ダーク・ファンタジー小説
- Re: 疾風の神威 ( No.26 )
- 日時: 2022/05/19 22:30
- 名前: 野良 (ID: JGdWnGzk)
「んだよあいつら…!」
解散して本部を出てからも、佐助はまだ怒っていた。佐助は怒りっぽいので、余計気が立っているのだろう。
「まともな奴らかと思ってたのに、急に態度変えやがって…。あいつら協力する気あんのかよ!」
「団長の言うことだから、何か考えてることがあるんじゃないか?」
杏がそう言うも、佐助はなおも不満そうにしている。そりゃそうだろうとは思う。協力だの連携だのと言っておきながら、あの言い方。私だってまだ腑に落ちない。
「だから俺は嫌だっ__」
ガサガサッ
佐助がそう言った瞬間、道脇の植え込みが揺れて、何かが飛び出してきた。
「うぉわっ!?」
「な"ぁお~」
飛び出してきたのは、ただの猫だった。こっちを一瞥すると、すぐに走り去ってしまった。だが、驚くのはこの後である。
「…あれー…?行っちゃったかなぁ…」
猫に続いて、白い長髪の少女が出てきた。水瀬高の制服を着ているが、植え込みから出てきたせいで、あちこち葉っぱが付いている。
私たちは、彼女を知っていた。
「…あれ、夜明ちゃん?」
「凍玻璃さん…!?」
私たちが驚くと、彼女は「奇遇だねー」と手を振った。顔は相変わらずの無表情である。
凍玻璃雪娜。それが彼女の名前だ。仲は良いが、名前が同じなので、お互い苗字で呼びあっている。
「びっくりしたー…!お前どっから出てきてんだよ」
「…えー…?植え込みだけど…」
「んなの分かるっての!」
「…相変わらずぽーっとしてるな…」
凍玻璃さんは、いつも不思議な雰囲気を醸し出している。初めての時は戸惑いはしたが、今は和ませられる。
「…あ、そうだ。夜明ちゃんたちに朗報だよー。団長さんが、一週間休暇とって良いよーって」
「え、マジ!?」
真っ先に食いついたのは、佐助だった。任務の時は生き生きしているくせに、切り替えが早すぎる。凍玻璃さん曰く、団長は私たちが動きっぱなしだったのを案じてくれたそうだ。
「よっしゃー!じゃ、明日学校終わりにどっか行こーぜ!」
「それは良いな」
「ええ。…ですが、代わりは一体どの隊が…?」
私がそう言うと、凍玻璃さんが胸を張った。無表情で分かりづらいが、自信のようなものを感じる。
「皐月隊の代わりは、私たち“凍玻璃隊”が努めるよ」
そう言う彼女の言葉は、決して伊達ではない。凍玻璃さんは、私たちと同い年なのに隊長を務めている、凄い人なのだ。
「それは安心ですね」
「お前は強いもんなぁ」
「うん。…だから、任せてよ」
警察との一件で曇っていた私の心は、彼女のお陰で少し落ち着いた。