ダーク・ファンタジー小説
- Re: 渇望の死察(デッドサーチ) ( No.2 )
- 日時: 2021/08/17 22:08
- 名前: しいら! (ID: Z7zUYNgK)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13106
第2話 死を秘める者達
「来瀬双真は…俺らが”保護”する!」
彼らはそう言うと、来瀬と男の元へ近づいていった。
「ユグドラシルの分際が…来瀬双真は絶対に渡さない!」
男はそう言うと、来瀬を肩に担ぎ、彼らから離れ、逃げようとした。しかし直後に男の足元に銃弾が放たれたので、反射的に立ち止まってしまった。
「くっ…」
「もう1度言う…来瀬双真は俺たちが保護する。お前達には何があっても絶対渡さないッ!」
彼らはそう言うと、腰辺りから何か筒状の物を手に取り、そして男の元へ投げつけた。
そしてその筒状の物が地面に落ちた瞬間—
キィィィィィィィィン!
と、まるで太陽を直に見ているかの様な眩しさと、皿とフォークを擦り付けた時の音の様な高音が来瀬達を襲った。
「ぐぅぅぅ…うぉぉぉぉっ」
その衝撃は男にも響いたのか、苦しそうな声を上げ、肩に担いでいた来瀬を地面に落としてしまった。
(痛ぁ!)
男が苦しそうに喚く中、もう1人の男が来瀬に近づいてきた。今までの状況が未だに分かっていない来瀬は、近づいてきた男に問いただした。
「い、一体なにがあったんですか?何故僕はこんなにも狙われてるんですか?貴方達は一体誰なんですか?」
分からないことを一気に説明したせいか、
「詳しい話は後で話す…今は取り敢えず、この場を振り切るぞ…!」
と男は返した。そして男は来瀬を肩に担いで一目散に走り出した。
(今日は担がれてばっかりだぁ…)
そんなことを思いながら、来瀬は大人しく男に担がれたままその場を後にした。
やがて彼らが乗ってきたと思われる車に到着した。その車は普通の車より少し大きく、また屋根が完全に空いていた。
「ったく、やっと来たか。車の準備は完璧だぜ」
車の側に立っていた男が言うと、
「私、機械学に関しては得意でございますので」
と、隣にいた凛々しい女が続けて言った。
「ありがとう。じゃあ早速逃げるぞ」
と来瀬を担いだ男が言うと、
「ねぇ…どーせあいつら、追ってくるんでしょ?何が対策、練ってるの?」
と彼らと共にいた女が言った。
「ああ…おそらく奴らはまだ俺らを追ってくるだろう」
やがて、1台の車が来瀬達の元に向かってきた。
「来たか…あいつらを振り切って逃げるぞ!」
と来瀬を担いだ男は言い、彼らも車に乗り込んだ。
やがて、走る車の外では激しい銃の撃ち合いが始まっていた。
「くっ、もう弾が尽きるぞ!」
「こっちもだ!」
どうやら苦戦しているらしいと思った来瀬は、
「あの…僕にも何かできることは…」
と聞いた。すると、
「だめだ。君に死んでもらっては困る」
と言われた。
「…はい」
と、来瀬も納得した。
しかし、彼らが未だ苦しいことに変わりはなかった。
「まずい、もう弾がねぇ!」
「おい出岡、もうあれを使うしか方法がないぞ!」
「だめだ…関係ない一般市民まで犠牲になってしまう」
「だけどよぉ…っ」
最大の危機に直面していた時、
「…見える」
と来瀬が言った。周りは一斉に静まり、来瀬が続けて、
「轟くような爆発…そして水底があの男達に…見えます」
と言った。その後も静寂が周り一体を包んだので、
「…来瀬くん、君には…」
と先程来瀬を担いだ男が言った。
「君には、もしかしてだけど…”あいつらの死期”が見えるんじゃないか?」
と来瀬に言った。そして来瀬は、脳裏に”あの時のこと”を思い出した。かつて小学6年生のとき…向かいのおばさんに見えた「燃える炎」…その翌日の火事でなくなったおばさん…おばさんは火事で亡くなった…炎…”焼死”?
たった今、来瀬が長年に渡って引っ掛かっていたことを理解した様な気がした。
「は、はい!多分、そうです!」
「やはりそうか…来瀬くん、君には対象の
“死期”が見えるんだ!」
「君のその能力…今からその能力を死察と呼ぶことにしよう」
来瀬には言っている意味が分からなかったが、心にずっと引っ掛かっていたことが今ようやく分かって、なんとも言えない感情が来瀬に込み上げた。
「水底…恐らくこの先の湖のことだろう…そうか、分かったぞ!」
「みんな、近くの湖まで持ち堪えるんだ!」
と男が言った。
やがて、湖の近くまで近づいた時、
「あいつらの死期はここだ…あいつらはここで仕留められる!」
と言うと、続けて、
「死術…
死射!」
と言った。その直後、男の手からどす黒い色の光線が放たれた。そのビームは瞬く間に追手の車を貫通し、車は爆発、男たちは湖の方へ吹っ飛ばされた。
全て、来瀬が予知した死期通りだった。
そして静寂が訪れたあと…
「やった…振り切ったぞー!」
と男が言うと、歓声が聞こえた。来瀬も声を出し、その後溜まった疲れがきたのか、その場で眠ってしまった。
これからどんなことが起こるのか、彼らが誰なのか、何も分からなかったが、今は逃げ切れたことに安心して、来瀬は眠った。
次回 第3話