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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.1 )
- 日時: 2021/07/20 12:20
- 名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)
「奇跡の巫女...って、だいぶ前の伝説になってるぞ」
「...そう。」
それだけ言うとそっぽ向いてしまった。
「ねえ、てんしくん」
「...俺一応性別ないんだけど...なに」
「迷子?」
「うん。迷子」
「ドア出て突き当り右に曲がって真っ直ぐ進むと上に行く階段があるよ」
なんで幽閉されてるのにそんなこと知っているんだろうか。
「ありがと...」
少し落ち込んでいるらしい。それを察したガブリエラは、
「...もうちょっといる?」
と問う。
「...うん」
声色は明るくなったようだ。
それから本当にいろいろなことを話した。
姫は昔のこの国の話を、見知らぬ天使は今のこの国の話を。
ガブリエラは本当に楽しそうに話を聞いていた。数十年ぶりの客と談笑する時間が彼女にとってどれほど愛おしいものなのか。その時間が終わるとき、どれほど切ないのか。
見知らぬ天使は少しからかいながら楽しんでいた。いつもの仕事から開放されて人と話すひとときはきっと久しいのだろう。
二人とも、己のことは一切話さずに時は無慈悲に流れてゆく。
時間が来たので、見知らぬ天使は上へ戻っていってしまった。
「また、来ないかなあ...」
深夜まで話し込んでしまい溜まった眠気に意識を沈めていく中、一言呟き眠りにつくのだった。
〜序章 2匹の天使 終〜
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