ダーク・ファンタジー小説

共闘しましょう ( No.4 )
日時: 2024/05/02 21:07
名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011

シルヴィアを仲間にした翌朝。
俺とシルヴィアは、【 創造 】のスキルで出現させた黒パンを厚く切り、その上に焚火である程度溶かした
チーズを乗せた物を食べ、コーヒーを飲んで朝食を済ませた。

「あ、そうだ。シルヴィア。」
「はい。」
「ちょっと、俺のステータスを見て欲しいんだけど……」

俺はステータス画面を開き、シルヴィアに見せる。

「スキルと適性は置いておくとして……俺のステータスって、一般的な冒険者より高い?」
「えっと……私も他の人間のステータスを見たことが無いので、詳しいことは判らないのですが……
 そうですね。それでも攻撃力と防御力はこれ以上に無い仕上がりだと思います。」
「なるほど……ついでに、シルヴィアのステータスも見せてもらっていいか?」
「わかりました。……はい、どうぞ。」

そう言ってシルヴィアがステータス画面を開いてくれた、


【 シルヴィア 】Lv・18
種族・ダークエルフ 【 妖精 】
性別・女性
年齢・18歳
身長・168cm
3Size・B 89 / W 59 / H 90
クラス・アーチャー
Range・後衛
職種・―
移動ユニット・【 歩 】
属性・闇

【 使用武器 】
〇 弓
分類 : 遠距離武器
全長 : 75cm
重量 : 0.7kg

【 ステータス 】
HP:1125
MP:2600
【 STR 】・3500
【 VIT 】・5700
【 INT 】・5900
【 MND 】・6100
【 DEX 】・1200
【 AGI 】・8500

<< 適正 >>
【 歩兵 】 A 【 騎兵 】 A 【 弓兵 】 SS+ 【 海兵 】 A 【 空軍 】 F
【 魔導師 】 A 【 工作兵 】 C 【 商才 】D 【 間諜 】 B 【 軍師 】 SS+ 
【 築城 】 F 【 統率力 】 A

【 剣術 】C 【 短剣術 】C 【 槍術 】C 【 弓術 】SS+ 【 格闘術 】B 
【 銃撃 】G 【 投擲 】E 【 魔術 】S+ 【 召喚術 】G 【 防衛術 】A 
【 生産職 】C 【 罠工作 】D 【 機械操作 】G 【 交渉術 】S
【 推理力 】S+ 【 軍略 】SS+

<< スキル >>
〇 精巧な射撃 『パッシブスキル 』
*使用武器・【 弓 】を装備している時、自分の【 STR 】の数値を
 戦闘終了時まで5倍にする。
*自分の身長よりも大きな敵と対峙した時、戦闘終了時まで自分の【 STR 】と
 【 AGI 】の数値を5倍にする。
*種族・【 獣 】【 鳥 】【 アンデッド 】【 モンスター 】【 ドラゴン 】の敵と対峙した時、
 先制攻撃ができるようになる。
*『 討伐戦 』『 侵攻戦 』『 攻城戦 』『 防衛戦 』『 籠城戦 』に
 参加した時、自分の【 STR 】【 VIT 】【 MND 】の値を5倍にする。

〇 森林の先駆者 『パッシブスキル 』
*【 森 】を移動するとき、【 隠密状態 】になり、敵から完全に視認されず
 攻撃の対象にならなくなる。
 立ち止まって5秒経過してから、ようやく視認されるようになる。
*【 森 】での戦闘で、戦闘終了時まで【 INT 】【 AGI 】の数値が3倍になり、回避率が上がる。
*属性・【 草 】【 風 】の攻撃技の威力が3倍になる。
*クラス・【 メカニック 】の敵と対峙した時、戦闘終了時まで自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 5倍にする。
*職種・【 密猟者 】の敵と対峙した時、戦闘終了時まで自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 5倍にする。
*属性・【 炎 】【 金属 】の敵と対峙した時、戦闘終了時まで自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 5倍にする。

〇 王佐の才 『パッシブスキル 』
属性:-
消費MP:-
*敵が仕掛けた軍略や罠を看破し、無効化できる。
*自分が所属する勢力の人数が敵より少数で戦闘をする場合
 自分を含む味方全員の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を
 戦闘終了時まで3倍にする。
*【 都市 】【 城 】【 草原 】【 荒野 】での戦闘時
 自分を含む味方全員の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を
 戦闘終了時まで3倍にする。
*職種・【 勇者 】【 聖騎士 】【 暗黒騎士 】【 傭兵 】【 軍師 】【 盗賊 】【 海賊 】
 【 密猟者 】【 トレジャーハンター 】【 賭博人 】【 悪徳商人 】の敵と対峙した時、
 戦闘終了時まで自分の【 VIT 】【 INT 】【 MND 】の数値を5倍にする。

〇 闇に染まりし者 『パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*自分が使用する属性・【 闇 】の攻撃技の威力が5倍になる。
*夜間に行われる戦闘、暗い場所での戦闘で、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 戦闘終了時まで5倍にする。
*状態異常・【 呪い 】【 畏怖 】【 即死 】を受け付けなくなる。
*【 荒野 】【 廃墟 】【 墓地 】での戦闘で、自分の【 STR 】と【 VIT 】、【 AGI 】の数値を
 戦闘終了時まで5倍にする。
*種族・【 妖精 】【 天使 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 戦闘終了時まで5倍にする。
*職種・【 勇者 】【 聖騎士 】【 聖職者 】【 白魔導士 】の敵と対峙した時、
 自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を戦闘終了時まで5倍にする。
*属性・【 光 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】と【 VIT 】の数値を
 戦闘終了時まで5倍にする。

〇 Absolute zero 『 魔法攻撃スキル 』
属性:氷
消費MP:5
攻撃威力:7500
攻撃範囲:SS++
射程距離:G ~ SS++
*敵1体を中心に猛吹雪を発生させる。
 周囲に居る複数の敵も同時に巻き込むことができ、中心に居る敵と同じ威力
 7500のダメージを巻き込んだ全ての敵に与える。
*この攻撃を受けてHPが0になった敵を100%、HPが0にならなかった敵を
 50%の確率で状態異常・【 凍結 】にする。
*種族・【 モンスター 】【 ドラゴン 】の敵に対し、ダメージを与えつつ
 【 AGI 】の値を5段階下降させる。

〇 Perfect Cure 『 回復魔法スキル 』
属性:光
消費MP:5
攻撃威力:-
攻撃範囲:-
射程距離:G ~ SS++
*HPが0になっていない自分、または味方・他人単体のHPを全回復させる。
*自分、または味方が受けてしまった状態異常・デバフ効果を全て解除する。


「(女性の場合、スリーサイズが赤裸々に表記されるのか……シルヴィア、すげぇスタイル良いな……)」
「主様……どうされました?」
「えっ!?あっ、あぁ……いや、へっ……へぇ。シルヴィア、弓や魔法の才以外にも、軍略系に
 長けてるみたいだな。」
「どうでしょう?自分ではあまり実感がないですね……」
「まぁ、俺も正直偉そうなこと言える立場じゃないんだけど……こればっかりは、数をこなせとしか  
 言えないかな。」
「そうですね……とにかく、この先『 軍 』を動かすかどうかは置いておくにしても、引き続き
 知識だけは身に着けていこうと思います。」
「うん。頼りにしてる。」
「はいっ!」ニコッ
「あと……この世界の弓って、思ってたより小さいんだな。俺が前に居た世界の弓は、それの
 倍くらいのデカさはあったぞ。」
「この弓の倍くらいの大きさ?……御冗談を。そのような大きな弓が、戦闘で役に立つとは思えません。」
「うん。俺もそう思う。まぁ、俺の国では武術……修練の一環として使用していてさ。動き回らず、
 いかに的の真ん中を狙うか……武術と共に精神面の強化みたいな感じで使われていたからな。」
「なるほど。戦闘で使用するわけではないのですね。」

それでも、何時代かまでは忘れたけど、昔はそのデカい弓で戦争をしていたそうなんだよなぁ……
けどまぁ別に、シルヴィアに言うことでもないか。

「あっ、そうだ!シルヴィア、里を去る時、弓は作ったけど、矢を用意できなかったんだよな?」
「え……えぇ、追手から逃げ切った後、ゆっくり作ろうかと思いまして……」
「っていうか、【 森林の先駆者 】のスキル効果で、シルヴィアが森を移動してる時は完全に
 認識されてないみたいなのに……あの連中は、何を頼りにシルヴィアを追ってたんだ?」
「里周辺の樹木は焼け落ちて、【 森 】として認識されていなかったのでしょう。私が焼けた荒地から
 森へ向かって走るところを追われて、森に入ってからは……勘でしょうね。」
「勘かぁ……まぁ、連中の話はどうでもよくて。」

俺は【 創造 】のスキルを発動し、矢を100本纏めた束と、矢筒を出現させる。

「これだけあれば戦えるか?」
「えっ!?こんなに……矢筒まで、よろしいのですか?」
「まぁ、1から矢を作るのも大変だろうし、今の俺達に人間の町で矢束を買う金も無いからな。それに
 『 俺にできることがあれば、可能な範囲でだけど力になることを約束する 』って、言ったもんな。」
「主様……ありがとうございます!」

シルヴィアは矢筒に詰められるだけの矢を詰めた後、残りの矢は随時補充ということで
【 アイテムボックス 】に収納した。

「それと……軍略が高いみたいだし、今後何かの役に立つと思うから、俺が持っている【 超解析 】の
 スキルをシルヴィアにも持っていて欲しいんだけど……人から人へ、人から動物やモンスターへって感じで
 スキルの贈与みたいなことは可能なのか?」
「えっと……どうでしょう?私もやったことがありませんので……」

『それについては、私が説明しましょう。』

シルヴィアと話していると、俺の脳内に転生の神様のダンディな声が響いてきた。

「主様?」
「今、俺をこの世界に転生してくれた神様から、念話……で良いのかな?いや、神託?とにかく
 神様が語り掛けてきてる。スキル贈与について説明してくださるそうだ。」
『せっかくですし、エルフの彼女にも私の声が聞こえるようにしておきましょうか。』
「……っ!私にも聞こえます。この方が、主様をこの世界へ転生してくださった神様なのですね。」

シルヴィアもいきなりのことで一瞬驚いていたが、割とすんなり神様の声を受け入れたようだ。

『さて……結論から言いますと、スキルの贈与は可能です。今回は悠耶くんがシルヴィアさんに送り
 共有したいとのことですので、早速ですが悠耶くん。【 超解析 】のスキルを指で触れてください。』
「わかった。」

転生の神様に言われた通り、【 超解析 】のスキル名に触れると
『 【 超解析 】を仲間に贈与しますか? 』というメッセージと、『 はい 』『 いいえ 』の
選択肢が表示された。

『そこで、『 はい 』を選択してください。』
「いや、さすがにそこは説明していただかなくても、解りますよ!」

選択肢の『 はい 』を選ぶと、俺の手元に紙を巻いた……スクロールと呼ばれる物が出現した。

『悠耶くん。それをシルヴィアさんに手渡してください。そして、シルヴィアさんがそのスクロールを開けば
 贈与完了となります。』
「わかりました。」

俺からスクロールを受け取り、開いたシルヴィアの身体を、淡い緑色の光が包み込んだ。

「……!本当です!【 精巧な射撃 】と【 森林の先駆者 】との間に、新しく【 超解析 】が
 増えています!」

どうやら、ステータスに表示されるスキルは、入手した順番というワケではないらしい。

「へぇ。意外と簡単なんだな。」
『ただし、制約としてスキル贈与は1人1日1回となっています。』
「つまり、主様から私へは本日はもう送れませんが、私から主様へは1回だけ送れるということですね?
 そして、日を跨げば主様も再び同じことができると。」
『はい。その通りです。今後新たに得るスキルも同じようにしてやり取りできますから、共有したい
 スキルがあれば、同じ手順で共有してくださいね。』
「ありがとう、神様。ちゃんと覚えておくよ。」
『では、本日の講義はここまでです。悠耶くん、シルヴィアさんと共に、そちらでの生活を
 楽しんでくださいね。』
「はい。存分に楽しませてもらいますよ。」

転生の神様との通話、終了。

「優しい神様ですね。しかし……神様に優しくしていただける、暗黒騎士とダークエルフって……
 どうなのでしょう?」
「ま……まぁ、他の連中に話さなければ、バレないことだし!今後、神様に相談するときは、こういう
 人目の無い場所でしねぇとな。」
「えぇ、そうですね。」
「さてと……いろいろ確認を終えたところで……どうしよっか?」
「そうですね……主様の【 創造 】のスキルでどの程度のことができるか、まだ判別できていませんし
 とりあえずは近くの人間の町を訪れてみて、そこで今後どうするかを決めていきませんか?」
「確かに……よし!シルヴィアの提案を採用。ちょっと近くの町を探してみようか。」
「はいっ!」ニコッ

***

しばらくシルヴィアと雑談しながら歩いていると、周囲の茂みが揺れ動き、ゲームでよく見る
緑色の肌のゴブリン達が数十匹現れた。

「ゴブリンか……ちょうどいい。町へ持って行く土産の数を増やすとするか。」
「あら?私のように仲間にしないのですか?」
「シルヴィア。俺にだって選ぶ権利があると思うんだ……何より、意思を疎通させるより前に武器を構えて
 『 今から襲います! 』って姿勢を示しているような奴等に、勧誘が通用すると思うか?」
「確かに……仮に仲間にして、部隊を編成させたとしても、主様の指示を聞かないような雑兵は
 必要ありませんね。」
「決まりだな。さてと……突っ込む前に、【 超解析 】!」
「あっ!私も、早速使わせていただきますね。」

2人で【 超解析 】を発動し、敵対しているゴブリンのステータスを覗き見る。


【 ゴブリン A 】 Lv・19
種族・モンスター
年齢・-
性別・♂
移動ユニット・【 歩 】
属性・闇

【 使用武器 】
〇 短剣

【 ステータス 】
HP・150
MP・0
【 STR 】・70
【 VIT 】・50
【 INT 】・10
【 MND 】・10
【 DEX 】・5
【 AGI 】・40

【 スキル 】
-


「えっ!?モンスターの強さというのは、この程度なのですか!?私と主様のステータスの前では……
 霞んで見えますね。」
「まぁ、その分安全に倒せるってワケだ。たぶん、他のゴブリンも似たり寄ったりの
 ステータスなんだろうな。流石に、群れのボスだけは、もう少し強いのかもしれねぇけど。」
「えぇ。そうですね。」
「それじゃ……いくぞ!連中には俺達の経験値と素材になってもらう。シルヴィア……俺の背中、
 お前に預ける!」
「はいっ!お任せください!」

俺はツヴァイハンダーを構えて先行し、横に一閃に振って前方に居たゴブリン達を数体纏めて薙ぎ払う。

そのまま吹っ飛ぶゴブリン、ツヴァイハンダーの刃の部分が当たって真っ二つになったゴブリンを
横目に武器を構え直し、次の襲撃に備える。
1度に複数の仲間が吹っ飛んだ光景を目の当たりにし、やや怯んだゴブリンが居る中、俺から見て
右側面から1匹のゴブリンが勢い良く跳びだして来た。

それを合図にしたかのように、目の前にいた2匹のゴブリンが棍棒を振りかざして突っ込んできた。

俺はとっさに裏拳で殴ろうとしたが、それよりも先に俺の後方に居るシルヴィアが放った矢が、
側面から跳びかかって来たゴブリンの左側面のこめかみに寸分狂わず突き刺さり、
その後すぐにシルヴィアは2本の矢を番え、素早く同時に放たれた2本の矢は、俺の前方から迫って来ていた
2匹のゴブリンの眉間に、それぞれ1本ずつ突き刺さった。

シルヴィアの矢を受けた3匹のゴブリン達が、俺に攻撃する直前でドサッと音を立てて地面の上に落ちる。

「動く獲物の、狙った場所に確実に命中させる……それも、2本同時に……凄い技術だな。純粋に
 感心するよ、シルヴィア。」
「ありがとうございます!主様のツヴァイハンダーも素晴らしい切れ味と攻撃範囲を有していますね。
 そこに主様の力と技術が加わり……うふふ。頼りになります。」

互いに相手の武を称賛していると、『 このままでは、やられる! 』と思ったゴブリン達が
逆上した様子で手に持つ武器を振り上げて襲い掛かって来た。

「勢い任せの強行か……悪いが、俺の後ろには守るべき仲間が居る。俺より後ろへは行かせねえぞ!」
「主様……」
「シルヴィア、できるだけ大きく下がれ!」
「はいっ!」

俺はツヴァイハンダーを構え、シルヴィアがバックステップで更に後方へ移動したのを確認してから
右足を軸にその場で回転斬りを繰り出し、迫って来て範囲内に入ったゴブリン達を薙ぎ払った。

短い断末魔、絶叫を上げて迫って来ていたゴブリン達が大きな放物線を描きながら大きく吹っ飛んでいく。
ドサッ、ドサッと音を立てて落ちてくる仲間を目の当たりにし、生き残ったゴブリン達が撤退を試みる。

「ん?何だ?もう逃げる気なのか?」
「撤退なんて許しません……凍てつきながら、私達に戦いを挑んだことを後悔しなさい!
 【 Absolute Zero 】!!」

ふっとシルヴィアの方を見ると、いつの間にか足下に水色の魔方陣を展開しており、彼女が右手を
かざしたと同時に物凄い冷気が俺の傍を吹き抜け
更に前方に居たゴブリン達の周囲で吹雪となって、轟音を鳴り響かせながら物凄い勢いで渦巻き……
冷気が掻き消えると、そこには氷像になってピクリとも動かなくなったゴブリン達の姿があった。

「さぁどうぞ、主様。あとは斬り砕くだけの簡単なお仕事です。」
「お……おう。」

シルヴィアに言われた通り俺はツヴァイハンダーで氷漬けにされたゴブリン達にとどめを刺し、
先に倒したゴブリン達の物も含め、ある程度の素材を回収した。

「……よし。こんなモンかな。」
「お疲れ様です、主様。」
「いや、シルヴィアも……本当にありがとう、凄く助かったよ。やっぱり後方から援護してくれる
 存在が居るっていうのは良いなぁ。」
「うふふ。ありがとうございます。」
「それにしても……」

【 Absolute zero 】という技は、俺が生前遊んでいたゲームにも出ていたから存在は知っていた。
確か、『 絶対零度 』って意味の氷属性の上級魔法だったはず……

「シルヴィア。さっきの魔法は……この世界のエルフは皆使えるのか?」
「いいえ。昨日お話しした禁断の書の、偶然【 Absolute zero 】のページを読んで使用できるように
 なりました。おそらくですが、森……植物と共に生きるエルフ達にとって、森の植物を枯らす、
 燃やして力を奪うような内容の魔法が記されていたため、あの魔導書を『 禁断の書 』という扱いを
 していたのかもしれません。」
「なるほどな。」

ゲームでいうまだまだ旅の序盤でこんな強力な魔法を放ちつつ
巧みな弓の技術で後方から支援してくれる仲間……

「本当に……ただツヴァイハンダーを振り回している俺より、ずっと頼りになる。これからもずっと
 頼りにさせてもらうよ、シルヴィア。
「はいっ!お任せください。」ニコッ
「よしっ!それじゃあ、狩りの標的を変えて……もっと、どんな奴等が相手でも対応できる様、連携の
 特訓をしておこうか。」
「そうですね。主様と私との絆の連携、より密にしていきましょう!」

◇◇◇

その後も遭遇したモンスター達を討伐し続け、結局その日は森の外に出ることができず
森でキャンプをしながら1夜を過ごし

日が昇ってから森を抜け、補正されている道を……時計が無いからどれだけ歩いたかは判らないが、それなりの時間を歩き、俺達は大きな町の関所前に到着した。

石造りの関所の門の上方には『 アルガス 』という、おそらくこの町の名前であろう文字が刻まれている。

「とりあえず……鎧はこのままに、兜だけは脱いでおこうかな。」
「そうですね。おそらく大丈夫かとは思いますが……こちらに対する検問の兵の心証が、少しでも
 良くなるかもしれませんし。」

アルガスという町に用事のある他の人達の列に並び、俺達の番になって検問で自分達のステータスを
見せ……特に問題無く、新規で通行証を発行してもらい、無事に2人で町に入ることができた。

「……何か、思いの外簡単に関所を通過できて、拍子抜けしちまったな。」
「もしかしたら、過去に私達のような……暗黒騎士やダークエルフのような存在が出入りしたことがあり、
 そのせいで寛容になっているのでしょうか?」
「まぁ、何にせよ、今の俺達にはありがたい話だ。検問を容易に通過できるなら、今後はこの町を
 最寄にするのも良いかもしれないな。」
「うふふ。そうですね。」

俺とシルヴィアは門の所に居た衛兵に此処に来た目的を話し
『 モンスターの素材なら、ギルドが買い取ってくれる 』という話と場所を教えてもらい

町の外れにある、それなりに規模のデカい建物のギルドを訪れた。

中に入り、モンスターの素材の買取りを依頼して待つこと数十分……
銅貨が500枚、銀貨が700枚、金貨も700枚で買い取ってもらえた。

何でも、俺とシルヴィアが持って来た素材の中にレアな物があったらしく、この価格になったそうだ。

正直、俺はこの世界のお金のことは全く分からないので、シルヴィアにお金の価値について
訊いてみると、『 エルフの里では物々交換が基本で、お金を使ったことがない 』とのことだったので
受付嬢さんに訊いてみると、俺達を怪しむことなく親切丁寧に教えてくれた。

受付嬢さんによると

銅貨1枚=100円
銀貨1枚=1000円
金貨1枚=10000円

の価値があるらしい。

「といことは現在、7750000円持ってることになるのか……やべぇよ、高校3年生が所持していい
 金額じゃねえってコレ……シルヴィア、頼む。お金の管理はお前に任せても良いかな?俺はちょっと……
 銀貨が5枚くらいになるまで、怖くて財布を持てそうにない。」
「? はい、わかりました。責任をもって管理させていただきます。」
「よろしく。でもさ……豪遊するつもりは無いけど、それだけあると大抵の物は買えそうだな。」
「そうですね。今は食料や水以外、特に急ぎで必要な物はないので、とりあえず、このまま貯蓄して 
 おきますが。」

用事が済み、冒険者ギルドを出て、門が見える商店街まで戻って来ると……ちょうど、跳ね橋が
持ち上げられ、巨大な板で門が塞がれたところだった。

時刻は判らないが、空を見る限り現在は夕刻。
この世界でも太陽は西へと沈み……空が橙色になり、そのまま商店街をオレンジ色に照らす。

どうやら本日の営業はこれで終了。町に入る予定だった者は門の付近で野営の準備を始め
内側に居る俺達は宿屋や飲食店などで、明日の朝、跳ね橋が下ろされるのを待つことになる。

「…………ゆっくりしすぎたかな?」
「まぁ、この町に到着した時には既にお昼を過ぎていましたし……仕方ありません。森へ行くのは
 明日にしましょう。」
「それしかねえよな……今からでも空いてる宿屋があればいいんだけど。」

こうして、俺達は朝日が昇るまでの数時間、このアルガスの町で過ごすことにした。