ダーク・ファンタジー小説
- Re: 【新】白と黒の魔法戦争 ( No.2 )
- 日時: 2021/12/10 20:49
- 名前: シャード・ナイト☪︎*。꙳ ◆GHap51.yps (ID: 0bK5qw/.)
第一章【大図書館】‐第一話‐
リンゴーン……リンゴーン……
教会の鐘が鳴り響く。
朝の六時を知らせる、低い鐘の音。
猫耳としっぽを持った、メイド服を着ている眼鏡の女性が、白団の女子寮を、一部屋一部屋回り、団員を起こして回っていた。次で、最後の部屋だ。まだ団長のエマの部屋が残っているには残っているが、あっちには魔法騎士のアヴェーニャが向かっているはずである。
「皆さん、朝ですよっ! 起きてください!」
部屋の戸を開けて、おたまをフライパンに打ち付ける。こうでもしないと、この部屋にいる人達は起きない。
朱色の髪の女性が、眠そうにうっすらと目を開け体を起こす。起こしに来た女性の姿を見るや否や、げっという顔をすると苦笑する。
「あ、えーっと、おはようマイ」
「ライトさん、おはようございます。何やらかしたんですか?」
「ごまかせないよねぇ……これ……」
背中に隠していた羽をバッと広げる。
白団共通のパジャマにこの羽を通すための穴は空いていない。要するに破ったということだろう。
「またですか? なんなんですか?」
「ごめん! 本当にごめんって!」
「ほらもうこんな大きな穴開けてっ!」
「マイってお母さんみたいだよねぇ」
ニコニコと笑いながらベッドの上でその光景を見る女性がいた。
藤色の髪と瞳で、長い髪を乱雑にまとめている。髪の寝ぐせのつき方的に、恐らくそのまま寝たのであろう。目の下には、酷いクマがあった。
「あなたもですよアゲリーヴェッタさん? また寝なかったんですね?」
「あーもうアゲリって呼んでよ」
「おだまりなさい。ほらもう髪ほどいて! とかします!」
そう言いながらアゲリを鏡の前の椅子まで連れていき、櫛を手に取る。
眠そうなアゲリの髪をとかしていると、この部屋に住む残り二人うちの一人の少女……犬獣人のワイトであるメイヴェルが小声で何かを言った。
「エマ様……起きてください……マイさん来ちゃいましたよ……」
「……エマ様!?」
「マイうるさぁい……」
「なんでここに!? いやまぁ大体予想つきますけど」
エマは団員たちととても仲が良く、ほかの部屋に泊まることがある。
これはもうすぐアヴェーニャが飛び込んでくるだろう。
「マイ、エマ部屋におらへんのやけど!? っておるやん」
ほら、藍色の髪の巫女服の女性が飛び込んできた。
「いつものですよ……」
「ねぇマイ~、アヴェーニャ、朝ごはんなあに?」
「今日はあんたの好物やさかいはよ起きぃ。ていうか献立ぐらい把握せぇや」
そう言って軽くエマの頭にチョップを入れる。
好物、という言葉を聞いて嬉しそうにすると、エマは起き上がって着替えを始めた。
「さぁてとぉ……こんだけの大騒ぎでまだ起きないとは相当ですね……」
「レイヴィーまだ起きてへんの?」
「みんなでレイヴィー起こしましょ大会だー」
「おー!」
同室の三人が手をたたいてそう言うと、レイヴィーと呼ばれる少女のベッドに近づく。
白い髪の少女が、布団を鼻ぐらいまで被って寝ている。あれだけの大騒ぎの後でも、熟睡していた。
「レイヴィーさん、起きてください!」
レイヴィーの耳元でそう言うマイ。しっぽで鼻をくすぐるメイヴェルに、アゲリとライトで足の裏をくすぐった。全力起こし祭。これぐらいしないと起きないのである。
「……ん、なんですか……?」
目を開けると怪訝そうに薄目で睨み付けるレイヴィー。
「起床時間過ぎてます。起きてください」
「……分かりました」
そう言うと起き上がり、もたもたと着替えを始めた。
全員朝の支度をし始めたのを見て、アヴェーニャもマイも微笑んだ。
「洗濯物回収しに行きます?」
「そやね」
‐第一話終‐