ダーク・ファンタジー小説

Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.12 )
日時: 2021/07/26 19:31
名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)

「...お出かけ?」

姫...ガブリエラは、正直困惑していた。

目の前の天使から、逢引...デート的なことに誘われているからである。

「たまにはいいじゃん。数十年外出てないんだろ?誰も文句言わねえって」
「少なくともハーメルンは怒るよ」
「あいつは例外、何しても文句言いそう」
「大正解」

...行くにしても、どうすんのさ。

「どこ行くつもりなの?」
「命の泉のすぐ側の喫茶店にでも」
「あんなところに喫茶店できてたんだ」

命の泉。それは一雫落とすとあたり一面に花が咲くような聖水が湧き出る泉である。

ガブリエラがまだ幼かった頃、よく一人でぼーっとしていた場所。

「...いいけど、服どうすんの。このままってわけにも...」
「これでいい?」

彼が持っていたのは白いワンピースとグレーのカーディガン。そんなのまで用意してたんだ。

「仕事は?」
「今日休み。意外と休みもらえるし」

「...口元隠せるものある?」

「一応こんなのが」

黒いマスクを取り出す。ここは予想されてたんだろう。

「...いいよ、行こ」

「まじ?よっしゃ、んじゃ俺も着替えてくるわ」


ガチャリと音を立て扉が閉まる。

久しぶりの王国。

どうなったんだろう、なんて考えながら先程手渡された服に袖を通す。

温かい。

...ふと、気がつく。



これ、手作りじゃん。すごい縫い目きれいだから気づかなかった。

素直に尊敬する。今度なにかお礼でもしよう。

「おーい、着替え終わったー?」

ドアの向こうから声がする。

「うん、終わった」

「んじゃ行こーぜー」

おでかけ、だ

〜閲覧数150突破記念番外編 逢引と温かい紅茶 前編〜