ダーク・ファンタジー小説

温かい福利厚生 ( No.14 )
日時: 2024/05/02 21:19
名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011

拠点1階・軍議の間。

「大まかな設定は殆どやった……つもりだ。後は、破壊された時のことを考えて
 『 拠点全土、午前4時に自動修復 』と……『 この城を中心に、全包囲1km圏内の様子を
 好きな時に観れる 』ようにして……」

「失礼します。主様。」

扉を2回叩いた後、扉を開けてシルヴィアとライザが入って来た。

「あっ、作業中でしたか。」
「いや、大丈夫。たった今、終わったところだから。」
「先日、エギスに行く前もしていただろう?あの時、まだ終わっていなかったのか?」
「終わらせたつもりだったんだけど、後から後から追加したいことが思いついてな……
 基本的には拠点全土に関することだったけど、そろそろ……この城の内装に関して、本格的に
 着手するのも有りだな。螺旋階段を上りきった最上階は俺達の部屋にするから、
 そのままにしておいて……とりあえず、1階の部屋を色々変えていきたいな。」

現状、この軍議の間と、隣の図書室しか無いからな。

「そう申されますが、特に客人を招くことなどありませんし……仮にそういう機会が訪れたとしましても、
 この部屋を使用すれば良いですから、変える処というと……」
「魔物を討伐した後は、ユーヤの【 アイテムボックス 】に保管しておくことができるから、
 品質保持に関しては特に問題も無いし……あっ、金品はユーヤの部屋に保管しておいた方が
 良いぞ。仮に賊などに狙われるようなことになったとしても、この城の最上階の1番奥の
 部屋だからな。到達するまでに、僅かばかりだが時間稼ぎができる。」
「なるほど、確かに。それじゃあ、金品は後で金庫でも出して、そこに保管しておくよ。他は……」

俺はウィンドを操作して、この拠点の見取り図を表示する。

「正面の螺旋階段から見て、左側が今俺達が居るこの部屋……よし、じゃあ、右側のこの2つの
 部屋を引っ付けて、1つの部屋にしよう。」
「ふむ……1つの部屋でこの広さなのだろう?それを1つにするとなると、かなり広い空間になるが……」
「主様、この部屋をどうなさるおつもりですか?」
「それは後で、この部屋に行った時に調整するよ。その前に……この拠点を取り囲むように城壁を
 出現させておこう。」

この建物から全方位に300mの余裕を持たせて、取り囲むように黒曜石造りの城壁を展開。
同時に、外の様子を見れる範囲が、出現した壁から全方位1km圏内に広がった。

この拠点の玄関から壁までを、煉瓦で直線の道を敷き、出入り口となる壁の1部を鉄製の門に変える。

「そして、この壁と門に、拠点と土地と同じように『 破壊不可 』の設定を付与して……これでよし。
 さてと!それじゃ、俺はさっき1つにした部屋に、色々備品を置いてくるよ。
 今回は、俺が良いって言うまで、見に来たら駄目だからな。」
「む?アタシ達に内緒で何をするつもりだ?」
「うふふ。そう言われると、見に行きたくなりますね。」
「残念ながら、今回ばかりは駄目です。本当にすぐだから、待っててくれ。」
「わかりました。」
「あぁ、わかった。」

俺の呼びかけに首を縦に振って承知してくれた2人を長く待たせておくわけにもいかないので、
俺はすぐさま統合した部屋に向かう。

「よし……さっさとやってしまうか。」

【 創造 】のスキルで巨大な曇り硝子の壁を出現させて部屋を前後に分け、曇りガラスの壁に
引き戸を設置する。

「……うん、ちゃんと中に入れるな。それじゃあ……」

引き戸から入った内側の床を、全面タイルに変更させ、この部屋の半分くらいを使用した浴槽と
部屋の左右に3ヶ所……計6ヶ所、洗い場を設置する。

「此処にお湯を張って……そうだな、脱衣所も含めて、此処も『 午前4時に自動清掃 』と
 『 使用直前に自動でお湯張り 』するようにして、あとは……」

その後……最後に、脱衣所に箪笥や籠を用意し終えたので、先程の大広間に居る2人を呼びに行く。

「待たせたな、2人共。」
「主様。もう、部屋の装飾が終わったのですね。」
「本当に、それほど時間がかからなかったんだな。」
「あぁ。もう、使用できるようにもしておいたぞ。」
「「使用?」」

とりあえず、2人を部屋へ案内して、中を見てもらうことにする。

「これは……箪笥に……鏡ですか?」
「此処より、メインはこっちかな。」

俺は引き戸を開けて、浴室を見せる。

「おぉおっ!広いお風呂!」
「シルヴィアと約束してたからな。『 拠点にお風呂が欲しい 』って。」
「覚えていてくださったのですね!主様!」
「当たり前だろ。それじゃ、俺は軍議の間で本を読んでるから、2人で楽しむと良いよ。」
「え?何を言っているのですか?一緒に入りましょうよ。主様。」
「えっ!?いやいやいや!仮に……仮にだぞ!?まぁ、シルヴィアは良いとしてもだ。
 ライザはどうすんだよ!?ついこの間出会ったばかりの野郎と一緒なんて……なぁ?」
「ん?アタシも構わないぞ。世間には裸の付き合いというものがあるらしいからな。他の野郎共なら
 ともかく、ユーヤとなら全然構わないぞ。」
「マジか…………ん~……じゃあ、2人が良いって言ってくれるなら……お言葉に甘えさせて
 もらおうかな。」
「はいっ!一緒に入りましょう、主様。」
「ふふっ、仲間と一緒にお風呂か……楽しみだな。」

その後、躊躇うことなく服を脱いだ俺達は、浴室へと足を踏み入れる。
……正直、2人共、タオルで隠すかな……と思ってたんだけど、そんなことはなく

2人共文字通り一糸纏わない姿で、堂々とした姿のまま浴室へ足を踏み入れていた。
おかげで……と言っては何だが、2人の豊満な胸から、髪の毛と同色の下の毛まで全て視認できた。

此処で俺だけ隠すのも変なので、男らしく堂々と2人の後に続くように浴室へ入る。

「ほぅ……ユーヤは、ツヴァイハンダー以外にも、立派な長柄武器を足の間に隠し持っていたのだな。」
「長柄武器って……それより2人共、浴槽へ入る前に身体を洗えよ。」
「えぇ、承知致しております。」
「ん?なぁ、ユーヤ。この紐みたいな……これは何だ?」
「ん?紐?……あぁ、シャワーのことか。これは、この突起を捻ると……ほら、先端からお湯が
 出るんだよ。」
「おぉ!凄いな!こんな魔道具、初めて見た!」
「本当に!シャワーでしたか?これがあれば、髪を洗うのも、身体を流すのも便利ですね。」
「下に付いてる筒……蛇口っていうんだけどな。これも同じようにお湯が出る。シャワーか蛇口かは、
 この突起に描かれている絵を頼りに捻ってもらえれば、切り替えられるよ。」
「ふむふむ。ユーヤ、この赤色と青色のは?」
「それは赤い方を押すとお湯が、青い方を押すと水が出るように切り替わるんだ。お湯が熱いと
 感じた時に、水を足して好みの温度にするための物だよ。」
「なるほど……これは、主様が居た世界では当然の浴室なのですか?」
「あぁ。正直、設置したこれがどういう仕組みで稼働してんのかは判らないけど、この蛇口と
 シャワーが1つになっているこれは、俺の居た世界の風呂屋では、基本的な装備だったな。」
「ユーヤの居た世界は凄いな!ん?この筒は何だ?3つあるが……」
「そいつは左からボディソープ……まぁ、早い話が液体の石鹸だな。それが体を洗うための石鹸、
 真ん中がシャンプーっていう髪を洗う用の石鹸、1番右がリンスっていう……髪質を整えるための
 石鹸?で良いのかな?俺はこのリンスをあんまり使わないから、ちょっと曖昧な説明でゴメンな。」
「いえ。充分な説明です。では、早速……まぁ!このボディソープという石鹸、凄いです!こんなに
 泡立つなんて!」
「凄い!今日、この浴室の中だけで、驚かされてばかりだ。」

2人が思い思いに身体を洗う隣で、俺も身体と頭を洗い、シャワーで流す。

「……あの、主様。」
「ん?何だ?」
「あの壁の扉は一体……?何処に繋がっているのですか?」
「行ってみるか?」

身体を洗い終えた2人を連れて、脱衣所へと続く扉とは違う、浴室内の引き戸の処まで行き、
扉を開けて外へ出る。

「まぁ!お外にも風呂が!」
「露天風呂って言ってな、外の景色を見ながら入る風呂なんだけど……悪いな、壁で囲っちまったから
 景観が……でもまぁ、海を行く船から見られることを考えてな……2人の裸を他の野郎共には、
 絶対見せたくないし。」
「ふふっ、構わない。夜なら、星を見ながら利用できるしな。」
「私達のためを思っての配慮ですもの……ありがとうございます、主様。」

とりあえず俺を真ん中に、左側にシルヴィアが、右側にライザが、俺を挟み込むように露天風呂の
湯船に浸かる。

「あぁぁ……大きいお風呂は良いなぁ……」
「あぁ。作って正解だったな。」
「ユーヤ……泳いでも構わないか?」
「お~……1人の時ならなぁ……」
「うふふ。やっと主様と一緒にお風呂に入れましたね。」
「以前、アルガスの風呂屋を利用した時は別々だったもんな……」
「お湯の温もりと、主様の温もりを同時に感じられて……とっても幸せです。」

そう言いながら、シルヴィアがピッタリと寄り添って、腕を組んで胸を押し当ててくる。

「しっ、シルヴィア!?」
「む……アタシだって。」

反対側から、負けじとライザもピッタリと寄り添って、腕を組んで胸を押し当ててきた。

「ライザ!?」
「ふむ……確かに、ユーヤの温もりを感じられる……ふふっ、これは良いな。」
「あらあら。うふふ……これは、私達を侍らせている主様に、是非とも一言いただきたいですね。」
「そうだな。アタシ達の御主人として、何か気の利いた一言でも聞かせてもらいたいものだな。」
「無茶振りすぎる。でも、まぁ……その……ありがとうございます。」

◇◇◇

風呂上り

脱衣所である程度の衣服を着た後

「シルヴィア、ほら。」
「え?あっ!ありがとうございます!」

俺は【 創造 】のスキルで出現させたフルーツ牛乳を手渡す。

「ん?2人共、それは何だ?」
「フルーツ牛乳という主様の居た世界の飲み物です。とっても甘くて美味しいんですよ。」
「ほら。ライザも飲んでみな。」
「あぁ。いただこう。」

俺からフルーツ牛乳を受け取ったライザが、一口……ゴクッと喉を鳴らして飲み込んだ。

「……っ!?なっ……何だ、これは!?とっても甘くて、美味しい!神の世界の飲み物か!?」
「俺の居た世界の飲み物だっつってんだろ。けど、この世界には無い物だもんな。そう思うのも
 無理はないか。」
「あのシャワーといい、このフルーツ牛乳という飲み物といい……ユーヤの居た世界は、
 素晴らしかったんだな。これだけでも、お前の仲間になって良かったと心から思うよ。」
「安上りすぎるだろ!でもまぁ、2人には快適に過ごしてもらいたいからな。風呂以外にも
 要望があれば、随時言ってくれ。俺のスキルで何とかなりそうなら、できる範囲で何とかするから。」
「えぇ。ありがとうございます、主様。」
「ふふっ、その時は遠慮せずに頼らせてもらおう。」

◇◇◇

22時
拠点最上階・自室

ベッドの上で本を読んでいると、俺の部屋の扉が2回叩かれた。

「主様、シルヴィアです。今、御時間宜しいでしょうか?」
「シルヴィア?あぁ。入ってくれていいぞ。」

扉を開けて、シルヴィアが入って来る。
今回は普段着なので、夜這いではなさそうだ。

「失礼します。主様、ライザのことで御話が。」
「ん?どうした?先日のエギスの件や、今日一緒に行動してみた感じ、特に問題は無さそうだったぞ?」
「はい。そういう話では無くてですね。えっと……仮に、仮にですよ?今はまだそういう兆しは
 見受けられませんが、今後、ライザが私と同じように、主様に対して想いを伝えてきたとき、
 その想いを受け入れてあげて欲しいのです。」
「えっ!?えっと……良いのかな?俺が住んでいた国だと、基本的に1人の男性に対して1人の女性と
 恋仲になって、結婚して生涯を添い遂げるんだ。逆もまた然りで……複数の女性、または男性と
 恋仲になれば、それは浮気ってことになって、結婚してからこの浮気が発覚すると、
 不貞行為をした側に慰謝料っていう罰金が科せられるんだ。」
「まぁ!主様の居た世界は、ずいぶんと厳しいのですね。」
「世界っていうか……国かな。ヴェルスティア大陸みたいな感じの。世界全体で見れば、
 複数人の伴侶を侍らせても許される国もあったはず……この世界には、そういう法律は無いのか?」
「ヴェレスティア大陸には無かったように思いますが……主様。この土地、この拠点は、
 どこの大陸にも属さない、主様が1から作られた土地です。つまり、他の大陸の法律が
 適応されることはありません。」
「あぁ、そっか。」
「ですので、主様が『 この土地は一夫多妻制 』という法を定められれば、それが適応されるのですよ。」
「!」

シルヴィアの提案に、俺の中のスケベ心が跳ね上がる。

「そっか……まぁ、仮にその制度を俺が定めたとしても、最終的には本人の意思に任せるけどな。
 強引に、相手の意見を無視して……ってのは、ちょっと性に合わない。」
「お優しいのですね、主様。そういうわけですので、いつかその時が来たら、私とライザ……そして
 今後仲間になった女の子達を等しく愛してくださいね?」
「ははっ、新しく仲間にする子も、女の子限定なのかよ……あぁ。シルヴィアが許してくれるのなら、
 いつかもし、本当にそういう時が来たら、ちゃんと皆の想いを受け止めるよ。」
「はい!うふふ。それでこそ、私が心から永遠の忠誠を誓った主様です。お話ししたかったことは
 以上です。本日は、このまま自室に戻らせていただきますね。お休みなさい、主様。」
「あぁ、お休み。シルヴィア。」

小さく頭を下げてお辞儀をしたシルヴィアが退室していった。

「そっか……じゃあ、この土地最初の法律は、一夫多妻制にするか……」

今後どうなるかは判らないけど、少なくとも、今、既に仲間になってくれている2人は
絶対に大切にしたい。

俺にできることがあるなら、何とかしてやりたいと改めて思った。