」
「んじゃ、人を決めよっか」
こうして、部隊の人を決めた。
「さっき言った五人に追加し、サーラを含めた男子三人の八人を送り込むよ」
「ん。じゃ、今ここにいない四人呼んできて、集合し次第出発するよ」
「了解しました」
>>12
返信遅れてすみません……。そして、コメントありがとうございます。確認遅すぎてもう戻ってきてらっしゃる……ほんとすみません……。
お褒めの言葉、とてもうれしく思います! ありがとうございます!
-第十話「勇者様がいるから」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.14 )
- 日時: 2021/05/29 12:41
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十一話「出発」-
先ほど決めた数人を探し、ぞろぞろ引き連れて保健室へ向かった。
「なんやなんや⁉」
驚いた様子で立ち上がるアヴェーニャ。事情を説明すると、
「それはすぐ行かなあかんな。準備するから待っとき」
と言って保健室の奥に行ってしまった。
「にしてもなぁ、仕事が急すぎるぜ? サーラ」
「しょうがなかよ。もしわー達の見立てが間違いで、もっと早ぐ黒団が来たら大変なことになっちゃ」
ヴィラという活発そうな少年がサーラに文句を言い、それをサレーナという方言で喋る少年が𠮟る。サーラが苦笑して、二人を見た。
「悪いけど、俺達にとってもけっこう急なことだったんだよね」
「お待たせ、ほな行こか」
包帯やら薬やらをバッグに詰め込み、それを肩から下げて、杖を持って奥から出てきたアヴェーニャ。皆頷き、寮の正門へ向かった。
☽
正門につくと、見送りのエマがスタンバっていた。
「皆、気を付けてね」
「大丈夫。うちがついてるんやから、心配せんかてええ。あんたこそ、うちがいてへんからってはめ外すんとちゃうよ? あんたのことはマイに頼んでるさかいな」
優しく微笑んだアヴェーニャの言葉に、エマは苦笑した。
「皆さん、魔法陣の上に」
エマ達が話していた間に、レイヴィーが広めの転移型魔法陣を地面に描き、その真ん中にあの村の場所に特殊なインクをたらした地図を置き、レイヴィーもその上に立っていた。皆が魔法陣の上に立ったのを確認し、呪文を詠唱し始める。
「偉大なる魔法の女神よ。我らをこの場に導きたまえ」
長い呪文を詠唱し続けるうち、魔法陣が光り始め、だんだんとその光が強いものとなっていった。
「ほんとに気を付けてね!」
そのエマの言葉を最後に、彼らはその村に転移した。
-第十一話「出発」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.15 )
- 日時: 2021/06/17 16:55
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十二話「牢獄」-
「なんでだよ! なんで俺ら捕まってるわけ!?」
叫びながら鉄格子を蹴り飛ばすヴィラ。
一行の手には、鍵付きの手錠がかけられていた。全員、広めの檻に閉じ込められていた。
「……こりゃぁ、まずいね。レイヴィー、どう? 解除できそう?」
「ごめんなさい。魔法返しがついていて……外すのには一日と半日かかります」
サーラからの問いに、アヴェーニャの手錠に手をかざしながら、苦い顔をしてそう答えるレイヴィー。
「ねぇレイヴィー。これさ、その、白き勇者が村人洗脳してるルート濃厚じゃない? 前に来たとき……と言っても百年は前だけど。そのときは、こんな感じじゃなかった」
というライト。ワイトの中でもかなり長寿な種族に生まれたライトは、この村に来た経験もあるため、今回一行の中に組み込まれた。
「凄くじれったいです。……黒団に寝返ってた方が楽ですよ、これ。ただ、侵入者への警戒しか感じないのがまた……」
苛立ちが混じる声でそう言いつつ、座り込むメイヴェル
なぜ、このようなことになったのか。それは、数時間前――レイヴィー達が村に転移しきったときに起きた出来事だった。
村人達が、レイヴィー達に襲い掛かったのだ。
あくまで、一行の目的は”村の防衛”。反撃するわけには行かず、流されるがままに、この牢獄に入れられてしまったのだ。――厳密に言えば、この牢獄も、手錠も、レイヴィー達にとっては簡単に壊せるものだったが、かけられている魔法返しの術がやっかいだった。檻も頑丈に作られているため、簡単には壊せなかった。
どうしたものかと頭を抱えていると、一人の少女が牢獄のそばにある階段から駆け下りてきた。肌が焼けていて、動きやすそうな服を着ていた。少し周りを見ると、小声でレイヴィー達に話しかけてきた。
「迷惑をかけてごめんなさい、少ないけど、ご飯を持って来たわ。あと少し待ってもらえる? 多分、ライレンがあなた達を呼ぶと思うわ」
そう言うと、おにぎりがのった紙で出来た皿とコップを手渡し、コップには水をついでくれた。
「ライレン?」
「あなた達が知ってるのかどうか知らないけど……白き勇者ってやつ。これで分かる?」
レイヴィー達は息をのんだ。
白き勇者――つまり、村人達を洗脳しているかもしれない張本人。それが、自分達を呼んでいる。――自分に悪意がないのを伝えるためか、はたまた処刑というのもあり得るか。
捕らえてそのままというわけではないだろう……せめて普通の縄に変えてさえくれれば反抗できるかもしれないが、相手は人間。刺しても余裕で動き続ける魔物とは、全くもって違うのだ。それだけで、レイヴィー達にはかなり重い足枷がつく。
色々な考えが巡りながら、全員考えが一致していることがあった。この少女からは、まったく敵意を感じられないことだ。
「あっ、勘違いしないで! ライレンはいい子なの、本当に。ただ、村のみんなが……」
皆の表情が曇ったのに気付いたのか、少女はそう言った。そして、少しの間黙り込み、苦しい顔をしながらこう言った。
「……勝手に、ライレンを祀り上げたの。何かに操られてるみたいに」
-第十二話「牢獄」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.16 )
- 日時: 2021/07/18 14:40
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十三話「少女ライレン」-
「どういうことです? それ」
顔を曇らせながら、小さくそう言った少女に、レイヴィーはそう問いかけた。
「私にもわからないのよ。ただ、勝手にライレンを祀り上げて、崇めて、お助けください、白の勇者様って。
そうならなかったのは、私たち子供だけ。それを少しでも否定すると、家族だろうと、平気で捕らえて、牢獄に入れて、ひどい拷問を受けさせるの。……わ、私の、お兄ちゃんも、今も、目を覚まさなくて……」
肩を震わせながらそう言った少女を見て、レイヴィーは心の中で舌打ちをした。
そんなことが、偶然で起こるはずもない。こちら側の戦力を一時的にでも狙ったのか、私たちが内側から食いつぶされるのを狙ったのか。少なくとも、被害が出たのは確かだ。
「……ライレンは、優しいから。私はそんなのじゃないって言えないのよ」
悔しそうな声で、少女はそう言い、レイヴィー達を見た。
「そういえば、名前言ってなかったね。クラハよ、クラハ・ガーデン」
全員の自己紹介を終えると、もう少しだけ耐えてと言い、クラハは上に行ってしまった。
「……さてと、じゃあそれまでの間、どうする?」
「はい! ベリーのマジックショー!」
アゲリが手を挙げ、端っこで杖を抱えて座り込んでいる少年を見る。
「へ?」
前髪が長く、片目しか見えてないベリーと呼ばれた少年はその言葉に驚き、間の抜けた声を出した。そして次には、ものすごい勢いで首を横に振った。
「ぼ、ぼくのマジックなんて、全然すごくないし……」
「でも、魔法を使わんであんなのでぎるって、結構凄いと思うげど」
「サレーナさぁぁん……」
涙目でサレーナを見るベリー。サレーナはニヤッと笑った。
ベリーはマジックが得意で、集中のためにマジックをよくやっている。その腕前は確かなもので、普通にそれで食べていけるほどだが、本人がとても内気なため、それを見せびらかしないし、したがらないのだが、白団内では人気なのだ。
「ほーらー、ベリーお願い!」
「う、うぅ……少しだけですよ?」
半ば涙目になりながらそう言うと、トランプを取り出し、混ぜ始めた。
☾
ベリーのマジックショーで暇つぶしをすること一時間。数人の村人が階段を降りて、何故かレイヴィー”だけ”を檻から出した。
「ハァ!? おい、俺も出せよ!」
「黙れ、あのお方はこの方だけをお呼びになられたのだ。さぁさ、こちらへ。あのような者共と話すことはございません」
「え?」
自身に向かって敬語を使われ、手錠を外されたことに驚きながら、後ろを振り向き、口パクで、「何とかしますので、待っててください」と伝えた。
外へ出ると、村の中で一際大きな家へ通された。中には、着物で身なりを着飾り、正座をした少女がいた。彼女から感じられる雰囲気は、まるで女王のようだった。
「……二人にして。彼女と話します」
レイヴィーを見て、次に村人へ目を移してそう言う少女。村人達は立ち上がると、外へ出た。
村人達が外へ出たのを確認すると、少女はハァッと息をつき、正座を崩した。
「あぁもう足痛い! 無理!」
「!?」
そう叫んで足をっさすている姿は、普通の少女そのもので、レイヴィーは少し困惑した。
「……あ、ごめんなさい。びっくりさせたよね。私はライレンです。あなたは、レイヴィーさんよね」
「はい、そうですけど……」
「私は、あなたに……いいえ、あなた達に頼みたいことがあるのです」
-第十三話「少女ライレン」終-
- Re: 白と黒の魔法戦争 ( No.17 )
- 日時: 2021/08/07 16:38
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
-第十四話「解術」-
「この村の洗脳を、どうにかして解いてくれませんか」
「! ……やっぱり、洗脳の類なんですか?」
そう聞くと、ライレンは頷き、話し始めた。
「心当たりはあります。先日、魔物が来たんです。ワイトを装っていましたが、こうなって気が付きました。恐らく、あれは黒団の者でしょう」
悔やむかのようにそう言うライレンを見て、レイヴィーは黒団への憎悪が更に増した。
年々、魔物がワイトを装って油断させ、人を食い殺すという事件が増えている。なんていう卑怯な……。
「特に、悪さをするでもなく去っていきました。その数日後です、村人達がおかしくなったのは」
あぁ、やはり黒団の仕業か……。
だが、こんなことをしたのには訳があるはず。単純に襲うためならば、その場で軍を差し向けてしまえばよいのだから。
ただ、その理由が分からない。……何か、何か理由が……。
「恐らく、あの魔物が村の者に何かかけたのでしょう」
「解術であれば、私達の中に出来る者がいます」
「ほんとですか!? お願いします!」
そう言われ頭を下げられて、レイヴィーは焦った。
「お礼など結構です。それが仕事なんですから」
「いえでも、酷いことをしたのに、引き受けていただいて……」
「悪いのは黒団です。あなた方は悪くない」
そう言うと、ライレンは泣き出してしまった。
見た限り、ライレンは12~13だろう。白い髪が長く伸び、立っても床につくだろう。体を覆える程長く白い髪から、白き勇者というのの信憑性が増したのだろう。
優しい子なんだろう。自分にすがる村人達に否定ができなかったのだろう。自分は神でも勇者でもないと言えなかったのだろう。
「……絶対に成功させます」
「これが鍵です。私から村人達に話しますので、大丈夫です」
「ありがとうございます」
鍵を受け取り、家を出て、真っ直ぐ牢へ向かった。
階段を駆け下りると、皆がこっちを見た。
「お、レイヴィー!」
「悪いのですが、とりあえずベリーだけ解放します」
「ハァッ!?」
ベリーの手錠を外しながら事情を説明すると、外しきったのとほぼ同時に、ベリーは解術の呪文を唱え始めていた。レイヴィーは音をたてないようにしながら他の者の手錠を外して回った。
解術はかなりの集中力がいる。言うなれば、絡まった糸を一つ一つ解いていかなければならないのと同じぐらい難しい術なのだ。脳内で絡まった術の糸をほどきながら、呪文も絶えず唱えておかなければならない。ベリー以外の誰かがやろうものなら、途中で挫折する者もいるだろうし、レイヴィーがやれば終わってすぐぶっ倒れるだろう。
だが、ベリーは違う。
ベリーは解術の才があるのだ。
「……ハァっ……」
しばらく待っていると、ベリーが大きく息を吐いた。
「大丈夫? 水だよ」
「ありがとうございます……終わりました……」
メイヴェルから渡された水を飲むと、終わったことを伝えてくれた。
牢から出ると、村人達は倒れていた。
「あっ、レイヴィーさん!」
ライレンが駆け寄ってきた。
「無事終わりました」
「……! よ、よかったぁ……」
涙を流しながら、ライレンは微笑んだ。
「しばらくこの村を護衛させていただきます」
「メンタルケアもうちがバッチリやるさけ、心配せんでええよ」
「ありがとうございます……ありがとうございます!!」
その言葉に、一行は嬉しそうに微笑んだ。
-第十四話「解術」終-