ダーク・ファンタジー小説

Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.2 )
日時: 2021/07/20 20:48
名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)

翌晩
「よっ、また来たぞ」
「...え」

なんで来たのさこの子、バレたらどうなるかわからないのに...

「暇だったから」

「声に出てたか...にしてもキミ、正気か?あの暴君に勘付かれでもしたらどうする気なんだ...」

「大丈夫だよ、寝てたし」

「...よくもまあ飽きないな、キミ」

「はは、意外と楽しかったもんで」

実際、ボクも楽しかった。

数十年。数十年ぶりに感じた、数十年ぶりに触れた他人のぬくもり。

思ってしまった。

想ってしまったのだ。

「また来てくれて、ありがと」

小さな小さな呟きは、そのまま虚空に溶けていく。


今日も昨日話しきれなかった内容や、世間話をして、気づいたときには深夜。

へらへらと談笑する時間が、どうしようもなく愛おしい。

なんだか、心がぽかぽかするんだ。

きっとキミも、何かを抱えて生きてるんだろう。

でも、今は全部忘れていいんだよ。

「ふふっ」
「なんだよ」
「別に、なにもないよ」

できるなら、キミの心を救いたい。

でも、ボクはここから出られない。

もし、叶うなら

キミと一緒に、「しあわせ」になりたいな。

「またおいで、待ってるから」
「いいのかよ、バレたらアンタも死ぬかもだぜ」
「大丈夫。ボクはこれでも奇跡の巫女だもの」
「んじゃ、また」
「うん、またね」

ああ、どうか

彼にめいっぱいの奇跡をあげて。

彼を、しあわせにしてください。


ほっぺたについてたあの痕も、消えますように。


〜第一章 名も無き天使の御噺〜