ダーク・ファンタジー小説
- 深き森での出会い ( No.3 )
- 日時: 2024/05/02 21:06
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
とりあえず、俺は洞窟の入り口付近に腰を下ろし、改めて自分のステータスを確認してみる。
【 ユーヤ 】 Lv・20
種族・人間
年齢・18歳
性別・男性
身長・180cm
クラス・ウォーリア
Range・前衛
職種・暗黒騎士
移動ユニット・【 歩 】
属性・闇
【 使用武器 】
【 ステータス 】
HP・19500
MP・9200
【 STR ( 攻撃力 ) 】・9500
【 VIT ( 防御力 ) 】・9000
【 INT ( 知力 ) 】・7200
【 MND( 精神力 )】・8000
【 DEX( 器用度 )】・300
【 AGI ( 移動速度 ) 】・5000
<< 適正 >>
【 歩兵 】 SS+ 【 騎兵 】 SS+ 【 弓兵 】 B 【 海兵 】 A 【 空軍 】 F
【 魔導師 】 D 【 工作兵 】 C 【 商才 】D 【 間諜 】 A
【 軍師 】 A 【 築城 】 A 【 統率力 】 S+
【 剣術 】SS+ 【 短剣術 】B 【 槍術 】SS+ 【 弓術 】A 【 格闘術 】S+
【 銃撃 】G 【 投擲 】A+ 【 魔術 】A 【 召喚術 】SS+ 【 防衛術 】SS+
【 生産職 】C 【 罠工作 】D 【 機械操作 】E 【 交渉術 】A+
【 推理力 】A+ 【 軍略 】S
【 スキル 】
〇 創造 Lv・Ⅰ 『 パッシブスキル 』
属性:-
消費MP:-
*自分の記憶にある物・1度見たことある物を、『 お金 』以外なら作り出すことができる。
*スキルで出現させた物の細かい微調整をすることができる。
*1度スキルで出現させた『 土地 』『 建物 』を収納・消去・撤去することはできないが
いつでも好きな時に再配置することができる。
〇 アイテムボックス 『 パッシブスキル 』
属性:-
消費MP:-
*自分が入手したアイテムを収納できる。
収納できる量に制限は無い
*収納したアイテムの鮮度・品質を維持し続けることができる。
〇 超解析 『 パッシブスキル 』
属性:-
消費MP:-
*敵対する相手のステータスを確認することができる。
*敵が設置した罠、ダンジョンに設置されている罠を看破することができる。
*書物に書かれている異世界の文字を読めるようになる。
〇 闇に染まりし者 『パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*自分が使用する属性・【 闇 】の攻撃技の威力が5倍になる。
*夜間に行われる戦闘、暗い場所での戦闘で、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*状態異常・【 呪い 】【 畏怖 】【 即死 】を受け付けなくなる。
*【 荒野 】【 廃墟 】【 墓地 】での戦闘で、自分の【 STR 】と【 VIT 】、【 AGI 】の数値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*種族・【 妖精 】【 天使 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*職種・【 勇者 】【 聖騎士 】【 聖職者 】【 白魔導士 】の敵と対峙した時、
自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を戦闘終了時まで5倍にする。
*属性・【 光 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
戦闘終了時まで5倍にする。
「いや、これ……絶対、レベル20のステータスじゃねえだろ……攻撃力や防御力とかが
数値化されてないのは、ちょっと気になるけど……まぁ、簡単にくたばるようなことはないだろう。」
それにしても……【 INT 】の適正?強さ?が他に比べて、やや低いか……
生きてる時、もう少しちゃんと勉強しておくべきだったかな?
ただ、これに関しては、この世界で読書や勉強をすれば上がるのではないか?……と、期待はしている。
それで上がらなかったら、潔く諦めるか。
「あとは……このスキルを使えば、武器や防具も作れるのかな?」
俺は【 創造 】のスキルを発動し、目の前に小さな画面を出現させる。
画面には【 道具製作 】【 土地製作 】【 記憶にある土地を表示・出現 】【 転送 】の
4つの項目が表示され、その中から【 道具製作 】を選択。
すると、今度は【 日用品製作 】【 武具製作 】【 乗り物製作 】という3つの項目が出現したので
その中から【 武具製作 】の項目を人差し指でタッチした。
すると、俺が今まで本で読んだり、ゲームで存在を知った武器や防具がメジャーどころから
マイナーどころまで、一覧となって表示された。
「おぉ!凄いな、これ。ありとあらゆる武器が表示されてる……それじゃあ、試しにこの剣を……」
俺は数ある武器の中からツヴァイハンダーを選択すると、何も無い空間から俺の目の前に1本の
両手剣が出現した。
【 ツヴァイハンダー ( Zweihänder ) 】
分類 : 長剣
全長 : 280cm
重量 : 9.0kg
ドイツの巨大な両手剣。
長い刃根元と横に張り出した突起を持ち、この独特の形状から英語圏でも『 両手持ち 』という
ドイツ語で呼ばれた。
これは攻撃の際に手を添えて打ち込んだり、相手の攻撃を受けるのに役立った。
長大で重量のある巨大な剣を取り回ししやすいように柄を長く改良した武器と言え、日本の長巻に
近い武器といえる。
さらに、背負ったり、肩に担ぐのにも具合が良かった。
「ん……【 STR 】の値が高いし、【 剣術 】の適性が SS+ だからかな?この剣を持っても、
重いと感じねぇな。」
周囲に誰も居ないので、ツヴァイハンダーを片手で持って、適当に振ってみる。
「馴染む……実に馴染むぞ。」
前世では剣道に片足を突っ込むことすらなかったのに……この剣を持ったゲームのキャラが使っていた技……
闘気や炎を出したりするのは、まだ無理みたいだけど、振り方・扱い方は俺の肉体に継承されているようだ。
「よしっ!武器の次は防具を出してみるか。」
俺は再び【 創造 】のスキルを発動し、ツヴァイハンダーを出した時と同じ【 武具製作 】の項目を
人差し指でタッチした。
「おっ!防具の方は漫画やゲームで登場した敵キャラやモンスターが着用していた鎧も選べるのか。
それなら……」
俺は幾つかある候補の中から幾つか漆黒の禍々しい鎧を選択し、目の前に出現した。
地面の上に散乱した漆黒で禍々しい造形の鎧とガントレット、腰当てに鉄製のブーツ、更には
両目以外を隠す兜を適当に取り出し、装着する。
元々どれも似たようなデザインなので、オリジナルがバラバラでも、それぞれの防具から選んで、
組み合わせることによって1つの鎧として見繕っても、違和感が全く無い。
「………うん。いいな、コレ。この鎧一式を【 影の鎧 ( スキアー・アルミュール ) 】と命名しよう
……ん?」
鎧一式を身に纏った直後、俺の目の前にステータスやスキル選択画面とは違う、別の画面が表示され
【 スキル『 影の鎧 ( スキアー・アルミュール ) 』を習得しました。 】
というメッセージが表示された。
【 スキル 】
〇 影の鎧( スキアー・アルミュール )『 パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*自分の【 VIT 】の数値が3段階上昇する。
*属性・【 光 】の敵と対峙したとき、自分の【 STR 】【 VIT 】の数値を戦闘終了時まで5倍にする。
*鎧着常時、自分または敵、物の影に潜り込むことができる。
*夜間または暗い場所での戦闘で【 隠密状態 】が発動し、敵から発見されにくくなる。
*1回の戦闘で1度だけ、自分のHPが0に至るほどのダメージを受けた時にのみ発動する。
そのダメージ全てを影の鎧が代わりに受けとめて霧散する。同時に霧散した影がダメージを与えた
敵を貫き、その攻撃技の威力を3倍にしたダメージを与える。
この効果を発動した30秒後に影は再集結し、鎧の形を作る。この効果で再生された鎧は次の日になるまで
上記の効果を使用することができない。
「もう新しいスキルが……きっかけがあれば、割と簡単にスキルは手に入りそうだな。何にせよ、
これでモンスターと対峙したとしても、何とかなりそう……ん?」
近くの茂みが揺れ動いたかと思うと、鹿くらいの大きさで額に1本の角を生やした兎が現れた。
居たのか、この森に俺以外の生き物が……
「お……おぉ……この世界の兎には角が生えてんのか。さっそく、超解析を使ってみるか。」
【 デッドホーンバニー 】 Lv・20
種族・モンスター
年齢・-
性別・♀
移動ユニット・【 歩 】
属性・土
【 使用武器 】
【 ステータス 】
HP・120
MP・0
【 STR 】・50
【 VIT 】・30
【 INT 】・40
【 MND 】・40
【 DEX 】・5
【 AGI 】・70
【 スキル 】
-
「えっ!?確かにレベルは俺と一緒だけど、能力に差がありすぎるだろ!?これも神様の
恩恵ってやつか。それにしても……あいつ、角が生えてるけど、本体は兎なんだよな……
兎肉って、食えたよな……?」
俺の姿を捉えた兎が襲い掛かってきたと同時に、俺は構えていたツヴァイハンダーを振り下ろした。
……結果からいうと、振り下ろした一閃で兎を狩ることができた。
今はこの兎1匹を倒しただけだから何とも言えないけど……他のモンスターや、盗賊とか海賊とか
呼ばれるような連中も、これくらいのステータスなのか?
とりあえず、今解っていることは、確かに『 レベル 』はここら一帯に棲むモンスター達に
近いものなのだろうが
個人の『 ステータス 』は、連中よりも遥かに勝っているという感じか。
「ふぅ……食糧確保。まだ日も高いし……もう少し食料を調達しつつ、レベルアップに励むとするか。」
俺はスキルの中から【 アイテムボックス 】の項目を選択。
某青い猫型ロボットのポケットの中のように、四次元……なのかな?
不思議な空間が広がるそこに、今狩った兎を放り込み
拠点となる洞窟を中心に周囲に居る生き物を狩ることにした。
◇◇◇
「【 創造 】のスキルで『 調味料 』を出現させられるのは、本当にありがたいな。」
塩や胡椒はもちろん、馴染みのある味噌や醤油、カレーやシチューのルーも作り出せるみたいで
本当にありがたい。
日が沈むまで近くに居たモンスターを狩り続け、その中から食べられそうな肉を幾つか
『 持ち物 』から取り出し、洞窟の前で焚火をしつつ肉の加工をしていていると
昼間の兎の時と同じように、前方にある叢が微かに揺れ動いたような気がした。
「ん?血の臭いに釣られて、肉食のモンスターでも来たか……?」
俺が右手で地面に寝かせていたツヴァイハンダーを掴んだのとほぼ同じタイミングで、前方の茂みから
1人の女性が現れた。
焚火の灯りで映し出された女性は褐色の肌で、綺麗な銀色の長い髪をポニーテールにして結っており
胸元が大きく開いた、スカート部分の丈を限界まで詰め、しかもスリットによって前後に分かれていて
側面を紐を交差させて固定するタイプの、めちゃくちゃ露出度の高い黒い服を着て
手には弓を持っている。
腰辺りに黒い紐パンツと思われる物が堂々と見えているが……見て見ぬふりをするのが
紳士ってヤツだろう。
「……女性?」
「くっ……!此処にも人間が……」
素早く弓を構える女性の後方から、他の複数の足音が聞こえてくる。
「……っ!」
「状況はよく分からないけど……何かに追われてるなら、そこの洞窟に身を隠しな。」
「……………」
女性は何か言いたそうな眼を俺に向けながら、洞窟内へと駆け込んだ。
「さてと……」
俺が洞窟の入り口を背にして座り直すと、しばらくしてから、先程女性が現れた方向から3名の
男性達が現れた。
「おい!そこのお前!」
「……………ん?ふぁぁ……何だ?人がせっかく腹いっぱいになって、気持ち良く寝てたっつうのに……」
ワザとらしく大きく伸びをして、さも今起きた風な雰囲気を出しながら、焚火の向こう側に
立っている3人の男を見る。
身なりはRPGゲームでよく見る山賊スタイルで、手には各々剣や鉞、メイスを持っている。
「見たトコロ旅の者みてえだが……この辺りに、ダークエルフの女が来なかったか?」
「ダークエルフ?……さぁな。今さっきも言ったけど、お前等に起こされるまで、俺は寝てたんだ。
此処に誰か来たかなんて、判るわけねえだろうが。」
「ちっ……!まだそう遠くへは行ってねえはずだ!あっちの方を探すぞ!」
男達は苛立ったような、荒々しい声を上げると、俺から見て右の方角へと走って行った。
【 超解析 】を発動する間も無かったな。ただ……
「連中の探索能力がガバガバすぎて草が生えるぜ…………足音が聞こえなくなったな。
もう出て来ても大丈夫だぞ。」
洞窟内へ呼びかけると、先程の……ダークエルフの女性が出てきた。
「何故……私を匿ってくれたのですか?」
「ん?あぁ……別に深い理由は無いんだけどな。ほんのちょっとした気まぐれで、あいつ等の邪魔を
してやりたくなった……って、言っておこうか。」
「貴方も人間でしょうに……変わった御仁ですね。」
「まぁな、自分でもそう思う。ところで、ダークエルフのお姉さん。もし良ければ、何であいつ等に
追われてたのか話してくれねえかな?大丈夫!情に任せて襲い掛かるなんてこと、絶対にしないから。」
「…………わかりました。変な素振りを見せたらその瞬間、貴方の眉間を射抜きますからね。」
ダークエルフはそう言うと、焚火を挟んで俺の対面の地面に腰を下ろした。
「まずは改めて……匿ってくださり、ありがとうございます。私は『 シルヴィア 』と申します。
クラスは御覧の通り『 弓兵 』です。」
「俺はユーヤ。クラスは戦士、職種は暗黒騎士だ。」
ちゃんと苗字も名乗るべきだったかな?
けど、この世界に姓があるかどうか判らないし……とりあえず、ステータス画面に表示されている名前だけで良いだろう。
「暗黒騎士!?……私の話の後、そちらの事情も詳しく御聞かせ願う必要がありそうですね。」
「わかった。ちゃんと話すから……とりあえず、先にシルヴィアの話を聞かせてくれ。」
「分かりました。」
シルヴィアは少しだけ視線を下方へ向け、再び顔を上げてゆっくりと語り出す。
「この森の奥地……エルフ達の魔力によって空間を歪めて本来なら人間が入れない場所に、
私が住んでいたウッドエルフの里があります。私はそこでハイエルフとして生活していました。」
「ハイエルフ?あんまり聞きなれねぇけど……普通の……そのウッドエルフよりも凄い力を
持っているって認識で良いかな?」
「はい。純粋な知恵や使える魔法、弓術などの武芸も、普通のエルフよりも優れているという
考え方で大丈夫です。」
「そっか。じゃあ、シルヴィアって凄いエルフなんだな。」
「いえ、そんな……長老を初め、私よりも凄いエルフ達が、もっと居ますよ。話を戻しますが……
そんなエルフ達の里に先日、先程の男達が現れたのです。」
シルヴィアのその言葉に、俺は首をかしげる。
「何で?里の場所はエルフ達の力で、人間には存在すら知られてないんだろ?」
「本来ならばそうなのですが……以前、人間の住む町に出向き、彼等と知り合った者による手引きで……」
「なるほど。そのエルフがさっきの連中を里に御招待しちまったってワケか。」
「その通りです。その者は『 あの人間達は大丈夫 』と言っていましたが……里に招き入れた人間達は
隠していた本性を露わにしました。」
そう話すシルヴィアの語気が強まっているような気がする……きっと、よほど許せないようなことが
あったんだろう。
なんて考えていると、シルヴィアはその内容について話してくれた。
「彼等はエルフの里を訪れると、すぐに女性エルフ達を口説き始めました。しかし、その粗野な
外見と性格に嫌悪感を示した女性エルフ達が次々に申し出を断ると、腹を立てた彼等は夜になると
持参していた火打石を使い、森の樹木や葉で作られた私達の家に火を点け始めたのです。」
「女性エルフにフラれて逆ギレして、エルフの家に火を点けるとか……最低だな。」
「逆ギレ……という言葉の意味は解りませんが……もちろん、すぐにエルフの男性達が彼等を
取り押さえるために武器を持って挑みました。しかし……彼等の武芸とも呼べない、ただ剣や槍を
振るだけの蛮勇を前に、私達は苦戦を強いられて……」
「シルヴィアも里を守るために戦ったんだよな?」
「当然です!自分の生まれ育った場所なのですから!しかし、私達はウッドエルフと呼ばれる種族。
共生している森が焼かれ、力が弱まっていたのも事実……人間達相手に苦戦を強いられている最中
私は里に代々伝わる禁断の書物の存在を思い出したのです。」
「禁断の書物?」
「はい。今はもう、おそらく里と共に焼けてしまったでしょうが……その書物は、私達エルフの魔力を
増強してくれるという書物でした。その代わり、読んだ時点で魔力と共に闇の力が体内に流れ込み
闇堕ちしてダークエルフになってしまうという代物だったため、『 里の誰もが存在は知っていても
誰1人として読もうとしない本 』でした。」
「じゃあ、シルヴィアはその本を……」
「はい…………里を守りたかった。私はただ、自分が生まれ育った里を、里に住む皆を
助けたかっただけなのです!ウッドエルフとして産まれ、努力してハイエルフになっても尚、
自分が産まれた森が焼けることで力が半減してしまう自分の体が歯痒かった……ですが、禁断の書を
読んで更なる魔力を得れば、あの人間達を追い返せるのではないかと……その時の私は、里の地下に
保管されていた禁断の書を手に取りながら、そう思ったのです。そこに迷いはありませんでした。」
焚火に照らされたシルヴィアの顔が、少しだけ悲しそうな表情になった。
「結果的に里を焼いた人間達を、私の魔力と弓術で追い返すことはできました……しかし、
生き延びたエルフ達は、闇の力によってこの姿になった私に対し、嫌悪の眼差しを向けてきました。」
「…………」
「私は別に感謝や称賛の言葉が欲しかったわけではありません。膨大な魔力を得たのも、
自分の欲望のためではなく、純粋に里と仲間を守りたかっただけなのに……今までハイエルフだった
私を慕ってくれた者も、それまで親友だった者も、私がダークエルフになった途端、私が
話しかけても無視をして……皆、一緒になって私に『 里から出て行け! 』と言ってきました。」
「……里に件の連中を招き入れたエルフは?お咎め無しか?」
「咎めようにも、最初の襲撃で、彼等の凶刃の前に……」
「そっか……でも、それって先日の話なんだろう?何で今日になってシルヴィアは連中に追われてたんだ?」
「以前使用していた弓が戦闘の最中に折れてしまったので、何とか焼けなかった木から弓を作ったり
無事だった荷物を纏め終えたのが本日の夕刻でしたので……それで、支度を終えて里を去ろうとした時
その里の入り口で彼等に遭ったのです。」
「里の入り口で?…………あぁ、そうか。里や森が焼けた上に、結界を張るエルフ達の力が弱まったり
凶刃の前に倒れてそもそもの数が減って、結界を維持できなくなっていたのか。」
「ユーヤさんの仰る通りです。おそらく緑豊かな森の中に突如、焼け焦げた森が出現したので、
簡単に場所を特定できたのだと思います。そして彼等は10人で里を訪れ、7人で里を、
3名で里から去る私を捕らえるよう行動を開始して……弓は作ったのですが、矢を作るまでの時間は
無く……魔法を発動する余裕も無く、逃げの一手で……」
「今に至る……か。」
「はい。さぁ、私の話は終わりました。今度はユーヤさんの話を聞かせていただきましょうか。」
「俺の……か。」
シルヴィアは辛いことを、正直に話してくれたんだ。
だったら俺も、どこまで信じてもらえるか分からないけど、やっぱり正直に話すべきだよな……
「えっと……まず最初に、きっと信じてもらえないだろうけど……俺は此処ではない別の世界で
1度死んだんだ。」
「え……?それが本当かどうかはともかく、何故……病だったのですか?それとも寿命で……?」
「いや、俺もイジメ……えっと、迫害に遭ってたんだ。どうしてその迫害が始まったのかは、
ごめん……ちょっと思い出せない。けど……どんどん激しく、荒くなっていく行為と、
好きだった人に裏切られたことによって心が挫けてしまってな。それなりに高い塔の最上階から
身投げしたんだよ。」
「…………っ!」
他にも
両親が交通事故……は通じないだろうから、おそらくこの世界で一般的だと思われる馬車に
撥ねられて亡くなったこと
育て親である父方の爺ちゃんが老衰で亡くなったこと
それを正直にシルヴィアに話した。
「本来なら俺の魂は死後の世界……地獄に逝くはずだったらしいんだけど、神様と呼ばれる存在の
恩情により、この地で暗黒騎士として第2の人生を送れるようになったんだ。」
「……ユーヤさんは嘘を吐いていないようですね。目を見れば判ります。ですが、それならば何故、
暗黒騎士なんかに……普通の人間として、また新たな人生を送れたでしょうに。」
「これは俺の希望でもあったんだ。『 また人間に産まれたところで、変に人間と付き合って、
イジメられたり、裏切られたりするのはもう……うんざりだ。そんな思いをするくらいなら
俺は人間と敵対するような存在で生まれ変わっても後悔しない 』ってな。」
「それで……」
「まぁ、俺の意見は半分通って、もう半分は神様達が『 人間ともほんの少しは交流して欲しいと
いう我々神の願いを込めて、人間と魔族の中間という措置を取った 』とかで、俺は生前の
姿のままこの地に暗黒騎士として誕生したんだ。」
「そうだったのですか……」
一頻り話を終え、俺とシルヴィアは黙ったまま、ただ焚火の火の粉が弾けるパチッパチッという音が耳に入ってくる。
「さて……私はもう行きます。匿ってくださり、ありがとうございました。」
「行くって……何処か行く宛はあるのか?」
「それは……特にありませんが……そういうユーヤさんは?何処か行く宛はあるのですか?」
「いや、全然。さっきも言ったけど、俺は今日、この世界に産まれたばかりなんだぜ?この世界の
地理や国同士の情勢なんてサッパリだ!今はとりあえず、この洞窟で寝泊まりしようと
考えていたところだよ。」
「そう、ですよね……」
「…………なぁ、シルヴィア。折入って頼みたいことがあるんだけど……」
「何でしょう?」
「えっと、その……お願いします!俺の仲間になってくれないでしょうか?」
俺はシルヴィアの前に立ち、ほぼ直角に腰を曲げて、仲間になってもらうよう懇願する。
「私がユーヤさんの御仲間に?…………っ、お断りします。」
少し考えた素振りを見せたシルヴィアから返ってきたのは、お断りの言葉。
「っ…………まさか、断られるとは……理由を訊いても?」
「先程話しましたが、私は禁断の力に手を染め、闇の力を得たことで穢れてしまった身です。そんな
私が一緒に居ると、ユーヤさんの御迷惑になってしまいます。誘っていただけたのは、とても
嬉しかったです……しかし……」
「何だ、そんな理由か。」
「そんな理由って……!」
「そんなの、俺は全然気にしないぞ。っていうか、さっきの話、聞いてただろ?俺の職種、暗黒騎士だぞ?
シルヴィアがそうだったように、俺だって闇の力にガッツリ手を染めちまってるっつうの。」
まだ闇系の魔法は何一つ使えないんだけどな!
「ぁ……」
「シルヴィア、改めて頼む。俺の仲間になって、傍で俺を支えてもらえないだろうか?その代わり、
俺にできることがあれば、可能な範囲でだけど力になることを約束する。」
「…………ユーヤさん。」
ボソッと呟いたシルヴィアの目から、一筋の涙が零れ落ちる。
「シルヴィア!?」
「え?ぁ……申し訳ありません。泣くつもりは無かったのですが、無意識のうちに……貴方の言葉が……
私を仲間に誘ってくださったことが嬉しくて……」
「それじゃあ……」
「はいっ……!」
シルヴィアは立ち上がり、焚火の横を通って俺の前まで来ると、その場で片膝を地面に着けた。
「このシルヴィア、喜んでユーヤさん、いえ……我が主様の御仲間となり、この生涯を
終えて魂となった後も、永遠の忠誠を此処に誓います!これからどうか、末永く宜しくお願いします。
我が身、我が魂はずっと貴方様と共に。」
何かメチャクチャ重大なことになってるような気がするんですが……
エルフの寿命って、人間の数倍近くあるんじゃ……
まぁ、それを口に出すほど、野暮でも無粋でもないと自負しているつもりだ。
なにより、右も左も分からない世界で仲間が出来たことが、純粋に嬉しい。
「ありがとう、シルヴィア!でも、そういう上下関係はあんまり好きじゃないから……対等な関係として
遠慮しないでシルヴィアの考えをぶつけてくれる方が嬉しいかな。」
「はい!分かりました、主様。」ニコッ
できればその呼び方も、ちょっと背筋がこそばゆくなるから名前で呼んで欲しいんだけど……
そこはシルヴィアの好きに呼ばせてあげよう。
あんまり強制させるのも悪いしな。
とにかく、この世界に来て1日が終わる前に最初の仲間を迎え入れることができたこと。
そしてそれが、物凄く美人でその……めちゃくちゃエッチィ服を着たダークエルフであることが男心ながらに凄く嬉しかった。