ダーク・ファンタジー小説

Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.10 )
日時: 2021/07/23 20:43
名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)

「ねえ」
「なんだよ」

ずっと聞こうと思ってたけど聞けなかったこと。

「キミ、なんでボクのところに来てるの?」

だってそうだろう。

命の危険を冒してまでボクに会いに来る意味がわからない。

ボクにそんな価値はない。キミはボクの種族を知っている。堕天使なんだよ?

「いや、そりゃあさ」



「一応俺ら、友達、じゃん?」

照れくさそうに言う。

「え、あ」

言葉が出ない。答えはYes一択だ。なのに、声が、

「違った?」

「ちが、わないけど」

「...俺さあ、嬉しかったんだ」

なにが?

「アンタ言ったじゃん。「天使と悪魔」は敵でも「ボクとキミ」は友達って。あれ、けっこーまじで嬉しかったんだわ」

「...」

「俺はアンタの友達じゃん。そこに理由はいらなくね?」

「...ふふ、キミはホントにブレないね。安心したよ」

「ならなにより」

もう少し、安心していいのかな

あの子と重なるキミはホントに


_______そっくりね。

「そーいや、はいこれ」

なに、これ

「敷地内の出店で売ってたから買った」

そう言って彼がくれたのは、


白くてもふもふで赤い目がぱっちりしてて

かわいい耳のついた胸に収まるサイズの兎のぬいぐるみ。

「かわいい...!」

思わず頬が緩む。ああ、なにこれ肌触り最高...

「気に入ってもらえたようで何より」
「ありがとう!大事にするね!」

久しぶりに気が抜けた。また胸がぽかぽかする。

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。また明日」
「うん!また明日ね!」

彼が部屋を出ていったあと、心地よい眠気に身を任せ、眠りの底へ沈む。

いつ来なくなるかわからない「また明日」。

それがまた、来ることを祈って。


〜第二章 奇跡と人を寄せる少女のお噺 一話〜