ダーク・ファンタジー小説

拠点製作 ( No.12 )
日時: 2024/05/02 21:17
名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011

ライザを仲間にした後、1度アルガスの場所を転移石に記憶させておこうということで
俺達はアルガスの関所まで戻ってきた。

町の中で位置を記憶させようと思ったが、今後この大陸で拠点とするのなら
少しでも衛兵さんの心証を良くしておこうと思い、関所前のこの位置を記憶させることにした。

「これでアルガスの場所も記憶させることができたし、いつでも此処へ来ることができるな。」
「そうですね。では、主様。この町の冒険者ギルドで、改めて拠点をどうするかの話し合いを……」
「ん?何だ?2人はこの町に、家を買って……そこを拠点としているのではないのか?」
「それもちょっと、考えたんだけど……やっぱり、1から拠点を作ろうと思ってな。」
「拠点を……1から……?ユーヤ……いったい何年かけるつもりだ?」
「いや、場所さえ決めれば……ん~……実行に移す前に、訊いてみるか。」

俺は念を送るように、転生の神様との会話を試みる。

『お久しぶりですね、悠耶くん。そちらでの生活を楽しんでいますか?』
「はい。おかげさまで。実は、今回もちょっと、神様に訊きたいことがあって……」
『おや?何ですか?』
「【 創造 】のスキルで、拠点を1から……土地から作ってみようと考えているんですけど、
 この世界の海……領海について確認しておきたくて……」
『なるほど。悠耶くん、安心してください。そちらの世界に、領海というものはありません。
 一応、大陸の近海という認識はあるのですが、あくまで近海。
 『 ○○大陸の○○という町の近くの浜辺と海 』という認識程度で、
 『 そこで海賊行為があったから、○○の国の海軍が、○○の都市の海軍や私掠船が、
 海賊討伐に出向く 』……みたいなことは、無いのですよ。』
「そいつぁまた……海賊船に襲われたら、商船や漁船に乗っている船乗り達が、自力で
 対応しなければいけないってことか。」
『そういうことです。先程も申しましたが、領海という物はありません……が、
 一応、念には念を……悠耶くんが持つ世界地図に、どの大陸からも丁度等しく同じ距離になる場所に
 記をつけておきました。海に出るというのでしたら、そこを目指すと良いでしょう。』
「いつも、いつも、ありがとうございます。神様。」
『いえいえ。それでは、引き続き、良き異世界生活を満喫してくださいね。』

神様との会話、終了。

「海に作っても、問題無いみたいだ。」
「そうですか。では、これから海に向かうのですね。」
「ふむ……暗黒騎士のユーヤが、神様と仲良くしていることに関しては……まぁ、ユーヤが
 特別なんだと思うことにして……だ。海に出るのであれば、アタシ達が初めて出会った
 岩山に向かうと良い。」
「あの岩山にか?」
「あぁ。リザードマンの集落が無人になったと言っただろ?実は、興味本位で中を探索してみたら、
 岩山の向こう側に出てしまってな。ちょうどそこが、岩礁だったんだ。」
「まぁ、そうだったのですね。」
「よし!それじゃあ、海に向かう前に……」

俺は【 創造 】のスキルを発動して、1列3人掛けの席を向かい合わせに設けた、ちょっと良い感じの
馬車を出現させた。

「なっ……!?何も無い場所から、いきなり馬車が……」
「ライザに見せるのは、初めてだったもんな。こういうスキルがあるから、拠点を1から作るって
 発想が出たんだよ。」
「なるほど……そういうことか……」
「【 Soul of Centaur 】状態の馬の背中に、シルヴィアは乗せたことがあるが……さすがに
 2人乗りさせるのは……それに、今後、仲間が増えるかもしれないことを考えて……な。
 用意しておくに越したことはないだろう。」
「えぇ。そうですね。」
「それじゃあ……」

俺は馬車の扉を開け、

「よしっ!さぁ、お嬢様方。どうぞ、御乗車ください。」
「うふふ。ありがとうございます、主様。」
「すまない、ユーヤ。魔物が出現したら、遠慮なく言ってくれ。扉を蹴破ってでも、すぐに助ける。」
「あぁ、わかった。」

2人が馬車に乗り込んだのを確認して扉を閉め、手綱を腰辺りで固定する。

「それじゃあ、出発するぞ。」

馬車の中に居る2人の返事が聞こえたのを確認し、俺達はライザと出会った岩山へ向かった。

◇◇◇

数十分後

岩山に到着し、足場が悪くなってきたので馬車を【 アイテムボックス 】に収納し、歩くこと更に数分。
ライザの案内で石舞台の奥にあった洞窟を進んで行き、岩山の反対側……本当に岩礁に出た。

磯の香りが漂い、不定期に波が岩に当たって散っている。

「わぁぁ!これが海なのですね!私、初めて見ました!」
「それで……?ユーヤ。此処に拠点を作るのか?」
「いや。此処から船で海に出て……地図に印が付いている、この場所に作るつもりだ。」

俺は世界地図を開き、転生の神様が印を付けてくれた場所をライザに見せる。

「ふむ……ということは、この先は船で移動か。」
「そういうこと。」

俺は【 創造 】のスキルを発動し、日本昔話でよく見る木製の小舟と櫂を出現させた。

「いや……いやいやいや……ユーヤ。さすがにこれは冗談だろ?これで海を越えるとか……
 ふざけているのか?正気の沙汰ではないぞ?」
「大丈夫!大丈夫!きっと、いけるって……たぶん。」

昔話の桃太郎は犬と猿、絵本によっては雉までこういう船に乗せて鬼ヶ島まで行って
鬼を退治した後は宝物まで乗せた状態で本土まで戻ってるんだ。

さすがに宝物と動物を積んでの航行はフィクションかもだけど……
こういう船で海まで漁に出かけていた時代があったんだ。

俺はこの船の可能性を信じる。

「それに、大きな帆船を出したところで、俺達3人だけじゃ、手が回らないだろ?」
「あぁ、確かに。それはそうだな。」
「まぁ、できるだけ安全な航行を心掛けるよ。シルヴィア、行くぞ。」
「え?あっ、はい!」

森育ちで海を初めて見て、テンションが上がっていたシルヴィアを呼ぶ。

「それじゃあ……ほら、お手をどうぞ。お嬢様方。」
「はっ……はい。主様。」
「あぁ、ありがとう。ユーヤ。」

右足で船を固定し、シルヴィアとライザの手を取って小舟に乗せた後
左足で岩を蹴って離岸する。

「あら?」
「ん?どうした?シルヴィア。」
「私も目的地が気になったので、世界地図を見ていたのですが……何やら、地図上に
 青い印が浮かび上がってまして……どうやら、今、私達の居る位置を示しているようです。」
「そっか。それなら、迷わずに進めそうだな。」

とりあえず、まずはシルヴィアの案内で大海原を進むことにした。

◇◇◇

数時間後

「大丈夫か?2人共。」
「申し訳ありません……うぅ……これが酔うという感覚なのですね……」
「アタシはまだ、何とか……此処からは、酔ったシルヴィアに代わって、アタシが案内するが……ふむ。
 かなり近い所まで来ているようだぞ。」
「そっか。意外とコレでも進めるモンなんだな。よしっ!ライザ。案内を頼む。あと少しっていうなら
 このまま一気に目的地まで向かってしまおう。」
「あぁ。任せてくれ。」

数十分後

「…………! ユーヤ、止まれ。此処が目的地のようだ。」
「おっ!そうか。それじゃあ……」

俺は【 創造 】のスキルを発動し、直径2kmの正方形の土の足場を出現させた。

「下は見えないけど、たぶん、ちゃんと海底にまで到達しているはず。」
「…………うん。飛び跳ねてみても、衝撃で揺れたり、沈んだりする様子も無いし、問題無いみたいだ。
 ほら、シルヴィア。」
「うぅ……ありがとうございます。ライザ……」

先に上陸したライザが差し出した手を掴んだシルヴィアが上陸したのを確認してから、俺も上陸を果たした。

「さてと……住居を出す前に、もう少し、足場を整えないとな。」
「既にこの足場が大丈夫なことは、ライザが確認してくれましたが……まだ
 何かすることがあるのですか?」
「あぁ。とりあえず、土台の素材を土から黒曜石に変える。」
「黒曜石……確か、物凄く硬い鉱石という認識なのだが……ユーヤ。黒曜石に変える意味は?」
「ただ単に俺の趣味っていうのもあるけど……仮にもし、海賊船とかによる砲撃があったりした時、
 それなりに耐えてくれるかな……って、思って。あとは、満潮の時に浸水しない高さまで土地を
 上げて……」

同じようにして3つの土台を出現させ、縦横直径4kmの土地を作り上げる。

「……で、西側の1kmの土台だけ砂にして、坂道にして……よし。ここからが本題だ。」

俺は【 創造 】のスキルを弄り続け、生前プレイしたゲームのラスボスが居座っていた立派な城を
丁度真ん中になる2kmの処に出現させた。

「まぁ!あれが、これから私達の拠点になるのですね!」
「おぉ……随分と、立派で……ふふっ、アタシ達、闇属性の者が居座って雰囲気の出る、
 良い城じゃないか。」
「気に入ってもらえたかな?」
「はい!」
「あぁ!」
「よしっ!じゃあ、細かい調整は城に着いてからにするとして……まずは、あそこに向かおうか。」

俺は小舟を【 アイテムボックス 】にしまうと同時に、馬車を出現させ、2人を乗せた後
【 Soul of Centaur 】を発動して、馬車を引きながら城へと向かった。

***

その日の夜。

城のどこを何の部屋にするかは、明日考えることにして
とりあえず、まずは自分達の部屋を決めることに。

結果……

螺旋階段を上りきった最上階の向かって左側。
その壁に面した3部屋の手前から、ライザ、シルヴィア、俺の部屋となった。

「ふぅ……やっと一息つけるな。」

土地やこの城の細かい微調整や設定は、明日に回すとして……
自室に【 創造 】のスキルで出現させたベッドの上で横になっていると、扉が2回叩かれた後に
開き、シルヴィアが入って来た。

「主様。」
「ん?どうしたんだ?」
「はい。その……夜這いに参りました。」

シルヴィアの発言に、飲みかけた水を吹き出しそうになる。

「えっ!?シ……シルヴィアさん!?」
「まぁ、それよりも先に、お伝えしておかないといけない話があります。」
「わかった。」

シルヴィアが真面目な表情をしているので、変に茶化したりすることはしないで
椅子に座るように促す。

「ありがとうございます。」
「それで?話というのは?」
「主様……以前、アルガスの冒険者ギルドで世界地図を開いた時のことを、覚えてらっしゃいますか?」
「あぁ。確か……王都に、世界地図とかを作る専門の機関があるんだっけ?」
「はい。そして、本日。この世界に、たった1日にして新たな島が誕生した……これがどういう意味か、
 主様ならすぐに理解していただけますよね?」
「新たな地図が発行されたら、此処を目指して来る冒険者共が現れるかもしれないってことだな?」
「その通りです。まぁ……地図の発行には時間が掛かるでしょうし、そもそも土地の大きさ的に
 地図に載るかどうかすら怪しいです。
 さらに、この土地が乗った地図が発行されたとして、どの大陸からもそれなりに距離が
 離れていますので、今すぐに冒険者達がこの地に上陸することはありませんが……
 念のため、意識しておいてくださいと伝えておきたかったのです。」
「そうだな。うん……意識しておくよ。忠言、ありがとうな。シルヴィア。」
「はい!……では、主様。真面目な話も終わりましたし、夜這いの続きと参りましょうか。」
「……え?」

立ち上がったシルヴィアが、ベッドに腰掛けていた俺の傍まで歩いて来て
そっと俺を押し倒すと、俺の上に覆い被さってくる。

「主様……」
「いやいや!夜這いは、真面目な話をするための口実なんじゃ……」
「いえ?私は本気ですよ。」

シルヴィアの本気の眼差しに、嬉しいと感じてしまう。

「……美人なシルヴィアに迫られて、正直ドキドキしてる……このまま襲われてしまうのは、簡単だよ。
 けど、まだちょっと早いんじゃねぇかな?いずれはまぁ、シルヴィアをちゃんと受け入れるつもりでは
 いるけどさ。」
「うふふ。嬉しいです。では……何も問題ありませんね?想い合う男女がすることは1つ……
 種族の壁だって、簡単に乗り越えられますよ。」
「そう……だな。ここまで言われて、シルヴィアのお誘いを断ることはしないけど……最後に
 これだけは言わせてくれ。」
「はい。何でしょう?」
「あっちの世界で生きて、死んで……この世界に転生してから今日まで、その……そういうことを
 したことが無かったからさ。初めてでぎこちない思いをさせてしまうかもしれない。下手糞でも、
 笑わないでもらえると……助かります。」
「それなら私だって……主様が初めての相手です。満足してもらえないかもしれませんが……
 許していただけますか?」
「もちろん。それじゃあ……おいで、シルヴィア。」
「はいっ!」

新たにできた拠点で、1夜をシルヴィアと共に過ごした。
1つ奥の部屋ではライザも休んでいるんだけど……まぁいいか。

それにしても……シルヴィア、声、大きいな。
明日、『 拠点の全部屋、防音 』の設定は付与しておこうと思う。