ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.6 )
- 日時: 2021/07/22 14:18
- 名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)
「...」
「やあやあ、久しいね奇跡の巫女殿」
目の前にいるのは、翼が四つついていて豪華な赤いマントを羽織った王子。
来ないで。お前だけは嫌。口も聞きたくない。
「そんな顔しなくてもいいじゃないか。今日来たのはこいつの話でね」
彼の持つ鎖の先には首輪をつけられたあの子。ああ、なんでそんなにおっきい傷作ってるのさ、ばか。
「君のところに私の「汚らわしい奴隷」が来てしまったようですまなかったね。こいつは後でしっかり処分しておこう」
ああ、そういうことなの。なら...
「その子、誰?うわあ、首輪つけてるとか相変わらず悪趣味」
「...!」
ダメ。キミは無表情でいて。
「ほう、あくまで初対面だ、と」
「あくまでも何も本当に初対面だけど」
「...実は、今日ここに来たのはこいつがなかなか口を割らないものだから君に聞きに来ようと思ってね」
「...本当に相変わらずね。あなたのそういうところには本当に虫唾が走って仕方ないの。その子と私は無関係よ、さっさとその子を開放して失せなさい、ハーメルン」
こんな口調嫌いだ。こいつも嫌いだ。こんな醜いやつ、なんで悪魔じゃないんだ...
「理解できないなあ、なぜ「初対面」のこいつなんかを庇うのだい?君ほどの力と権力があればそんなゴミいらないだろうに」
「あなたなんかに飼いならされて挙句の果てには殺される...見ていられないわよ、可哀想に。それに、あなたのおかげで今となってはただの「囚われの姫」よ。今の私には地位も名誉も権力もない。さて、一体誰のせいかしら」
「やはり君は素敵な人だ。私と婚約するに相応しい...」
手に触れようとしてくる。やめろ、吐き気がする。
「気安く触れないで!!!!!!」
いやだ、気持ち悪い
「...これは失礼、粗相をしたね。では、今回は目を瞑ろう。次はないと思い給え」
出ていく直前、耳元であいつは囁いた。
「婚約の件、いつでも受け付けているからね」
背筋が凍った。
〜第一章 名も無き天使の御噺 四話〜