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ダーク・ファンタジー小説
- Re: またねじゃなくて、さようなら。 ( No.3 )
- 日時: 2021/07/07 18:54
- 名前: ねむねむ ◆ImDwVl1n2. (ID: HAhG.g1E)
二話 不安と決意
その日は、鬼の娘の誕生日だった。幸せな一日になるはずだった……
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ケーキは手作り!お母さんと一緒に、頑張って作ったの。クリームをスポンジに塗るのがとても難しかった。見た目は少しだけ満足いかない感じになってしまったけど、おいしければいいよね!
あとはお父さんが帰ってくるのを待つだけ!楽しみだなぁ♪
「おかあさん、たのしみだね!」
って私が言うと、お母さんは頷いて優しく微笑んでくれた。
のどかで、平和で、かけがえのないこの瞬間。
一生続いてほしい。いや、続くと思う。幸せを嚙み締めた。
そんな幸せな日になるはずだった。
でも、いつまでたっても、お父さんは帰ってこなかった。
午後6時になって、お母さんはチラチラとドアの方を何度も見た。
午後7時に、お母さんは瞳に不安の色を宿した。
午後8時に、何か迷っている表情を見せた。
午後9時。
お母さんは、何かを決心した様子で、私に言った。
「お母さん、ちょっと出かけてくるから、家で良い子に待っててね。」
私は、今日で9歳になったのだ。お父さんに何かがあったのだろうということは、簡単に予想ができた。そして、お母さんは今からお父さんを探しに行くのだろうということも。
私が必死に頼んでも、きっと連れて行ってはくれないだろう、ということも。
だから、私は勝手について行くことを決めた。
「わかった。」
とうなずいて、内心で謝りながら、ついて行く決心をする。
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