ダーク・ファンタジー小説

Re: 「しあわせ」を求めて。 ( No.7 )
日時: 2021/07/22 15:22
名前: ぬこみかん (ID: rXD7GYwx)

「...ははは!!やはり彼女は美しいなあ!!」

俺はあいつの部屋から出された後、なんとも言えない心情に心をかきまわされていた。

なあ、どっちが素のあんたなんだよ。

なんだよあの口調。

王子から婚約迫られてるってどういうことだよ。


なんで、俺を助けたんだ...?


「彼女は私の幼馴染でね、ずっと前から好きだったんだがどうも嫌われてしまったようで。はっ、」


「何故、お前なんだろうねえ」


は、どういう

「いやあ、本当に良かったよ、彼女の目が虚ろなままで。お前みたいな害虫に手出しされるなんて最悪だからね。あの子は、「虚ろな目をした人形」であることに価値がある。お前もそう思わないかい?」
「おも、わねえよ...」
「...ふうん、そうかい。残念だ」

いいことを教えてあげよう、と言いそいつは耳元で囁いた。


「あの子ねえ」




「____」



というわけで今日も姫の部屋に来たぜ。

「...なんで来たの」
「いやー、色々話があんの」
「...聞いたんでしょ、あいつから。ボクのこと」


"堕天使なんだよ"


「...ん、聞いてる」
「...じゃあ尚更だよ、なんで来たのさ」

わあものすごく怒ってらっしゃる。というか腹立たしいんだろうか。

...できることなら明かしたくなかった事実を、こいつのために。

「俺がもしも、昔は悪魔だったって言ったらどうする?」
「...何急に。まあ、多分ボクなら...」

幻滅するだろうな、と返ってくると思っていた。返ってきた答えは、

「どうもしないと思うけど」

...だった。

「え、な、なんでだよ。敵同士だぞ、天使と悪魔」
「...まあ確かに、「天使と悪魔」は敵だよ」
「じゃあなんで...」

「...「天使と悪魔」は敵同士でも「ボクとキミ」は友達じゃん。だから、ボクはきっといつも通りの関係を保とうとするんじゃないかな」

「...はは、んな屁理屈な...」
「それにボクはもう天使じゃないからね」
「...実は、まじで俺昔悪魔だったんだよね」
「...そう」
「幻滅、した?」

そう消えそうな声でつぶやくと、あいつは笑って言ったんだ。

「まさか!さっきどうもしないって言ったばかりじゃないか!それに、」


「きっとボク、君が悪魔なら笑って許せちゃうと思うし」



あーあ、ったく、

これだからこいつは...

〜第一章 名も無き天使の御噺 五話〜