ダーク・ファンタジー小説
- Re: そのガラスは多分、赤。 ( No.1 )
- 日時: 2021/09/02 10:56
- 名前: 都 ◆ukLdzRqWds (ID: 8cbAvaGA)
みんなおおきくなるとかみさまからプレゼントをもらえるんだって。
おおきくても、ちいさくても、かならずひとつもらえるの。
わたしももらいたいな。はやく。
今日、昔から待ちに待った日がきた。
私もこれで1人前になれるんだ。私は何が貰えるんだろう?
1人1人貰える部屋の中に入っていくのを見る度に胸の鼓動が早くなっていくのが分かる。
私の番だ。
・・・・・・少し怖いけど、ううん、かなり怖い。
軽く深呼吸してから扉を開ける。
中にあったのはー・・・・・・
椅子。それも俗に言う「電気椅子」に似たような椅子だ。
つまり私にくれたのは「能力」ではなく「物」だったのか。
・・・・・・その椅子に座ったら貰えるのではないのだろうか?
みんなこの椅子に座って貰うのだろうか?
正直言って不安しかない。でも、勇気を出して要約椅子に座ることが出来た。
なにかの装置の起動音らしき音が聞こえる。
私が、私がすわったから?
立ち上がろうとした。が、腰が固定されているらしく立てない。
突然吐き気に襲われた、しかも目眩がする。身体が痛い。
やっと解放されて、目の前にあった大きなカガミを見て呆然としてしまった。
元は薄い緑色の腰まであるくらいの髪が濃い青色の肩につくくらいの髪に変わっているのだ。
髪だけならまだいいが目も、顔立ちも、体つきも全く違う。
そばかすだらけで右目が黒、左目が濃い緑とそばかすと右目だけ変わってしまっている。
異様にちいさくなった身体に見合わないほどの左腕。
もはや異物に近いような感じだった。
変わってしまった自分をまじまじと見てから気づいた。
そうだ。こんなのこの世界にいていいはずがない。
逃げなければ。この世界から出なければ。
そう思った時にはもうすでに、身体は動いてしまっていた。
何故かすごい足が軽い。これも姿が変わったからなのか。あるいは何かに目覚めたのか。
はっと我に帰って思った
・・・・・・ここはどこだ。
夢中で走っていたので全くここがどこなのか、そもそもどっちに走っていたのかすら分からない。
でも、近くで聞こえる。私を探す声。
「見つけたら必ず捕まえろ」
完全に私はこの世界を敵に回したらしい。
逃げなければ確実に殺されてしまう。
そういえば昔のことを思い出した。
『あの井戸はね、地獄に繋がっているのよ。
子供たちみんなは絶対にはいっちゃダメだからね。
もう絶対帰れないから。』
そうだ、あの井戸なら。
よく目を凝らすと前に大きな井戸が見えた。あれだ。
向こうに向かって一直線に走り出す。
声が聞こえるけど気にしない。
全ての呪いから、解放された気がした
